コンゴ貿易・輸出の基礎知識(2025年更新)

コンゴ民主共和国(DRC)は、アフリカ中部に位置する内陸の国であり、コバルト、タンタルを始め、銅、ダイヤモンド及びスズ等の鉱物資源に恵まれています。加えて、世界で2番目に大きい熱帯林など、豊かな自然資源を持ち、広大な森林と豊かな水資源から、農業、エネルギー産業の潜在力も高いです。

そんなコンゴ民主共和国(DRC)について本記事ではコンゴ民主共和国の基礎知識、そしてコンゴ貿易・輸出の基礎知識について解説していきます。

コンゴ民主共和国についての基礎知識

コンゴ民主共和国(DRC)は、アフリカ中央部に位置する資源大国であり、広大な国土・若年人口・豊富な鉱物資源という3つの強みを持ちます。一方で、政治安定性・インフラ・金融制度は発展途上で、事業進出には特有のリスクが伴います。

以下では地理・人口・経済の3つの観点から基本情報を整理します。

地理と国家構造

項目内容
面積234.5万平方キロメートル
首都キンシャサ
政体共和政

DRCは面積が約234.5万平方キロメートルとアフリカで2番目の広さを持ち、豊富な農業・森林・水資源を有します。首都キンシャサは政治・経済の中枢で、国内の交通・物流の多くはここを起点にしています。

人口・言語・宗教

項目内容
人口(2025年推計)約9,800万人
民族200以上の民族、大部分がバントゥー系
言語公用語:フランス語/国語:スワヒリ語、リンガラ語、チルバ語、キコンゴ語
宗教キリスト教80%、イスラム教10%、伝統宗教10%

人口は約9,800万人とアフリカ屈指の規模で、若年層の比率が高く、長期的には消費市場・労働力としての潜在力が大きい国です。文化・言語の多様性が高く、公用語としてフランス語を使用する点はビジネスにおける重要な特徴です。

経済規模と資源依存

項目内容
GDP(2021年)553.5億ドル
一人当たり所得(2021年)577ドル
経済成長率(2021年)6.2%

DRCの輸出はコバルト・銅・タンタルなどの鉱物資源が中心であり、GDPの約25%、輸出額の約90%が鉱業に依存しています。鉱業は成長を牽引していますが、インフラ不足・治安問題・外貨規制は依然として大きな課題です。

アフリカ市場の理解は国単位での多様性を踏まえることが重要で、その強みや課題は地域ごとに異なります。特にアフリカのビジネスチャンスについては以下の記事をご覧ください。

コンゴ民主共和国に輸出するメリット

コンゴ民主共和国への日本企業の進出は、多くのメリットをもたらします。ここでは、それらのメリットについて詳しく解説します。

①経済成長の機会

コンゴ民主共和国は急速な経済成長を遂げており、新興市場としての魅力が高まっています。日本企業にとっては、この市場の拡大に伴うビジネスチャンスが広がることで、売上や利益の増加が期待できます。

②資源の豊富さ

コンゴ民主共和国は、鉱物資源や農業資源が非常に豊富であり、それらを利用した事業展開が可能です。特に、鉱業や農業分野での技術や経験を持つ日本企業にとっては、大きなビジネスチャンスとなります。

③インフラ整備のニーズの高さ

コンゴ民主共和国では、電力インフラや交通インフラの整備が急ピッチで進められており、日本企業の技術やノウハウが求められています。インフラ整備に関連する事業を行っている企業にとっては、多くの受注機会があると言えます。

④地政学的な利点

コンゴ民主共和国は、アフリカ中央部に位置し、9つの国と接しています。これにより、隣接国への輸出や物流が容易に行えるため、ビジネスの拡大が見込めます。また、同国は豊富な鉱物資源を保有しており、レアアースなどの希少な資源を確保できる可能性もあります。

⑤人口動態

コンゴ民主共和国は約9000万人の人口を抱えており、アフリカで4番目の規模を誇ります。さらに、若年層が多く、労働年齢人口の割合が高いことから、労働力や市場の拡大が期待できます。また、人口増加に伴い、インフラ整備や消費ニーズの向上が見込まれるため、ビジネスチャンスが広がります。

⑥政策面でのサポート

コンゴ民主共和国政府は、外国企業の進出を歓迎し、外資系企業にさまざまな優遇措置や税制上の支援を行っています。日本企業が進出する際にも、これらの支援策を活用することで、ビジネスの立ち上げや運営が円滑に行えるでしょう。

コンゴ民主共和国に輸出するデメリット

コンゴ民主共和国はアフリカの中でも資源が豊富で、数多くのビジネスチャンスが存在しています。しかし、日本企業が同国に進出する際には、いくつかの注意点があります。ここでは、コンゴ民主共和国に進出する際に気を付けることをご紹介します。

