越境ECの始め方|中小メーカーが事業として始める5ステップと売り場の選び方

越境ECは、自社の商品をインターネットで海外の顧客に直接販売する方法です。海外に拠点や代理店を持たなくても始められるため、少量から海外の反応を確かめたい中小メーカーにとって取り組みやすい販路といえます。売り場の選び方次第では、海外向けの対応を自社で抱えずに試すこともできます。

経済産業省は2025年8月に「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」を公表しました。同調査によると、2024年に中国の消費者が日本の事業者から越境ECで購入した金額は2兆6,372億円で、前年より8.5%増えています。

一方で、米国やEUでは少額の商品にかかる関税のルールが、2025年から2026年にかけて相次いで変わりました。売り場や物流の選び方に加えて、税金の扱いまで事前に確認しておくことが欠かせません。

本記事では、越境ECを事業として始める5つのステップと売り場の選び方、見落としやすい規制と税金、使える支援を解説します。

越境ECとは|BtoCとBtoBの違い

越境ECとは、国境を越えて行う電子商取引のことです。売る相手によって、BtoC(消費者向け)とBtoB(事業者向け)の2つに分けられます。

BtoC|海外の消費者に直接売る

BtoCの越境ECは、海外の個人に商品を1個から販売する形です。注文ごとに小口で発送するため、1件あたりの送料と関税の扱いが利益を左右します。

雑貨・化粧品・食品・趣味用品など、消費者が自分で選んで買う商品と相性が良い傾向があります。商品ページの見せ方や購入者の評価が、売れ行きに直結しやすい点も特徴です。

BtoB|海外の事業者にまとめて売る

BtoBの越境ECは、海外の小売店や飲食店、卸などの事業者に、ネット上で受注してまとめて販売する形です。BtoB向けのマーケットプレイスや、自社サイトに設けた卸向けの注文ページを使います。

1回の取引額が大きくなる分、通常の輸出と同じく輸出申告や取引条件の取り決めが必要になる場面が増えます。費用の負担範囲を決めるインコタームズ(貿易条件)も確認しておきましょう。

越境ECの始め方5ステップ

越境ECは、次の5つのステップで進めます。

  1. 国と商品を決める
    売る国・相手・商品を絞り、輸入できるかを確かめる
  2. 売り場を選ぶ
    海外モール・国内モールの越境機能・自社サイトから選ぶ
  3. 物流を決める
    国際郵便・国際宅配便か、海外の倉庫に預けるかを決める
  4. 決済を整える
    モールの決済か、自社サイトに決済サービスを入れる
  5. 集客する
    広告やSNS、現地の言葉での商品ページで認知を広げる

順番どおりに一つずつ決めていくと、途中の手戻りが起きにくくなります。各ステップで押さえたい点は次のとおりです。

ステップ1・2|国と商品を決め、売り場を選ぶ

最初に、どの国の誰に、どの商品を売るかを決めます。売りたい国で自社の商品が輸入できるか、似た商品がいくらで売られているかを先に調べておくと、後の手戻りを防げます。

国と商品が決まったら、海外モール・国内モールの越境機能・自社サイトから売り場を選びます。売り場ごとの違いは、次の章の比較表で整理しています。

越境EC以外の海外販路開拓の方法については、以下の記事で解説しています。

ステップ3・4|物流と決済を整える

物流は、日本郵便の国際郵便(EMS)や国際宅配便で注文ごとに送る方法と、海外の倉庫に商品を預けておく方法があります。注文が少ないうちは前者、販売が安定してからは後者を検討するのが一般的です。

決済は、海外モールであればモールの決済をそのまま使えます。自社サイトでは、クレジットカードや海外で普及している決済サービスを導入します。

ステップ5|集客する

売り場を開いただけでは、海外の顧客には見つけてもらえません。モール内の広告やSNS、現地の言葉での商品ページ作りなどで、少しずつ認知を広げていきます。

最初から多くの国に広げるよりも、反応の良い国に絞って広告や商品ページを改善していくほうが、費用を抑えやすくなります。

越境ECの売り場の選び方|海外モール・国内モール・自社サイトを比較

越境ECの売り場は、大きく3つに分けられます。費用や手間の違いは次のとおりです。

売り場特徴(費用・集客・手間)向いている会社
海外モール(Amazon・eBayなど)初期費用は低〜中。モールの集客力を使えるが、外国語での対応や発送の手間が多い特定の国で多くの消費者に届けたい会社
国内モール・国内向けサイトの越境機能初期費用は低。代理購入・転送サービスと連携し、国内への発送で済むまず手間をかけずに海外の反応を見たい会社
自社サイト初期費用は中〜高。集客・決済・発送を自社で担うブランドを育て、顧客情報を自社に残したい会社

