アメリカ貿易・輸出の基礎知識(2025年更新)

 

目次

    アメリカの経済は世界最大で多様性に富み、サービス業、製造業、農業など多くの分野が活発です。貿易においても主要な役割を果たし、経済政策や金融市場が国内経済に影響を与えます。

    また、日本とアメリカの貿易関係は相互依存的で、両国の経済活動と国際的な地位に大きな影響を与えています。貿易摩擦が発生することもありますが、双方の経済は密接に結びついており、協力関係も深まっています。

    本記事では、アメリカの最新貿易事情やアメリカの貿易品目、貿易相手国、日本とアメリカの貿易関係について深掘りしていきます。

    アメリカ貿易の最新情報

    並べられたアメリカドルの紙幣

    アメリカの貿易は、常に世界の経済状況や地政学的要因、そして国内の需要と供給のバランスを反映しています。ここでは、財・サービスの輸出入額、主要な貿易相手国との動向、そして日本や中国との関係について詳しく見ていきましょう。

    財・サービスの輸出入額

    米国商務省が発表した2025年4月の貿易統計(国際収支ベース、季節調整済み)によると、アメリカの輸出入の状況は以下の通りです。

    輸出(財・サービス合計)2,894億ドル

    輸入(財・サービス合計)3,510億ドル

    これにより、財・サービス貿易赤字は616億ドルとなりました。これは、前月(2025年3月)の1,383億ドルから大幅な減少です。

    赤字が減少した主な要因は、財(モノ)の貿易赤字が752億ドル減少して874億ドルに縮小したことと、サービス貿易の黒字が15億ドル増加して258億ドルになったことです。

    財の貿易を詳しく見ると、輸出入に以下のような変動がありました。

    ・財の輸出1,942億ドル(前月比0.7億ドル増)

    増加要因としては、民間航空機産業用資材が挙げられます。

    ・財の輸入2,816億ドル(前月比745億ドル減)

    輸入が大幅に減少した主な要因は、医薬品製剤の減少です。このほか、最終金属製品、民間航空機、携帯電話・家庭用品、その他の産業用資材なども減少しました。

    一方で、原油や天然ガスの輸入は増加しています。

    なお、2025年第1四半期(1月~3月)の実質GDP成長率(速報値)は、前期比年率でマイナス0.3%と、2022年第1四半期以来3年ぶりのマイナス成長となりました。これは、特定の関税措置の発効を避けるための駆け込み輸入(特に医薬品製剤)が、3月の輸入を押し上げたことと、その後の4月での反動減が影響したと分析されています。

    輸出入地域別動向

    主要国・地域別の物品貿易を見ると、2025年第1四半期には、欧州連合(EU)との貿易赤字が446億ドル拡大し、821億ドルに達しました。

    これは、対EU輸入が484億ドルも増加したためです。特に医薬品製剤の輸入急増が影響しましたが、2025年4月にはその反動で対EU貿易赤字は179億ドルへと大幅に縮小しています。

    一方、2025年4月時点の月次データでは、最大の貿易赤字相手国は中国で197億ドルでしたが、3月の242億ドルから大幅に減少しました。メキシコカナダとの貿易赤字も縮小傾向にあります。

    また、アイルランドからの医薬品輸入が急増した影響で、3月の対アイルランド財貿易赤字(293億ドル)は一時的に対中国の赤字(248億ドル)を上回るほど顕著でした。

    対中貿易・対日貿易

    2025年4月の対中貿易赤字は197億ドルで、前月より減少しました。中国への輸出では原油や血液・ワクチンなどが増加傾向にあります。

    対日貿易では、2025年4月に日本からアメリカへの輸出が前年同月比で0.9%増加するなど、堅調に推移しています。米国の統計では、対日物品貿易において約680億ドルの赤字を抱えており、その大半が自動車関連製品によるものです。

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    輸出

    アメリカの主要輸出品目としては、機械類(コンピューター、半導体含む)(24.0%)、原油、石炭(15.2%)、医薬品、血液・ワクチン、ホルモン(10.4%)、民間航空機(7.5%)、自動車および自動車部品(5.8%)、産業用資材(最終金属製品、非金属製品含む)(5.5%)などが挙げられます。

