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香港への輸出をお考えですか?香港は自由貿易港であるため、基本的に輸出時に関税がかかりません。 そのため、一部の規制品目を除き、すべての物品を 関税なしで輸入することが可能です。香港を拠点に中国やASEAN地域まで輸出地域を拡大したい場合は、より魅力的な選択肢となるでしょう。 そんな魅力的な香港輸出、どのような流れで行われ、どのような手続きや注意が必要なのでしょうか?
今回は、香港の輸出入に関する基本的な手続きや流れ、必要な書類や規制について説明し、香港を拠点に中国やASEANを対象としたビジネスにどのような活用メリットがあるのか、簡潔かつわかりやすく解説します。
輸出の流れ
1.荷物の選定と輸出入規制の確認
まず、香港に輸出する物品が日本の輸出規制に該当するのか否かを事前に確認する必要があります。 また、香港で輸入が許可されている物品であるか否かを事前に確認することで、問題の発生を未然に防ぐことができます。香港で輸入が許可されている品目であっても、別途許可申請が必要な場合や、証明書の提出を求められる場合がありますので、最新の情報をもとに関連規制や手続きを確認した上で輸出を進めましょう。
2.契約の締結
貨物を輸出するためには、輸送に関する条件や決済通貨をどうするか等について取引条件を事前に決めておく必要があります。商品の価格、通貨と決済方法、配送時期と品質、数量、輸送方法、梱包方法、問題発生時の対応などをすべて契約書に記載しておくことでスムーズな輸出ができます。さらに、輸出は国内販売とは異なり、船や航空を利用した長距離輸送であるため、商品が破損したり紛失した場合の対応方法と責任の所在、問題発生時に備えた保険適用などを綿密に検討する必要があり、保険により安全に輸出を進めることができます。
3.輸送手配
輸出契約を締結した後は、香港への輸送方法を検討する必要があります。貨物の重量、サイズ、個数などによって業者によって差が大きく、為替レート条件によって決済通貨や決済方法にも有利・不利があるため、状況に応じて随時検討する必要があります。
4.荷物の発送と通関手続き
香港に荷物を発送する方法は、大きく分けて航空輸送と船舶で輸送する方法に分かれます。 それぞれについて説明いたします。
航空運送:
航空輸送の場合、運送業者が貨物を集荷し、空港に輸送します。空港に貨物が搬入されると、運送業者が貨物の検品を行い、検品が終わるとAir Way Billというラベルを貼って保税区域に貨物を搬入します。搬入後、輸出申告内容に問題がなければ、航空便に貨物を載せて香港へ発送することになります。
海上運送:
海上輸送の場合、まず運送業者が空のコンテナを指定された場所に運んできます。 指定された場所で空のコンテナに貨物を積み込んだ後、運送業者は出港地のコンテナヤードにコンテナを搬入します。コンテナが搬入された後に輸出申告を行い、申告内容に問題がなければ、船に貨物を積んで香港への出港が始まります。
5.香港における通関手続きと国内輸送
香港に貨物が到着すると、輸入通関が行われます。この時、貨物の種類によって危険物または規制に反する物品に分類される場合、追加の証明を要求される場合がありますので、発送する貨物が証明書類が必要な貨物であるかを事前に確認する必要があります。 問題がなければ貨物通関が成立し、その後貨物は運送業者によって目的地まで配送されます。
6.荷物の確認と代金決済
商品が納品されると、内容物の確認が行われます。取引条件通りに数量が梱包されているか、破損や品質に問題がないかなどを確認します。 万が一問題が発生したり、輸送中に商品が破損した場合は、取引先や保険会社などと対応を進めなければなりません。 無事に配送が完了したら、事前に協議した条件に基づいて代金決済を行います。
このように、香港に輸出するためには複雑な工程を必要とします。 輸出工程が複雑で、日本の輸出規制と香港の輸入規制に関する専門的な知識がない場合には、個人では対応しにくい側面があるため、これに対する十分なノウハウを持っている業者を選定することが重要です。 また、長距離を輸送するため、問題が発生したときの対応方法と万一の事態に備えた保険加入を考慮する必要があります。国内配送と異なり、問題が発生した際に対応できる方法が限られ、時間がかかるため、保険に加入することで事故に対応できるようになります。
香港への輸出に必要な書類について
1.インボイス(仕入書)
インボイスは税関が輸出許可を判断するために必要な資料です。 インボイスに記載されている内容は貨物の品目名、数量、価格、支払い方法、発送人及び荷受人の住所、氏名又は名称などです。決められた様式に従って漏れなく事前に作成しなければなりません。
2.パッキングリスト(梱包明細書)
インボイス補助資料のような書類で、輸出しようとする貨物の個数、重量、体積が記載されます。税関で提出を要求されたり、性格の異なる商品が混在した混載貨物の場合、運送業者から提出を要求されることがありますので、事前に検討した上で作成する必要があります。
3.シッピングインストラクション(船積依頼書)
通関業者が船荷証券(Bill of Lading)または航空運送状(Air Way Bill)を作成するために必要な書類です。この書類をもとに船荷証券が発行されます。船荷証券は貨物請求権を証券化したものです。簡単に言えば、貨物の価値を証明する証明書であるため、荷受人に貨物が引き渡されるまで必ず保管する必要があります。
4.委任状
通関業者に通関手続きを委託する場合、当該輸出内容に関連する通関処理委任状を作成し、通関業者に提供する必要があります。通関手続きは経験のない個人が行うのは難しいので、関連経験がない場合は、委任状を作成して通関業者に依頼するのが有利です。
上記の書類は輸出を進めようとする荷主が直接作成しなければなりません。漏れがないように、十分ご注意の上輸出を進めてください。
日本から香港への輸出規制
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日本→香港への輸出時の規制
①リスト規制
