マレーシア貿易・輸出の基礎知識(2025年更新)

東南アジアの要所に位置するマレーシアは、マレー半島とボルネオ島北部から成る多民族国家で、自然環境と都市機能が共存する国です。首都クアラルンプールを中心に、製造業や輸出関連産業が集積しており、ASEANの中でも安定した経済成長を続けています。

2024年には輸出額が過去最高水準を記録し、引き続き貿易黒字を維持しています。半導体やパーム油などの主要産品に加え、電気電子分野やEV関連部品の輸出も拡大傾向にあります。

本記事では、そんなマレーシアの最新の貿易状況と、今後注目すべき輸出の動きについてわかりやすく解説します。

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マレーシア貿易のメリット

マレーシアへの輸出は、多くのメリットをもたらす可能性があります。マレーシアは東南アジア地域に位置し、経済成長が続いており、多くの投資機会や市場が存在します。

以下に、マレーシアへの輸出の主なメリットをいくつか挙げてみましょう。

①経済成長と市場拡大

マレーシアは急速に成長し続ける経済を持っており、これにより日本企業にとっての市場拡大のチャンスが増えています。マレーシアのGDP成長率は近年高水準を維持しており、多くの企業がビジネスチャンスを求めて進出しています。

これにより、日本企業がマレーシアに輸出することで、新たな市場を開拓することが可能となります。

②貿易関税の低減

マレーシアと日本は経済連携協定(EPA)を結んでおり、これにより両国間の貿易関税が低減されています。この結果、日本企業がマレーシアに輸出する際にかかるコストを削減することができます。

さらに、マレーシアはASEAN諸国とも自由貿易協定(FTA)を結んでおり、日本企業がマレーシアを通じてアジア全体への輸出拡大が容易となっています。

③労働コストの削減

マレーシアは比較的低い労働コストを持っているといわれており、そのために日本企業がマレーシアに輸出すれば、現地での生産コストを削減することができます。これにより、日本企業は競争力を向上させることができるだけでなく、利益率を高めることが可能となります。

④ビジネス環境の整備

マレーシア政府は外国企業の進出を積極的に促進する政策を実施しており、法人税の優遇措置や規制緩和などビジネス環境の整備が進んでいます。これにより、日本企業がマレーシアに進出した際のリスクを低減することができ、さらなるビジネスチャンスを享受することが可能となります。

⑤文化の類似性

マレーシアは日本と同じようなアジア文化を持っており、ビジネス上のコミュニケーションが比較的容易であるといわれています。このため、日本企業はマレーシアに輸出する際に、ビジネス上の誤解や摩擦を最小限に抑えることができます。また、マレーシアには日本文化に親しんでいる人々が多く、日本製品やサービスに好意的な反応が得られることが期待されます。

マレーシア貿易を行う際に押さえるべきポイント

①市場調査とニーズの把握

市場調査とニーズの把握: マレーシア市場の需要やトレンドを徹底的に調査し、日本の商品やサービスがどのような需要を持つかを理解することが重要です。市場のニーズに合わせて提供する価値を明確にすることが成功の基盤となります。

②貿易協定の利用

貿易協定の利用: 日本とマレーシアとの間には自由貿易協定(FTA)が存在しており、関税撤廃や輸入規制の緩和が行われています。FTAの利用によってコストを削減し、競争力を高めることができます。

③法律・規制の遵守

法律・規制の遵守: マレーシアの法律や規制に従うことは不可欠です。輸出商品に関するラベリングや品質基準などを遵守し、適切な許認可手続きを行うことが求められます。

④販売ルートとパートナーシップの構築

販売ルートとパートナーシップの構築: 現地での販売ルートを選定し、代理店、ディストリビューター、パートナーなどとのパートナーシップを築くことが効果的です。地域のビジネスネットワークを活用して市場に進出することができます。

⑤文化と言語の理解

マレーシアは多文化国家であり、マレー、中国、インド系など多様な民族が共存しています。文化や言語の違いを理解し、適切なコミュニケーションを図ることが重要です。

⑥価格設定と競争戦略

現地市場の価格水準や競合状況を分析し、適切な価格設定と競争戦略を立てることが必要です。価格帯や付加価値を考慮して戦略を構築しましょう。

⑦アフターサービスとカスタマーサポート

輸出した商品やサービスに対するアフターサービスやカスタマーサポートを提供することで、顧客の信頼を築きます。良好な顧客関係を維持することが重要です。

⑧リスク管理

輸出にはリスクがつきものです。政治的な変動や通貨の変動、物流の問題などに備えるために、リスク管理策を考えることが大切です。

マレーシアの主な貿易品目

マレーシアはASEANの中でも工業化が進んだ国の一つであり、輸出主導型経済の特徴を色濃く持っています。近年は半導体などの電気電子機器を中心に、農産品や鉱物資源の輸出も堅調に推移しており、2024年の輸出額は過去最高水準に達しました。

