エジプト進出はビジネスチャンスあり?手続きや優遇措置など

エジプトは人口増加と豊富な資源を背景に、中東・アフリカ地域のハブとして急速に存在感を高めています。製造業やインフラ投資、消費市場の拡大など、外国企業にとって魅力的なチャンスが広がる一方で、労働許可や商業登記といった制度面のハードルも存在します。

本記事では、エジプト進出に必要な基本的な制度や優遇措置、実務上の注意点を整理し、企業がスムーズに海外展開を進めるためのポイントをわかりやすく解説します。

エジプトへビジネス展開するメリット

エジプトは、アフリカ大陸の中でも経済的に成長が続いており、日本企業にとってビジネス展開をする上で大変魅力的な市場となっています。エジプトに進出することで得られるメリットについて、以下のような点が考えられます

① 市場の拡大と需要の伸び

エジプトは人口が非常に多く、アフリカ有数の経済大国であるため、市場の規模は大きく、多くのビジネスチャンスが存在します。急速に発展する経済と、若年層を中心とした消費意欲の高さが相まって、新たな製品やサービスに対する需要が増大しています。

人々の所得水準の向上に伴い、高品質な商品や革新的なサービスへの需要も高まっています。そのため、市場の拡大と需要の伸びが予測され、新規参入企業にとっては成長のチャンスが豊富です。

② 優遇税制と投資環境の整備

エジプト政府は、外資企業を誘致するために税制上の優遇措置を提供しています。これにより、企業がビジネス進出する際の負担が軽減され、投資環境が整備されています。また、多くの自由貿易協定の存在により、市場参入や輸出入に関わる関税負担が低減されるため、国際的な取引がしやすくなっています。

これらの要因が合わさって、エジプトでのビジネス展開が魅力的になっています。

③ 人材の豊富さと低コスト

エジプトは人材が豊富で、その結果として人件費も比較的低い水準に抑えられています。これは企業にとって労働力を確保しやすい環境を提供しています。また、英語を母国語としない多くの人々が英語を話すことができるため、国際的なビジネスコミュニケーションにおける課題が少ないという利点もあります。

この人材の豊富さと多言語スキルの存在は、エジプトでの事業展開を円滑に進めるために重要な要素です。

エジプトは人口多・成長率高、若年層の購買意欲も旺盛で、巨大小売市場を背景に日本企業にも極めて魅力的な進出先です。また税制優遇、自由貿易協定、豊富で英語可能な人材、スエズ運河による地理的優位など、複数の構造的優位性が国際展開を後押ししています。

④ ジオグラフィックな利点

エジプトは地理的にヨーロッパ、アフリカ、中東の3つの大きな市場の中心に位置しており、これによって各市場へのアクセスが容易です。特に、スエズ運河を利用することでアジアとヨーロッパを結ぶ主要な貿易ルートが利用可能となり、物流上の大きな利点が生まれます。

この地理的な利点により、エジプトからの製品や原材料の移動が効率的に行えるため、国際取引において競争力を維持しやすくなります。

エジプト進出の手続き

エジプトで事業を開始する場合、まず必要となるのが「どのような形で進出するか」という初期設計です。拠点の形態、知的財産の保護、雇用ルールなどは日本と大きく異なり、準備段階の判断がその後の運営コストやリスクに直結します。

以下では、進出企業が最初に押さえるべき基本手続きと注意点を整理します。

進出形態の選択:企業規模と目的に応じた拠点づくり

エジプトで事業を開始する際は、まず現地での法人形態を選択する必要があります。主な形態は以下の通りです。

  • 駐在員事務所
  • 支店事務所
  • 株式会社(Joint Stock Company)
  • 有限責任会社(LLC)
  • 単独株主会社

駐在員事務所は市場調査など非営利的な活動に限られ、商取引はできません。一方、支店事務所や株式会社・LLCは商業活動が可能で、輸入・販売などの実務に対応できます。事業規模や投資計画に応じて最適な形態を選択することが重要です。