①政治的・経済的なリスク

特に政治情勢は不安定であり、経済もインフレーションが懸念されています。このため、事前に十分な情報収集とリスク分析を行い、現地のビジネスパートナーや専門家と連携してリスクを回避することが求められます。

②法律や規制

コンゴ民主共和国では、外国企業に対してもさまざまな規制が適用されます。これには、たとえば以下のようなものが含まれます。

  • 税務上のルール
  • 労働法規
  • 知的財産権の保護

これらの法律・規制を遵守することで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

③現地の文化や風習

コンゴ民主共和国は多様な民族が暮らす国であり、それぞれの地域やコミュニティで異なる慣習が存在します。日本企業が現地でビジネスを成功させるためには、これらの文化や風習に敬意を払い、柔軟に対応することが重要です。

④インフラ・物流

コンゴ民主共和国では、道路や港湾などの基盤が十分に整備されていない地域が多く、物流が円滑に行われない場合があります。こうした課題を克服するために、現地のインフラや物流事業者と連携し、効率的なサプライチェーンを構築することが不可欠です。

コンゴ民主共和国はコバルト・銅・原油など鉱物資源に著しく依存しており、2023年の経済成長率は約8.6%と高い水準ですが、インフラ未整備と内陸国である地理的制約が課題です。加えて、輸出の約9割が資源関連に偏っており、多様化の遅れが経済の脆弱性を高めています。

アフリカ市場は資源・人口・経済構造が国ごとに大きく異なり、輸出や関税の仕組みもそれに応じて変わります。特にアフリカの貿易事情については以下の記事をご覧ください。

コンゴ民主共和国貿易・輸出についての基礎知識

早速ですが、初めに1970年以降におけるコンゴ民主共和国のGDPに占める輸出、輸入および貿易収支のシェアをデータに基づいて見ていくと、コンゴ民主共和国は経常的に貿易赤字構造となっています。ただし、赤字幅はあまり大きくなく、直近ではGDP比で-3%に留まっていることが分かります。(図表1) 

図表1) 出所:UN “The National Accounts Main Aggregates Database”

次に、コンゴ民主共和国の輸出・輸入構成、貿易相手国について見ていきます。

輸出構成

2015年から2020年までの輸出品構成を見ていくと、主な輸出品は3.化学製品、7.金属製品で、全体の9割以上を占めていることが読み取れます。(図表2)

図表2)出所:UN comtrade. 注:HSコードの最も粗い21分類を10分類へ集計しています。

上記の10分類をさらに100分類弱に細分化した分類の上位5品目を取り上げると、最大の輸出品は74.銅・同製品であり、全体の6割を占めていることが分かります。また、28.無機化学品(主にコバルト酸化物)も高いシェアを占めています。(図表3)

図表3)出所:UN comtrade. 注:分類名称の数字はHSコード2桁を表します。

輸入構成

次に同じく2015年から2020年までの輸入構成を見ていきます。図表4から読み取れるように、輸入の構成において、直近では5.繊維、8.機械などが多くを占めています。(図表4)

図表4)出所:UN comtrade. 注:HSコードの最も粗い21分類を10分類へ集計しています。

上記の10分類をさらに100分類弱に細分化した分類の上位5品目を取り上げた図表5を元に、輸入品の具体的な商品を見ると、49.書籍(具体的にはここに分類される郵便切手・小切手)が最大の輸入品であり、次は84.一般機械が大きな割合を占めていることが読み取れます。(図表5)

図表5)出所:UN comtrade. 注:分類名称の数字はHSコード2桁を表します。

貿易相手国

最後に、2020年の貿易相手シェアを表した図表6を元に貿易相手国を確認していきます。

図表6から読み取れるように、コンゴ民主共和国の最大の輸出相手国は中国で輸出全体の41%に相当します。その次はタンザニア、ザンビアと続きます。また上位10カ国の輸出は全体の96%を占めていることも読み取れます。輸入相手国について見ていくと、最大の輸入相手国も中国で輸入全体の25%に相当していることが分かります。その後は米国、南アフリカと続きます。なお上位10カ国の輸出は全体の76%占めています。(図表6)

図表6)出所:UN comtrade.

まとめ

コンゴ民主共和国は、世界有数の鉱物資源を背景に鉱業を中心とした経済構造を持ち、若い人口やインフラ需要などビジネス面での潜在性が非常に高い国です。

一方で、政治的リスク、法制度、物流・治安、外貨規制など、進出時に慎重な判断が必要となる課題も多く存在します。市場の魅力とリスクを冷静に見極め、事業モデルやパートナー選定、貿易実務の要件を丁寧に検討することが成功の鍵となります。

具体的な進出計画や輸出スキームの構築にあたっては、一度専門家に相談することをおすすめします

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