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海外での日本食ブームで日本酒が脚光を浴びています。世界の酒類市場規模は約3兆円規模ですが、そのうち日本酒の規模は5,000億円程度でかなりの割合を占めています。訪日外国人の80%が日本酒を飲んだことがあると答えるほどです。
日本国内での日本酒の消費は減少傾向にありますが、海外での需要はどんどん増えています。
さらに現在、政府は海外輸出を目的とする場合に限り新規の酒造免許を発行しているため、日本酒の酒造りに関わる新規事業を計画している方にとって、日本酒の海外輸出は選択ではなく必須の戦略となります。
アメリカ、中国、台湾、香港をはじめ、多くのヨーロッパ諸国が日本酒の新たな市場と言えます。日本酒は原料、製法、製造者によって味のバリエーションが大きく、食中酒として料理との相性が良く大変愛されていますが、このような日本酒を海外に輸出するためにはいくつかの手続きが必要です。日本酒が海外に輸出するには、どのような方法があり、どのような手続きがあるのでしょうか。
本記事では、輸出の流れ・輸出に必要なライセンス・輸出にあたっての注意点をわかりやすくご説明します。
日本酒の輸出手続きの流れ
①フォワーダーに依頼
フォワーダーとは、国際輸送を取り扱う運送事業者のことです。海運業者は国内物流を扱い、フォワーダーは国際物流を扱うという違いがあります。
国際物流は、船社や航空会社との予約、関連書類の作成、関連省庁への許可申請、梱包など多くの準備が必要です。
そのため、貿易実務経験のない個人や企業が一人で行うと、時間もかかり、むしろ非効率的な場合があります。貿易実務経験のない個人が海外輸出を進める場合、コンテナや船積みの手配が難しく、輸出に支障をきたす場合があるので、フォワーダーに依頼するのが賢明です。
②品質維持が可能な梱包
国際輸送である以上、大きな揺れに耐えられる頑丈な梱包が必要です。
日本酒は海外では高級レストランのワインリストに掲載されるなど、上流階級が主に消費する酒として認識されているため、パッケージのデザインにこだわることが売り上げにつながる可能性があります。 特に中国の場合、贈答用として日本酒が消費される傾向が強いため、パッケージのデザインと売り上げの関連性が高い場合があります。日本酒は温度・湿度管理が重要なため、リーファーコンテナの使用が望ましいです。
③保税地域への搬入
保税地域は税関が管轄する場所で、外国から到着した貨物やこれから輸送される貨物を処理する場所です。保税区域に貨物が搬入された後、輸出通関手続きが開始されます。
④輸出通関手続き
通関手続きは、輸出貿易管理令、関税関連法令、食品衛生法など様々な法律が関係する作業であるため、個人が行うには難易度が高いです。 そのため、フォワーダーや専門の通関業者に依頼するのが有利な場合があります(「通関業者」とは、通関業法に基づいて他人の通関手続きを委託する業者を指します)。
税関から輸出許可が無事に通過すると、輸出許可書が発行され、対象酒類は外国に輸出できるようになります。
⑤出港
輸出許可を受けた貨物は、海上輸送の場合、船社から船荷証券を発行します。発行後、問題がなければ出港することになります。船荷証券は貨物請求権を証券化したものです。簡単に言えば、貨物の価値を証明する証明書であるため、荷受人に貨物が引き渡されるまで必ず保管する必要があります。
⑥現地到着
現地に貨物が到着すると、現地の保税区域に貨物が搬入されます。
⑦輸入申告
保税区域に搬入されると、現地のビジネスパートナーまたはその依頼を受けた通関業者が輸入(納税)申告を行います。
輸入申告の際には、インボイス、パッキングリスト、船荷証券、航空貨物運送状、貨物保険に加入している場合は保険証券のコピーが必要です。当該書類を現地のビジネスパートナーにメールやファックスで事前に送付する必要がある場合があります。
⑧現地流通
輸入申告を終え、関税を支払い、輸入許可取得後、現地で貨物(酒類)を受け取ることができます。
輸出時の注意点
輸出を行う際に注意すべき点は以下の通りです。
①免税
酒類製造者が直接輸出する場合と、製造者から直接酒類を購入して輸出する場合に限り、酒税納税申告書を税務署に提出すれば酒税が免除されます。この時、酒税納税申告書を必ず所定期間内に提出しなければならず、当該申告書に輸出しようとする貨物の数量と税率が明記されている証明書を添付する必要があります。
②ビジネスパートナー