以下に、2024年時点での主な輸出入品目を整理します。

主な輸出品目(2024年)

・電気・電子製品(集積回路、半導体等)

・パーム油およびパーム油製品

・石油・ガス製品(原油・精製品・LNG)

・化学製品(石油化学含む)

・ゴム製品(手袋・自動車部品向け)

・機械・器具類

・金属製品(アルミ・鉄鋼)

・精密機器・光学機器

電気・電子製品は全輸出の35%以上を占め、ペナン州を中心とした製造拠点の強化により、今後も伸びが期待されています。

主な輸入品目(2024年)

・電気・電子製品(電子部品・原材料)

・機械類・製造装置

・化学製品

・輸送機器(自動車・部品)

・原油・石油製品

・食料品(小麦・乳製品・果物など)

・鉄鋼製品

・医療・科学機器

輸入も生産拠点の高度化に伴い、製造装置や電子部材の比重が高まっており、国内需要の拡大とあわせて輸入量は安定的に推移しています。

電気・電子分野を中心に、今後もマレーシアの貿易は成長が見込まれており、日本を含む各国企業にとっても注目すべき市場の一つです。

マレーシアの主な貿易相手国

これまでマレーシアの主な貿易品目について見てきましたが、では実際に、どの国々と活発に貿易を行っているのでしょうか。

マレーシアの貿易は、輸出入の双方においてアジアを中心とした地域との結びつきが強いのが特徴です。2024年の統計によれば、以下の国々が主要な貿易相手国として挙げられます。

主な輸出相手国(2024年)

1.中国

2.シンガポール

3.アメリカ

4.日本

5.香港

主な輸入相手国(2024年)

1.中国

2.シンガポール

3.アメリカ

4.台湾

5.日本

特に中国は、2009年以降15年連続でマレーシア最大の貿易相手国となっており、2024年も輸出入の双方で首位を維持しています。

また、ASEAN域内のシンガポールや、米国・日本との経済連携も強く、ハイテク製品や電子部品、石油関連製品を中心とした双方向の取引が活発です。輸出入の相手国がほぼ共通している点も、マレーシアの貿易構造の特徴の一つです。

今後も地域経済の連携深化やFTA(自由貿易協定)の活用により、こうした主要国との関係はさらに強化されていくと見られています。

日本とマレーシア間の貿易について

日本とマレーシアは長年にわたり緊密な経済関係を築いており、東南アジア諸国の中でも特に安定した貿易パートナーシップを維持しています。

マレーシア貿易開発公社(MATRADE)および財務省の統計によると、2023年の日本とマレーシアの貿易総額は約5兆2,000億円に達し、過去5年間で高水準を維持しています。

日本の対マレーシア輸出額(2023年):約2兆2,000億円

日本の対マレーシア輸入額(2023年):約3兆円

日本にとってマレーシアは第10位前後の輸入相手国第13位前後の輸出相手国

主な輸出品(日本 → マレーシア)

・一般機械(半導体製造装置など)

・自動車および部品

・鉄鋼製品

・プラスチック原料

・光学・精密機器

中でも機械類は日本の対マレーシア輸出の約4割を占め、電子部品製造など現地の産業活動を支えています。

主な輸入品(マレーシア → 日本)

・液化天然ガス(LNG)

・電気・電子部品(半導体含む)

・プラスチック製品

・木材・合板

・衣類・繊維製品

液化天然ガスは日本のエネルギー安全保障にとって重要な資源であり、マレーシアは主要供給国の一つです。その他にも、電子部品や木材製品など、多様な分野での輸入が継続的に行われています。

今後もCPTPPやRCEPといった自由貿易協定の枠組みを活用し、日マレーシア間の貿易は一層の拡大が期待されます。特に、グリーンエネルギー、デジタル技術、サプライチェーン強靱化といった分野での連携強化が進められています。

マレーシアにおける貿易拡大の将来性

マレーシアは、自由貿易協定(FTA)を積極的に活用する貿易立国として知られており、FTAネットワークの広さが輸出拡大の大きな強みとなっています。

2024年の統計によると、FTAパートナー国との貿易総額は約1.63兆リンギット(約39兆円)に達し、マレーシア全体の貿易額の67%以上を占めています。CPTPPやRCEPなどメガFTAへの参加も貿易促進に寄与しており、地域内外の貿易自由化の恩恵を受けています。

日本との間では、以下のような協定が活用可能です。

・日・マレーシア経済連携協定(JMEPA)

・日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)

・RCEP(東アジア地域包括的経済連携)

これらの協定により、関税の段階的撤廃、原産地証明の簡素化、通関の迅速化などが実現されており、日系企業にとってもマレーシアとの双方向貿易を拡大する土台が整いつつあります。

今後は、グリーンエネルギー、電気自動車、半導体などの成長産業を中心に、輸出入のさらなる拡大とサプライチェーン強化が見込まれています。FTAの制度を上手く活用することで、コスト競争力の確保と新市場開拓の両立が可能になるでしょう。

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