医療機器の輸出入の基本、近年の動向は?

 

目次

    日本の成長戦略において、医療機器は重要な分野の1つと言えます。医療機器には、コンピューターや高度な精密機械技術が必要なものがあり、また、体内組織を代替する人工物を作るためには、素材・材料関連の高度な技術が必要とされます。こういった技術を活かす事で、医療機器の製造が可能です。

     

    今後、日本を含む各国において高齢化が進行し、医療の需要が高まると予想されています。そのため、医療機器の需要は、量・質の両面で増加するといえるでしょう。

     

    本記事では、医療機器の生産、国内向け出荷、輸出入の動向を概観し、日本の医療機器の需給における強みや課題について検討していきます。

    医療機器ー生産・出荷・輸出入

    日本の医療機器の生産等の動向

    まず、「薬事工業生産動態統計」(厚生労働省)を用いて、日本の医療機器の生産等の動向を把握していきます。2020年における国内向け出荷額は3.94兆円であり、輸出額は0.99兆円でした。これらの需要に対して、生産額は2.43兆円、輸入額は2.64兆円で対応しています。しかしながら、2019年と同様に、輸入が生産を上回る状況が続いています。

     

    それでは、2010年と比較してみると、需要は国内向け出荷が1.72倍、輸出が2.19倍に増加しています。対して、生産は1.42倍にとどまり、輸入は2.50倍に増加しており、需要を満たすために輸入が増えていることがわかります。

    医療機器は輸入依存が強まっているといえます。なお、米ドル/円の為替レートは2011〜2012年に円高になりましたが、その後は円安に傾いており、2020年には2010年よりも20円近く円安となりました。為替の動きと輸出入金額の推移との間には明確な関連性は見られませんでした。

    医療機器-国内向け出荷

    2020年の生産金額が1000億円以上であった上位10種類を調べました。10種類で国内向け出荷全体の7割以上を占めています。

    循環器系のカテーテルや体液誘導管などの医療用具、人工股関節や人工膝関節などの整形用具、血液透析濾過器や心臓ペースメーカーなどの内臓機能代用器が、上位3位にランクインしています。

    コンタクトレンズなどの視力補正用レンズが4位に、理学診療用器具や超音波画像診断装置(エコー)が5位に、内臓機能検査用器具(MRI)が6位に、医療用エックス線装置(CT)やその管が7位に入っており、診断用の器具や検査用具が広く医療施設で使用されているようです。

    医療機器-輸出

    次に輸出を見ていきます。2020年の輸出金額上位10種別で、輸出全体の8割以上を占めています。

    1位には、大腸鏡・十二指腸鏡などの医療用鏡が入っています。2位は、自動分析装置・測定装置といった血液検査用器具があり、3位は医療用嘴管及び体液誘導管となっています。4位以下には、医療用エックス線装置および医療用エックス線装置用エックス線管・内臓機能代用器・理学診療用器具などといった、診断装置・器具が並んでいます。

     

    以上の様に、製造に高度な技術が必要となる器具が、輸出の上位を占めています。日本の医療器具製造に関する高度な技術力が海外からも求められている事が分かります。輸出先としては、中国・アメリカ・ドイツ・オランダが全体の過半数を占めています。

    医療機器-生産

    続いて、日本国内における生産をみていきます。2020年の生産金額上位10種で、生産全体の7割以上を占めています。

    1位としては、大腸鏡・十二指腸鏡などの医療用鏡が入っています。2位には、カテーテルなどの医療用嘴管及び体液誘導管が入っています。3位は、血液透析に用いる内臓機能代用器となっています。

     

    輸出の所と同様、高度医療機器が日本の医療機器生産の中心となっている事が分かります。

    医療機器を輸出する際の注意点

    日本国内で既に流通している製品をそのまま輸出せず、輸出先向けに仕様変更した物を輸出する場合、『輸出用医療機器製造・輸入届書』を厚生労働大臣へ提出し、輸出機関には輸出通関書類のコピーを送付する事が求められます。厚生労働大臣に提出する際の届出窓口は、独立法人衣料品医療機器総合機構です。

     

    また、医療機器は安全保障貿易管理のキャッチオール規制対象品である為、輸出通関の際は、安全保障貿易管理既製品に該当しない事を自己判定の上、該非判定書を提出する事が求められます。

    一方で、自己判定の結果として、安全保障貿易管理規制の対象だと思う場合は、経済産業大臣の輸出許可が必要となりますので、注意しましょう。

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