    輸入

    一方、アメリカの主要輸入品目としては、産業用資材(エネルギー関連製品など)(15.2%)、医薬品製剤(10.4%)、機械類(コンピューター、半導体記憶装置含む)(9.9%)、携帯電話およびその他の家庭用品(5.4%)、自動車(乗用車、自動車部品含む)(4.9%)などが挙げられます。

    アメリカの主な貿易相手国

    大きな地球儀

    これまでアメリカの主な貿易品目に関して見てきましたが、アメリカの貿易相手国はどのような国があるのでしょうか。主な貿易相手国は、皆様のご想像の通り、カナダや中国、メキシコなどが挙げられます。輸出入別の詳細については、以下で見てみましょう。

    輸出

    メキシコ (14.8%)

    カナダと同様に、地理的近接性とNAFTA(現在はUSMCA)によって形成されたサプライチェーンにより、アメリカの輸出にとって極めて重要です。自動車部品や農産物、電子機器などが主な輸出品目です。

    2025年4月時点では、わずかながらカナダを上回り最大の輸出先となっています。

    カナダ (14.4%)

    アメリカにとって最大の貿易相手国の一つであり、輸出においても最上位を争います。

    自動車部品、機械類、エネルギー関連製品など、幅広い品目が国境を越えて活発に取引されています。

    イギリス (4.9%)

    欧州における重要なパートナーであり、高付加価値の製品やサービスが多く輸出されています。

    スイス (4.4%)

    医薬品や高精度機械、金融サービスなど、特定の分野でアメリカの輸出を支える主要な国です。

    中国 (4.3%)

    貿易摩擦は続いているものの、依然としてアメリカの主要な輸出先の一つです。農産物(特に大豆)、原油、半導体製造装置などが主な輸出品目として挙げられます。

    ドイツ (3.9%)

    欧州経済の中心であり、自動車部品や機械類、化学製品などが輸出されています。

    日本 (3.6%)

    アメリカの物品輸出相手国としては8番目に位置しています。

    航空機部品、医療機器、半導体製造装置といった高技術製品や、一部の農産物が主な輸出品目です。日米間の強固な経済関係を反映しています。

    上記の国々に加え、オランダ、香港、韓国などもそれぞれ3%台のシェアを占める重要な輸出相手国です。

    これらの国々への輸出は、特定の産業分野における専門性や、アジア地域における物流ハブとしての役割が背景にあることが多いです。

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    輸入

    アメリカの輸入は、世界の多様な製造拠点からの供給に大きく依存しており、サプライチェーンの動向や特定の品目の影響を受けやすい特徴があります。

    メキシコ (15.2%)

    輸入においてもアメリカの最大のパートナーであり、そのシェアは最も大きいです。自動車部品、機械類、電気製品など、国境を越えた統合的なサプライチェーンが活発です。

    カナダ (10.7%)

    隣国として、エネルギー関連製品(原油、天然ガス)、自動車、機械類など、幅広い品目を供給しています。

    中国 (9.2%)

    かつては圧倒的な輸入シェアを誇っていましたが、サプライチェーンの多様化や地政学的な要因により、その割合は以前よりも縮小傾向にあります。携帯電話、機械類、アパレルなどが主な輸入品目です。

    ベトナム (5.4%)

    近年、中国からの生産シフトの受け皿の一つとなっており、電子機器、アパレル、家具などの輸入が増加傾向にあります。

    台湾 (5.3%)

    半導体や電子部品など、高技術製品の重要な供給源です。

    日本 (4.9%)

    アメリカにとって6番目に大きな輸入相手国です。自動車(完成車)、自動車部品、機械類、電子部品、光学機器など、高品質な工業製品が主な輸入品目です。

    ドイツ (4.8%)

    欧州からの輸入では最大の国の一つで、高級自動車、機械類、医薬品などが主な輸入品目です。

    アイルランド (3.9%)