知的財産の登録:模倣品対策とブランド保護

法人設立後は、特許・商標などの知的財産権の保護手続きを確認します。エジプトの知的財産権法は「特許権」「商標権」「著作権」「植物品種」の4種類に分かれています。

特許権の保護期間は出願から20年で、2年目以降は毎年特許料を支払います。商標は10年間の保護が適用され、商業登録庁で申請できます。海外展開に伴い模倣品リスクは増えるため、ブランドを守るための登録は必須です。

外国人雇用規制と就業許可

エジプトでは外国人の就業分野に制限があり、観光ガイドや輸出入業務は外国人が従事できません。これらの業務を展開する場合は、現地人材を雇用する必要があります。

また、外国人がエジプト国内で就労するには労働許可および居住許可が必須です。さらに、外国人労働者は総従業員の10%を超えてはならないという規制があるため、現地スタッフの採用計画と合わせて人員構成を設計する必要があります。

海外進出の初期設計でつまずく多くの企業は、輸送・通関よりも「顧客獲得」「販売体制」「利益確保」の部分で課題を抱えます。海外輸出ビジネスで利益を出す方法 については以下の記事をご覧ください。

エジプトに進出する外国企業への優遇措置

エジプト政府は外資誘致を国家戦略の柱に位置づけており、企業の初期負担を軽減するための優遇制度を整備しています。 進出時のコスト、投資地域、産業分野に応じて段階的な支援を受けられるため、 適切に制度を活用することで投資回収のスピードを大きく高めることが可能です。

以下では、外国企業が利用できる優遇措置の種類と特徴を整理します。

共通優遇措置:設立時コストの大幅緩和

エジプトの新投資法に基づき、外国企業は会社設立から5年間、各種登記・契約に関わる手数料の免除を受けられます。対象となるのは商業登記簿の登録、基本定款や投資プロジェクト契約書、公証人認証費用、登記手数料などです。

また、工場・拠点の立ち上げに必要な設備機械は関税率2%まで抑えられ、進出初期の資金負担を軽減できます。

特別優遇措置:地域・業種に応じた投資控除

特別優遇措置は投資地域に応じてセクターA・セクターBに分類され、対象プロジェクト開始から7年間にわたり税制控除を受けられます。

  • セクターA:経済特区や開発水準の低い地域(例:スエズ運河経済特区、ゴールデントライアングル)。投資額の50%を控除
  • セクターB:上記以外の地域で特定産業を行う場合。投資額の30%を控除

適用には、新たな法人の設立や会計帳簿の常時設置などの要件が求められます。地域振興や雇用創出を促す政策のため、低所得・低雇用地域や教育・医療水準が低い地域ほど手厚い恩恵を受けられます。

追加優遇措置:高付加価値プロジェクトへの追加支援

特別優遇措置の対象企業に対しては、閣僚評議会の政令により追加優遇措置が付与される場合があります。内容には以下が含まれます。

  • 輸出入専用の税関事務所設置の許可
  • 不動産拡大費用の控除
  • 技術訓練費の50%控除
  • 工業プロジェクトにおける土地代50%控除(引渡しから2年以内の生産開始が条件)
  • 事業戦略に応じた土地の一部無償割当

これらの追加措置は大規模投資や輸出型生産など、国家成長戦略に寄与するプロジェクトほど適用されやすい傾向があります。優遇制度により進出ハードルは下がっていますが、法制度は頻繁に改正され、適用条件も複雑です。

海外輸出を初めて行う際は、商流・書類・物流の順序を誤るとコスト増や通関保留につながります。
初めての海外輸出の基本や流れ については以下の記事をご覧ください。

まとめ

エジプトは人口・市場規模ともにアフリカ有数の成長国であり、若年層の消費意欲も高く、日本企業にとって魅力的な進出先です。また政府による税制優遇やFTA等による関税軽減が進められ、投資環境が整いつつあります。地

理的にもヨーロッパ・中東・アフリカの交差点に位置し、スエズ運河を通じた物流拠点としての利便性も高いです。進出に際しては法人形態(駐在事務所、支店、LLCなど)の選定や知財登録、外国人就業の規制など複雑な手続が伴います。

実務に入る前には、一度専門家に相談することをおすすめします

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