リスト規制は、輸出する物品が武器や大量破壊兵器などの開発などに使われるおそれの高い15品目を規制するものです。この規制は、輸出しようとする貨物の用途や物品を送る相手に関係なく適用されます。 そのため、海外にある自社工場に納入したり、日本系企業の海外拠点に輸出する場合にも、必ず経済産業大臣の輸出事前許可が必要になっています。
②キャッチオール規制
リスト規制に該当しなくても、武器や大量破壊兵器などの開発などに使用される恐れがある物品は、キャッチオール規制により規制の対象となります。
詳しくは、以下のページでご確認ください。
・安全保障貿易管理について(経済産業省貿易管理部)
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/seminer/shiryo/setsumei_anpokanri.pdf
香港の輸入規制
輸出した物品が香港現地で輸入規制に該当する場合、輸入が不可能な場合があります。 従って、事前に輸入規制に関する最新情報を検討し、輸出しようとする物品が香港の輸入禁止品目であるか否かを確認する必要があります。 輸入規制対象品目には、輸入が不可能な品目があり、輸入は可能であるが、追加の確認と証明が必要な品目があります。
①輸入禁制品
世界的に輸入が禁止されている物品は共通して該当します。例えば、AV製品、ワシントン条約に違反する物品、偽造品、盗品、著作権侵害品などが挙げられます。
②香港現地において確認が必要な項目
輸入は可能ですが、追加の確認と証明が必要な品目があります。品目によって確認手続きを行った後、輸入が拒否される場合がありますので、関連最新情報を事前に熟知した上で輸出を進める必要があります。
- 食品(すべての食品、肉類及び冷凍乳製品、牛乳及び乳飲料)食品を販売する場合には、ライセンス取得が必要であり、必要に応じては香港衛生局の許可を申請する必要があります。
- 動植物
- 医薬品(医薬品の種類と劇薬の取り扱いによって付加的な許可と手続きが必要です)
- 戦略物資(高性能デジタルコンピュータ、先端通信システム)、
- 繊維製品
- その他(酒類、タバコ、メチルアルコール、米、ダイヤモンド原石、農薬など)
品目ごとに関係省庁や機関に許可申請を行う必要があります。
詳しくは以下のページをご覧ください。
・JETRO 香港における輸出入ライセンス
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/hk/trade_02/pdfs/hk2B010_imp_exp_license.pdf
・JETRO 香港 関税制度
https://www.jetro.go.jp/world/asia/hk/trade_03.html
輸入規制事例の具体例は以下の通りです。 以下のPDFファイルをご確認ください。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2017/d3e71d2324f1c9d3/hk_cosmetics.pdf
輸出入関税は?
香港は自由貿易港(フリーポート)として、原則としてすべての物品を関税なしで輸入することができます。ただし、通関制度が定められており、輸入した日から14日以内に税関申告を行う必要があります。 また、原則として無関税が適用されますが、以下の4つの品目は例外的に関税が課されるため注意が必要です。
①酒類
アルコール度数と価格によって関税率が異なります。アルコール度数が30%以上の場合、高い税率が適用されるので注意が必要です。
②タバコ
数量に応じて関税率が異なります。
③炭化水素油(ガソリン、軽油)
数量に応じて関税率が異なります。
④メチルアルコール
数量に応じて関税率が異なります。
個人消費目的の少量持ち込みについては、上記関税適用品目についても関税が免除される場合があります。詳しくは下記をご確認ください。
・JETRO 香港 関税制度
https://www.jetro.go.jp/world/asia/hk/trade_03.html
中国・アセアン向けビジネス、香港を拠点に?
香港が中国と結んだ実質的なFTAであるCEPAと、ASEANと結んだFTAを利用すれば、香港を中華圏やASEAN諸国への貿易ゲートウェイとして活用することができます。香港はビジネスに活用できるメリットが多い地域であるため、国際市場への進出を検討しているのであれば、香港は外せないでしょう。
香港を活用した中国ビジネスのメリットは?
香港と中国本土間のCEPAという経済協力強化協定を活用すれば、輸出関連コストを削減することができます。CEPAとは、香港と中国の経済貿易緊密化に関する協定で、2003年に締結され、翌年から施行された実質的なFTAです。CEPAを利用すれば、香港を原産地とする製品が中国に輸入される際に関税を免除することができます。香港を原産地とする製品でなければ関税免除が適用されませんが、外国企業が輸出する製品でも、香港で原産地証明書を発給すれば関税免除を受けることができます。
香港を活用したASEANビジネスのメリットは?
2017年、香港はASEANとFTAである香港・ASEAN自由貿易協定(AHKFTA: ASEAN Hong Kong Free Trade Agreement)を締結しました。 これにより、香港からシンガポールに輸出される香港産製品については、すべての関税が免除されるようになりました。 その他のASEANを構成する9カ国については、品目別、国別に関税引き下げの恩恵を受けることができます。
香港を拠点とするビジネスのメリットは、主に中国との交流にあります。しかし、対中国ビジネスの延長線上でASEANとの関係も効率的に構築することで、さらなるビジネス拡大や収益モデルの多様化を狙うことができるため、香港を拠点としたASEAN市場への進出も検討する価値が高いと言えるでしょう。
まとめ
以上、本記事では、香港への輸出がどのような流れで行われ、どのような手続きや注意が必要なのか、そして香港を拠点に中国やASEAN諸国にビジネスを拡大する際にどのようなメリットがあるのかについてご紹介しました。 香港への輸出には多くのメリットがありますが、国内販売とは異なり、海外への輸出にはリスクが伴うことをご理解いただき、万が一問題が発生しないよう、事前に輸出関連の規制や手続きについて十分に検討した上で輸出を進めましょう。
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