海外代理店の探し方は、ジェトロなどの公的支援、展示会・商談会、業界団体や商社の紹介、オンラインの4つが主な入り口です。ただし、見つけることと同じくらい、候補を見極め、契約で役割と条件を決めておくことが大切です。
現地で売ってくれるパートナーが見つかっても、契約の中身があいまいなままでは、売上が伸びないのに別の相手に切り替えられないといったトラブルにつながります。
ジェトロの「2025年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(2026年3月公表)では、海外拠点を持たない企業のうち45.3%が「今後新たに進出したい」と答えました。自社で拠点を持たずに現地で売る手段として、代理店や販売店と組む方法は有力な選択肢です。
本記事では、海外代理店と販売店の違いから、探し方、候補の見極め方、契約で決めておくこと、よくあるトラブルまでを解説します。
海外代理店と販売店(ディストリビューター)の違い

「海外代理店」と呼ばれる相手には、法的な立場が異なる代理店(エージェント)と販売店(ディストリビューター)の2種類があります。主な違いは次のとおりです。
| 項目 | 代理店(エージェント) | 販売店(ディストリビューター) |
|---|---|---|
| 顧客との売買契約 | 自社(メーカー)が結ぶ | 販売店が自ら結ぶ |
| 商品の流れ | 自社から顧客へ直送 | 販売店が買い取り、在庫を持って再販売 |
| 報酬 | 売上に応じた手数料(コミッション) | 仕入れ値と販売価格の差(利ざや) |
| 販売価格 | 自社が決める | 販売店が決める |
| 代金回収のリスク | 自社が負う | 販売店が負う |
※ジェトロ「代理店契約と販売店契約の相違点」(2025年8月更新)をもとに編集部作成。それぞれの特徴を詳しく見ていきます。
代理店は手数料を受け取って売り込みを代行する
代理店は、メーカーに代わって現地の顧客を探し、商談をまとめる役割を担います。売買契約はメーカーと顧客の間で結ばれ、代理店は成約額に応じた手数料(コミッション)を受け取ります。
価格や取引先を自社でコントロールしやすい一方、顧客が代金を払わない場合のリスクは自社が負います。商品は自社から顧客へ直接送るため、輸出の手続きや代金の回収も自社で行う必要があります。
販売店は商品を買い取って再販売する
販売店は、メーカーから商品を買い取り、自社の在庫として現地の顧客に販売します。在庫や代金回収のリスクを販売店が負うため、メーカー側は販売店への輸出の時点で代金を受け取れるのが利点です。
その代わり、現地での販売価格は原則として販売店が決めます。自社の商品が現地でいくらで売られるかを直接コントロールしにくい点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
日本語の「販売代理店」「総代理店」といった呼び名だけでは、代理店か販売店かは区別できません。相手が実際にどちらの役割を担うのかを確かめ、契約書に権利と義務として書き分けておくことが、後のトラブルを防ぐ第一歩といえます。
海外代理店の探し方|ジェトロ・展示会・業界団体・商社の紹介・オンライン

海外代理店の候補は、次のような入り口から探せます。
- ジェトロ・中小機構などの公的支援
- 海外の見本市・商談会
- 業界団体・商社・既存の取引先からの紹介
- オンラインのカタログサイトやマッチングサービス
1つに絞らず、複数の入り口を並行して使うと、候補を比べながら選びやすくなります。
ジェトロの支援と展示会で探す
ジェトロの中小企業海外展開現地支援プラットフォームでは、現地のコーディネーターが取引先候補のリストアップや商談のアポイント取得を無料で支援しています(九州経済産業局「海外ビジネスサポートブック」2025年版による)。
海外の見本市にジェトロのジャパン・パビリオンとして出展すれば、現地の代理店や販売店の候補と効率よく商談できます。中小機構の海外CEO商談会のように、海外企業の経営者を日本に招く商談会もあります。
業界団体・商社の紹介で探す
業界団体や取引のある商社、金融機関は、同じ業界で実績のある現地企業を知っていることがあります。すでに海外に販路を持つ取引先や、同じ国に輸出している同業者に相談してみるのも一つの方法です。
紹介を受けた相手は、すでに誰かと取引の実績があるため、ゼロから探すよりも信頼性を確かめやすい傾向があります。ただし、紹介だからといって確認を省かず、次の章のチェックポイントで見極めることが大切です。
オンラインで探す
ジェトロのJapan Streetは、ジェトロが招待した海外バイヤーだけが閲覧できるオンラインカタログで、参加費と商品の登録料は無料です(2026年3月の募集要項による)。バイヤーから見積や商談の依頼が届くと、ジェトロを通じて連絡が入ります。
中小機構のJ-GoodTechでも、海外企業とのマッチングを無料で利用できます。オンラインで出会った相手は、実際に会う前に会社の実態を確かめておくと安心です。
代理店以外も含めた海外販路開拓の方法については、以下の記事で解説しています。