※費用・手間は編集部による目安です。サービスや商品、売る国によって異なります。

まず試すなら越境機能・海外モール

国内の売り場に代理購入サービスなどを連携させる方法は、海外の顧客への発送や問い合わせ対応を連携先が担います。そのため、自社の手間を最小限にして始められます。

海外モールは自ら出品する分の手間がかかりますが、モールの集客力を使って現地の消費者に直接届けられるのが強みです。

eBayの仕組みや出品の流れについては、以下の記事で解説しています。

腰を据えて育てるなら自社サイト

自社サイトは集客に時間がかかる一方、価格やブランドの見せ方を自由に決められ、購入者の情報も自社に残ります。リピート購入につなげやすい点も強みです。

モールで反応の良かった国に向けて、自社サイトを立ち上げる進め方も考えられます。モールと自社サイトの役割を分けて、併用する方法もあります。

越境ECで見落としやすい規制と税金

越境ECでも、商品は輸出入の手続きを経て海外に届きます。規制と税金は国ごとに異なるため、売る国が決まった段階で確認が必要です。

輸入規制|売る国で輸入できる商品か

食品や化粧品、電気製品などは、国によって輸入できる成分や、事前の登録・表示のルールが定められています。日本で問題なく売れている商品でも、売る国の規制に合わなければ現地の税関で止まるおそれがあります。

規制の内容は、ジェトロの国・地域別情報や、売る国の当局の案内で確認できます。不明な点は、出品の前に専門家や支援機関に確認しておきましょう。

関税と現地の消費税|少額の免税は縮小している

米国は2025年8月に、少額の商品の関税を免除する措置(デミニミス)を停止しました。日本郵便は2026年4月から、関税を事前に支払う条件で、米国宛ての販売品の引き受けを再開しています(日本郵便の案内、2026年7月時点)。

EUでも2026年7月1日から、150ユーロ未満の免税措置が撤廃されました。ネット通販の郵便物には、内容品ごとに3ユーロの関税がかかります(日本郵便の案内、2026年9月時点)。EUではこれとは別に、商品価格に応じた付加価値税(VAT)もかかります。

発送を始める前に、次の点を確認しておきましょう。

  • 売る国で、少額の商品に関税や消費税がかかるか
  • 関税や消費税を、購入者と自社のどちらが負担するか
  • 使う配送サービスが、関税の前払いに対応しているか

これらは送料と販売価格の設計にも関わるため、売り場を開く前に決めておくことが大切です。

関税や消費税の負担者を決めずに発送すると、購入者に思わぬ請求が届き、受け取りを拒否されるおそれがあります。また、EUのVATを販売者が前払いするIOSSを使った郵便物は、2026年9月時点で差し出せない点にも注意が必要です。

越境ECの始め方で使える支援

越境ECは、公的機関の支援や補助金を使うことで、費用と手間を抑えて始められます。

ジェトロの支援を活用する

ジェトロの「JAPAN MALL事業」は、ジェトロが海外のECサイトのバイヤーに日本の商品を紹介する事業です。成約した場合の取引は、原則として日本国内への納品・円建て決済・全量買い取りです(ジェトロの2025年度の案内による)。そのため、自社で輸出手続きをせずに海外のECサイトで販売できます。

どの支援を使えばよいか分からない段階では、「新規輸出1万者支援プログラム」に登録するとEC活用を含めた支援を提案してもらえます。

補助金でサイト構築費を抑える

越境ECサイトの構築費や海外向けの広告費には、小規模事業者持続化補助金などが使える場合があります。サイトの構築費は「ウェブサイト関連費」として扱われ、上限などの条件があります。

対象となる経費や締切は回ごとに変わるため、申請前に公募要領で確認しましょう。地域の商工会・商工会議所に相談すると、申請に必要な書類の準備も進めやすくなります。

まとめ

本記事では、中小メーカーが越境ECを事業として始める手順を、5つのステップと売り場の選び方、規制と税金、使える支援に分けて整理しました。

越境ECは、まず売る国と商品を決め、手間をかけずに試せる売り場から始めるのが現実的です。反応の良い国が見えてきたら、海外モールや自社サイトに力を入れていく進め方が取り組みやすいといえます。BtoCかBtoBかによっても、物流や取引条件の決め方は変わります。

米国やEUでは少額の商品の関税ルールが変わっているため、送料と価格の設計も早めに見直しておく必要があります。売りたい国の輸入規制と関税を確認したうえで、ジェトロの支援や補助金も活用しましょう。制度やルールは見直されることがあるため、最新の情報を確認することも大切です。

判断に迷う場合は、ジェトロや商工会議所などの支援機関、通関や税務の専門家に相談することをおすすめします。

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