初めての海外輸出、どうすれば?企業が行う基本や流れまとめ

 

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    記録的な円安が続き、貿易においても追い風となりそうです。また、海外ではいまだに日本製品は根強い人気があります。

    また、IMFが発表した「世界経済見通し」による2021年の世界の経済成長率は6.0%でした。新型コロナ感染の封じ込めに対する期待が数字に現れていますが、世界経済成長率が6%台に達するのは今回公開されたデータベースでさかのぼることができる1980年以降で初めてとなっており、世界経済がこれまでにないほどに急回復することが予想されています。

    そういった状況の今日、海外輸出を初めて行うことを検討した時、貿易がどのような流れで進んでいくか、改めて知ることは大切であると言えます。本日は、輸出の流れについてご紹介いたします。

    「初めての海外輸出」大攻略

    海外輸出貿易の流れは、大きく分けて契約→輸送→決済の3ステップとなりますが、細かく分けると5段階あり、海外貿易特有の書類や手続きが発生します。

    ①商品・取引先(市場と取引企業)の選定

    輸出:自社取扱商品の中で、海外市場でも通用する強みのある商品は何か、取り扱い商品を決め海外向けにPRし、売り込み先を探します。また、自社の商品を購入したいとの引き合いに対して、取引を行うか検討します。同時に相手国側で許可・申請の対象品目か、あるいは法定検査が必要かなども確認します。

    ②契約交渉・契約締結

    取引交渉:商品価格、決済通貨、決済方法・時期、品質・数量、輸送方法と引渡時期、梱包条件、検査方法・時期、アフターサービス、PLの扱い、トラブル時の対応等、売買の諸条件を取り決めます。国内取引と違い長い距離の輸送が必要なため、輸送途中に商品が失われたりトラブルがあった際の責任分担、つまり商品の引渡し場所や保険付保等、いわゆる貿易取引条件についても取り決めることが必要です。

    契約締結:上記の交渉内容で合意が成立したら、契約書を作成します。国際契約においては英文契約書が一般的です。

    ③輸送手段の確保・保税地域への搬入(海貨・通関業者)

    海貨(通関)業者を通じて、船腹予約など輸送手段を確保します。また、輸送中の事故などに備えた保険付与を行います。準備が整ったら通関のための保税地域へ貨物を搬入します。

    ④通関手続き・商品の積込・輸送(海貨・通関業者)

    契約条件によって異なる場合もありますが、通常は輸出者側で輸出通関、積込の手続きを行います。国境輸送の後、輸入通関手続きを輸入者側で行います。通関に関わる申請はオンライン化が進んでいます。

    ⑤代金決済・商品の引き取り

    輸入者は代金を支払い、貨物を引き取ります。ただし、決済のタイミングは契約条件によって異なります(前払い、L/C決済、後払い等)。

    国内取引との違い・リスク

    海外取引では言語や法制度の違い、通貨リスク、取引相手の信用リスク、輸送距離による損害リスク、商品受取と代金支払いの時間差など、さまざまな要素に対応する必要があります。

    ①国が異なる

    海外取引では異なる言語、法制度、商習慣、政治・経済状況が存在します。これにより、意思疎通のリスクが生じる可能性があります。交渉の際には言語の壁を克服し、誤解や認識違いを避けるために文書による確認や契約書の作成が重要です。

    ②取引通貨が異なる

    異なる通貨での取引には為替変動リスクがあります。相場の変動が激しい場合は、取引の利益が影響を受ける可能性があります。取引通貨を固定する方法や為替予約などの対策が取られることがあります。

    ③取引相手が見えづらい

    国際取引ではFace to Faceでの商談が難しいため、相手企業の信用リスクが高まります。信用調査機関を活用して相手企業の信用状態を把握することが重要です。

    ④輸送距離が長い

    海外取引では運送距離が長いため、貨物の損傷や変質などのリスクが高まります。貨物海上保険を利用して損害リスクをカバーすることが必要です。

    ⑤商品受取と代金支払いに時間差がある

    国際取引では商品の受取と代金の支払いが同時に行われない場合があり、代金回収リスクと商品入手リスクが生じます。信用状を利用して銀行が代金の支払いを保証することでリスクを回避することができます。また、取引に伴う資金負担のリスクを軽減するために、信用状を利用した取引が行われることがあります。

    海外輸出に無くてはならない「貿易保険」

    海外輸出を行う際に必ずと言っていいほど必要になるものとして、貿易保険があります。貿易保険とは海外取引におけるリスクをカバーしてくれる保険のことで、これを無くして安心した海外輸出はできません。

    貿易保険とは

    まず、貿易保険とは「海外取引でのトラブルをカバーしてくれる保険」であり、輸出入や投資といった海外取引における様々なリスクに対応するものです。そのリスクの大きさから、一般的に貿易保険は各国の政府が提供するものとなっています。輸出入や仲介貿易、投資におけるリスクの例としては、戦争やテロ、取引先国の送金規制、不払い、送金遅延、経済制裁が挙げられます。こうしたリスクに対応してくれるのが、まさに貿易保険なのです。

    貿易保険のメリット・デメリット

    では、その便利な貿易保険を利用する上でのメリット・デメリットは何なのでしょうか。

    貿易保険のメリット

    貿易保険を利用するメリットは、海外取引における不安である非常危険(カントリーリスク)や信用リスク(取引先の破産など)をカバーしてくれるところです。こうした将来的なリスクを確実に軽減する手段が、まさに貿易保険となります。

    貿易保険のデメリット

    反対に、貿易保険のデメリットは、トラブルが実際に起きてしまったときの手続きの面倒さです。国が提供しているという点で安心感はありますが、その手間は大きなデメリットです。複雑な手続きによって、保険金が支払われるまでに時間がかかってしまいます。

    貿易保険の種類

    貿易保険の種類は、政府による複数回の法改正を経て、現在で9種類あります。ここでは、NEXI(株式会社日本貿易保険)が提供する保険に注目して、簡単に説明を行います。

    ①個別保険

    個別保険では、以下のような種類の保険があります。

    ・取引案件ごとに保険をかけることが可能な「貿易一般保険(個別)」

    ・一回の取引額5000万円以下の中小企業と農林水産業従事者が日本からの輸出に限り使える「中小企業・農林水産業輸出代金保険」

    ・特定の取引先と定期的に取引がある場合に1年間有効な保険金額を設定できる「限度額設定型貿易保険」

    ・為替手形の不払いをカバーする「輸出手形保険」

    ②包括保険

    包括保険では、包括保険契約に基づいて、すべての取引をカバーする「簡易通知型包括保険」や、特約で定めた取引の年間契約を対象とする「簡易一般保険」があります。

    ③その他

    個別保険や包括保険以外にも、サービス・知的財産に対する貿易保険や輸出のみならず輸入もカバーするものまであります。

    まとめ

    今回は海外貿易についての基本情報と流れをお伝えしました。海外輸出を考える際には、海外の取引先の選定も大切ですが、国内の代行業者や仲介業者の選定も重要です。また、国内取引とは異なるということにも注意し、信頼性のある取引相手との協力、専門知識の活用、保険の利用なども重要になります。一見複雑な手順に思われますが、海外輸出の基本の分野なので要点をおさえ、貿易発展につなげましょう。

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    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。