    特に医薬品製剤の輸入において大きな存在感を示しています。2025年第1四半期には、一時的に中国からの輸入を上回るほどの貿易赤字(アイルランドに対して)が生じるなど、医薬品の動向が輸入全体に大きな影響を与えることがあります。

    これは、特定の関税措置への予期的な「駆け込み輸入」が背景にあると分析されています。

    上記の国々に加え、インド、韓国、タイなども主要な輸入相手国として名を連ねています。アメリカの輸入構造は、グローバルな生産ネットワークと消費者の需要を反映しているといえるでしょう。

    日本 – アメリカ間の貿易関係

    波打つ日本国旗

    日本とアメリカの経済的な結びつきは、2025年も変わらず非常に強固です。アメリカは、日本の輸出入総額において引き続き重要な貿易相手国としての地位を維持しています。2020年1月1日に発効した日米貿易協定は現在も有効で、両国間の物品貿易の主要な枠組みとして機能しています。この協定は、特に農産品分野での関税引き下げを段階的に進めており、例えば米国産牛肉の輸入関税は2025年4月からは21.6%に、2033年までには9%まで削減される予定です。

    しかし、貿易関係は常に変化しています。特定の品目、例えば鉄鋼やアルミニウムに対する米国の追加関税措置などについては、日本側からその見直しを求める協議が継続的に行われており、今後の動向が注目されます。

    日米貿易額の現状

    2025年通年の正確な円建てデータはまだ出ていませんが、米国の発表に基づくと、2025年2月時点の物品貿易において、米国は日本に対して約680億ドルの貿易赤字を抱えています。この赤字の大部分(約78%)は、自動車および自動車部品の貿易によるものです。

    月次の動向を見ると、2025年4月には、日本からアメリカへの輸出が前年同月比で0.9%増加しており、日本の全体輸出の中では米国向けが堅調に推移していることが伺えます。

    日本からアメリカへの主要な輸出品目

    日本とアメリカの間で取引される主要な品目は、両国の産業構造と需要を色濃く反映しています。2025年時点の最新の動向を見てみましょう。

    日本がアメリカに輸出する主要品目では、依然として自動車関連が圧倒的な存在感を示しています。

    自動車(完成車および部品)

    日本の対米輸出の約3分の1(2024年実績で約33.3%)を占め、自動車本体と部品が重要な輸出品目であり続けています。これは、米国市場における日本車の人気と、グローバルな自動車生産における日本のサプライヤーの役割を反映しています。

    機械類(原子炉、ボイラーなど)

    幅広い産業で使われる機械類は、常に主要な輸出品目です。

    電気・電子機器

    半導体製造装置や電子部品など、高度な技術を要する製品が多く輸出されています。

    光学機器、写真・測定・医療用機器

    精密な日本の技術力を活かした医療機器や測定機器が輸出されています。

    医薬品

    日本の医薬品も、対米輸出において一定の割合を占めています。

    アメリカから日本への主要な輸出品目

    一方、アメリカが日本に輸出する主要品目では、資源や高技術製品が目立ちます。

    鉱物性燃料、鉱物油、蒸留品: 日本のエネルギー供給において、アメリカからの原油や液化天然ガス(LNG)は非常に重要な位置を占めています。

    医薬品

    アメリカからの医薬品は、日本の医療分野における主要な輸入品目の一つです。

    機械類、原子炉、ボイラーなど

    日本の産業で利用される多様な機械類が輸出されています。

    光学機器、写真・測定・医療用機器

    アメリカの高技術製品が日本市場に供給されています。

    航空機、宇宙船

    高額な航空機や関連機器も主要な輸出品目です。

    穀物類、肉類(牛肉、豚肉など)

    日米貿易協定による関税引き下げもあり、アメリカ産の穀物や肉類は日本の食料供給を支える重要な輸出品目です。

    日米間の貿易品目を比較すると、日本が主に完成度の高い工業製品や精密機器を輸出する一方で、アメリカはエネルギーや農産物といった資源に加え、航空機や一部の高技術製品を輸出しているという明確な違いが見られます。

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    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。