TTSとTTBの違いを完全図解!知らないと損する為替レートの基本

銀行や証券会社の為替レート表に表示されている「TTS」や「TTB」という用語。なんとなく目にしているけれど、意味を正確に理解しているという人は意外と少ないかもしれません。しかしこの2つのレート、実は外貨取引を行う上で非常に重要な指標であり、違いを知らないまま送金や両替を行うと、思わぬコストが発生してしまうことがあります。

本記事では、TTSとTTBの意味や違い、適用される場面、さらには見えづらい「為替コスト」の仕組みまでを詳しく解説します。初心者でも理解しやすいように図表や具体例を交えながら、為替取引で損をしないために押さえておくべきポイントを丁寧に整理していきます。

為替のTTSとTTBの違いとは?視点とレート差を事例で解説

為替レートの「TTS」と「TTB」は、どちらも外貨の取引で使われるレートですが、その意味は「見る立場」によって異なります。
この違いを理解しておくと、海外送金や輸出入決済で思わぬ損失を避けることができます。ここでは、銀行と顧客の視点の違いを整理し、実際のレート差を事例で確認していきましょう。

為替について確認しておきたい方はこちらの記事をご参照ください。

銀行と顧客、どちらの視点で決まるのか?

TTS・TTBは、銀行側の立場を基準に設定されています。
つまり、「銀行が外貨を売るときのレート」と「銀行が外貨を買うときのレート」を区別するためのものです。

用語銀行の動き顧客の動き呼び方
TTS
(Telegraphic Transfer Selling)
銀行が外貨を売る顧客が外貨を買う外貨購入レート
TTB
(Telegraphic Transfer Buying)
銀行が外貨を買う顧客が外貨を売る外貨売却レート

たとえば、個人や企業が海外への支払いを行う場合は「外貨を買う」ことになるため、TTS(外貨購入レート)が適用されます。
一方、海外からの入金や両替で外貨を日本円に戻す場合は、TTB(外貨売却レート)が使われます。

実際のレート差を事例で見てみよう

為替ニュースなどで「1ドル=150円」と報じられていても、銀行の窓口で両替するとそのままのレートでは取引できません。
銀行は、外貨を売るときと買うときで異なるレート(TTS・TTB)を設定しているからです。

区分レート顧客の立場
TTS(外貨購入レート)151円外貨を買う(円を支払う)
TTB(外貨売却レート)149円外貨を売る(円を受け取る)

この場合、TTSとTTBの差(=2円)が「スプレッド」と呼ばれるもので、銀行がリスクや手数料をカバーするために設けている差額です。
つまり、顧客が外貨を買うときは市場レートより高く、売るときは安くなる仕組みになっています。

スプレッド(TTSとTTBの差)はなぜ生じる?

スプレッドは、銀行や金融機関が為替変動リスクと運営コストを補うために設定しています。
外貨を扱う際、銀行は常に為替の変動にさらされており、そのリスクを均等に吸収する必要があります。

そのため、TTSとTTBの間に一定の差を設けることで、取引全体の安定性を確保しているのです。

一般的に、個人向けの取引や小額の両替ほどスプレッドが大きく、法人取引や大口送金になるほどスプレッドは小さく設定されます。
この仕組みを理解しておくと、「どこで両替・送金するのが有利か」を判断しやすくなります。

為替レートの基本を押さえたら、次は円高・円安の動きがどのように取引価格に影響するのかも確認しておきましょう。

TTSとは?TTBとの違いから見る為替レートの意味と使われ方

為替取引において「TTS」という言葉は、外貨を購入する側にとって重要な意味を持ちます。正確には「Telegraphic Transfer Selling rate(電信売相場)」と呼ばれ、銀行が顧客に対して外貨を売るときに適用する為替レートです。

TTSは、海外送金や外貨預金の預け入れなど、円を外貨に換える場面で用いられます。たとえば、日本円でアメリカの取引先にドルを送金したいとき、銀行はドルを顧客に「販売」することになり、その際に適用されるのがTTSレートです。