海外代理店の候補を見極めるチェックポイント

候補が見つかったら、契約の前に次の点を確かめます。
- 自社の商品と相性の良い売り先(業界・店舗・地域)を持っているか
- 競合するメーカーの商品を扱っていないか
- 営業の担当者や倉庫、アフターサービスの体制があるか
- 経営状態に問題がなく、支払いが滞るおそれがないか
- 現地での輸入許可や登録の手続きに対応できるか
ここからは、これらを確かめる具体的な方法を紹介します。
販売力と取り扱う商品を確かめる
候補が現在どんな商品を扱い、どの売り先に強いのかを聞き取ります。競合メーカーの商品を扱っている場合、自社の商品が後回しにされるおそれがあるため、扱いの方針を事前に確認しておくことが大切です。
可能であれば現地を訪ね、事務所や倉庫、取引先の店舗を見ておくと判断の材料が増えます。
信用調査で経営状態を確かめる
販売店に掛け売りする場合は特に、相手の経営状態の確認が欠かせません。日本貿易保険(NEXI)は海外バイヤーの信用調査を行っており、中小企業は一定の社数まで無料で利用できます(NEXIの2026年の案内による)。
民間の信用調査会社に調査を依頼する方法もあります。調査結果は、取引の条件(前払いか掛け売りか)を決める材料にもなります。
小さな取引から始めて相性を見る
最初から長期の独占契約を結ぶのではなく、少量の取引や期間を区切った契約から始める方法もあります。
実際の販売実績や連絡の早さを見てから本契約に進めば、相性の合わない相手と長く縛られるリスクを減らせます。試しの取引の段階から、報告の頻度や発注の流れを決めておくと、相手の対応力を見極めやすくなります。
輸出で成功した企業に共通する現地パートナーとの関係づくりについては、以下の記事で解説しています。

海外代理店契約で決めておくこと|独占権・最低購入量・期間と解約・価格

海外代理店との契約では、少なくとも独占権・最低購入量・期間と解約・価格の4つを具体的に決めておきます。それぞれのポイントを解説します。
独占権と最低購入量はセットで決める
独占権とは、決められた地域で自社の商品を売れるのはその代理店だけ、と約束するものです。独占権を与えると、自社がその地域で直接販売するには、契約で例外を定めておく必要があります。
販売努力の義務や最低購入量の定めがないと、売上が伸びなくても独占が続き、それだけを理由に契約を解除するのは難しいとされています。最低購入量は「年間○個(○ドル)以上を購入する」のように数量か金額で決め、未達の場合に解約するか、独占権を外すかを選べる形にしておくと安心です。
契約期間と解約の条件を決める
契約期間は数年単位で区切り、更新するかどうかの条件を定めておくのが一般的です。あわせて、何を理由に、何日前の通知で解約できるのかを書いておきます。
期間の定めや解約の条件がないと、関係を見直したいときに話し合いがこじれやすくなります。自動で更新される契約にする場合も、更新しないときの通知の期限を決めておきましょう。
価格と手数料の決め方を決める
代理店の場合は、手数料率と支払いの時期(成約時か入金時か)を決めます。販売店の場合は、販売店への卸価格と、価格改定の手続き、決済の通貨を決めます。
販売店の販売価格を自社が一方的に指定すると、日本の独占禁止法や現地の競争法に触れるおそれがあります。公正取引委員会の流通・取引慣行ガイドラインでも、販売先の再販売価格を拘束することは原則として違法とされています。
代理店や販売店を保護する法律は国によって異なり、契約書の内容より現地の法律が優先される場合があります。契約の言語や、紛争になったときにどの国の法律で、どこで解決するかも含め、契約を結ぶ前に国際取引に詳しい弁護士や、ジェトロの専門家相談で確認することが重要です。
海外代理店とのよくあるトラブル

海外代理店とのトラブルは、契約で決めていなかったことから起こりがちです。よくある3つの例を紹介します。
売れないのに独占契約が続く
独占権を与えたものの、代理店がほとんど営業をせず、その国での売上が伸びないケースです。最低購入量や解約の条件を決めていないと、別の代理店に切り替えることもできません。
独占権を与えるなら、成果の基準と、未達のときの扱いを必ず契約に入れておきましょう。
契約を終えるときに補償を求められる
EU加盟国では、代理人(エージェント)を保護するEUの指令にもとづき、契約が終了したときに代理人が補償金を請求できる仕組みがあります。金額の決め方は国によって異なり、過去の報酬の1年分を上限とする国もあれば、2年分程度が目安とされる国もあります。
中東の一部の国でも、登録された代理店を保護する法律があり、契約の終了や代理店の切り替えに制限がかかる場合があります。
代理店に商標を先に登録される
代理店が、メーカーの承諾なく自社の名義で商品名を現地で商標登録してしまうケースです。取り消しを求める手続きはありますが、時間と費用がかかり、その間は販売に支障が出るおそれがあります。
代理店を探し始める段階で、自社で現地の商標を出願しておくことが有効な予防策になります。
まとめ
本記事では、海外代理店の探し方を、販売店との違い、探し方、候補の見極め方、契約で決めておくこと、よくあるトラブルに分けて整理しました。
代理店と販売店ではリスクと権限の持ち方が異なるため、まず自社に合う形を決めることが出発点です。候補はジェトロなどの公的支援や展示会、紹介、オンラインで探し、販売力の確認や信用調査、小さな取引を通じて見極めます。
契約では、独占権と最低購入量、契約期間と解約の条件、価格や手数料の決め方を具体的に書いておくことで、売上が伸びないのに相手を切り替えられない、契約終了時に補償を求められるといったトラブルを防ぎやすくなります。代理店や販売店を保護する法律は国によって異なります。
契約を結ぶ前には、国際取引に詳しい弁護士や、ジェトロの専門家相談などの専門家に相談することをおすすめします。