海外から日本酒を輸入するビジネスパートナーを見つけるためには、展示会、商談会、見本市などのイベントに参加する方法がおすすめです。 海外に直接出向いて営業する手間が省けるからです。 国税庁とJETRO、全国卸売酒販組合中央会を主体とした日本酒輸出促進コンソーシアムが設立されていますので、参考にしてください。
③危険物取扱対象
アルコール度数が24%を超える場合・容量が250リットルを超える容器で輸送する場合・アルコール度数が70%を超える場合は、可燃性液体として国際運送法上の危険物に分類され、輸送料が高くなったり、提出書類が増えることがあります。アルコール度数によって関税率が高くなったり、輸出ができない場合がありますので、輸出国別に確認が必要です。
輸出に必要なライセンス
酒類を輸出するためには、輸出入酒類卸売業免許を取得する必要があります。 なお、輸出申請の時点で、輸出対象国で販売を行うことができるビジネスパートナーが確保されていることが条件となります。酒類製造者が直接製造した酒類を海外に輸出する場合には、免許は不要です。 一方、インターネットを通じて酒類の小売販売を行う場合には、別途通信販売酒類小売業免許を取得する必要があります。
輸出に必要な書類
酒類を輸出するためには以下の書類が必要です。
①インボイス(Invoice)
通関の過程で税関に提出します。インボイスには、輸出入者名、品名、数量、価格、契約条件など税法で定められた項目が含まれます。
② パッキングリスト(Packing List)
パッキングリストは、梱包明細書と呼ばれる、貨物の個数と重量、容積が明記されている書類です。
③シッピングインストラクション(Shipping Instruction)
シッピングインストラクションは、フォワーダーに運送を依頼する際に作成する書類です。 この書類をもとに船荷証券が発行されます。
④委任状
通関業者に通関手続きを委託する場合、当該輸出内容に関連する通関処理委任状を作成し、通関業者に提供する必要があります。
なお、輸出申告書はフォワーダーや通関業者が代わりに作成してくれるものの、インボイスとパッキングリスト、シッピングインストラクションは輸出を進めようとする荷主が直接作成しなければならないので、漏れがないように注意しなければなりません。
輸出相手国ごとの注意点
本記事では、日本酒の海外消費量が多いTOP3である香港、中国、アメリカの輸出注意点をご紹介します。
①香港
2020年の日本酒輸出額は61.8億円で、第1位です。
運送にかかる時間はおよそ1週間程度です。
最もボリュームとなる価格ゾーンは、卸値で1本あたり2,000円程度が多いです。
- ラベルに製品名やアルコール度数のほかにも、製造者名・包装業者名・住所・賞味期限を記載する必要があります。
- アルコール度数30%を超える酒類の輸出は、あらかじめ香港税関に輸入ライセンスを事前取得しておくことが必要です。
- アルコール度数30%以下の場合は免税ですが、30%以上の場合は関税が100%と、アルコール度数によって極端な差があります。
②中国
2020年の日本酒輸出額は57.9億円で、第2位です。
中国では日本酒が贈り物として好まれます。化粧箱やラベルには和風の意匠を凝らし、美的感覚に富んだものにすると売上につながる可能性が高くなります。高価格帯の日本酒が人気です。
- 添加物は化学名まで詳しく記載し、ラベルに賞味期限と製造年月日の両方を明記する必要があるなど、法律上様々な細かい規制があります。
③アメリカ
2020年の日本酒輸出額は50.7億円で、第3位です。
幅広い価格ゾーンの日本酒が消費される傾向があります。
- ラベルに商品名や度数、内容量のほかにも、着色料名や原産国名、輸入者名と住所などを記載する必要があります。
- 連邦酒税以外に州酒税、港湾維持料など、輸入するエリア独自の徴収もあります
まとめ
日本酒を海外に輸出する方法について簡単にご紹介しました。
日本酒を好む外国人の需要は先進国を中心に拡大しているため、国内だけでなく海外をターゲットにすれば、限りないビジネスチャンスを発掘することができるでしょう。
しかしながら、国内販売とは異なり、海外への輸出は手続きが複雑なので注意が必要です。日本酒の輸出手続きや輸出に必要なライセンス、輸出に必要な書類を事前にご確認の上、輸出を検討してください。
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