TTSが使われる具体的なシーン

TTSレートが適用される主な取引は以下のようなものです。

利用シーン内容
海外送金(円 → 外貨)日本円を外国の通貨に換えて海外口座に送金する際のレート
外貨預金の預け入れ円資金をドルやユーロなどの外貨に換えて預金する
外貨建て商品の購入外貨建ての投資信託や保険を円で購入する場合
海外旅行時の現地通貨両替空港や銀行の窓口で円をドルなどに両替する

これらはいずれも、顧客が円を差し出して外貨を手に入れる=銀行が外貨を「売る」という構造になっています。

たとえば、1ドル=150円という仲値があった場合、銀行はその上に一定のスプレッドを加え、TTSを151.5円などに設定します。つまり、顧客が1ドルを購入するには、ニュースで見かける「市場の為替レート」よりも多くの円を支払う必要があるということです。

なぜTTSは仲値より高くなるのか

TTSは基本的に仲値より高く設定されますが、これは銀行が為替変動リスクを回避するために設ける価格差(スプレッド)が反映されているためです。

為替市場は24時間動いており、顧客が取引を行った後にレートが急変する可能性もあります。銀行はこうした変動に対応するため、あらかじめ利益幅を含めた価格を提示しておく必要があります。これがTTSが仲値よりも高くなる理由です。

また、TTSには銀行の事務処理コストや為替業務にかかるリスクコストも含まれています。特に窓口での両替や書面での海外送金には人的コストがかかるため、ネットバンキングに比べてTTSが高めに設定される傾向があります。同じ銀行内でも、店舗・ネット・アプリによってTTSが異なるケースもあります。これは、提供チャネルごとにかかるコストや業務量が異なるためです。

TTSを理解すれば「実際のコスト」が見えてくる

TTSレートは、為替取引において顧客が実際に支払う価格であり、これを知らずに取引すると、「想定よりも損をする」という事態を招くことがあります。

たとえば、「1ドル=150円だと思っていたのに、実際には151.5円で両替された」というケースでは、TTSが適用されていたため、1.5円分のスプレッドを含んだレートで取引されたことになります。もし10,000ドルを購入する場合、この差額だけで15,000円のコストが発生していることになるのです。

こうした実質的なコストは、送金額や両替額が大きくなるほど無視できない金額になります。そのため、TTSをしっかり把握することは、外貨を扱ううえでの基本であり、コスト管理の第一歩と言えるでしょう。

TTSは、「銀行が顧客に外貨を売るときの価格」であり、単に数字を見るだけではわかりづらい“実際に支払う価格”そのものです。

TTBとは?TTSとの違いと為替で「外貨を円に換える」ときの基準レート

前章で紹介したTTSが「外貨を買うとき」のレートであるのに対し、TTB(Telegraphic Transfer Buying rate/電信買相場)は、外貨を円に換えるときに適用される為替レートです。つまり、銀行が顧客から外貨を買い取る場合に使われます。

一見するとTTSと似たような位置づけに見えるかもしれませんが、実際の取引においてはまったく逆の動きを示すレートであり、適用される場面や金額も異なります。

TTBが適用される主な取引シーン

TTBは、以下のような場面で使われます。

利用シーン内容
海外送金の受け取り(外貨→円)海外から送金された外貨を円で受け取る
外貨預金の引き出し・円転外貨で預けた資金を円に戻す
外貨建て資産の解約外貨建て保険や証券を円に換金する際に適用される
海外取引先からの受取決済輸出代金などを外貨建てで受け取った際の円換算処理

たとえば、米国から1万ドルの送金を受け取った場合、日本の銀行はその1万ドルを買い取って、円に換えてあなたの口座に入金します。このとき、適用されるのがTTBです。

TTBはなぜ仲値よりも低くなるのか

TTBは、通常仲値(TTM)よりも低い水準に設定されます。これは銀行が顧客から外貨を買い取る際、自社にとって有利なレートに設定することで、為替変動リスクへの備えと利益確保を両立させるためです。

たとえば、仲値が1ドル=150円であっても、TTBが148.5円に設定されている場合、顧客が持っている1万ドルを円に換えると148万5,000円の入金になります。市場レート(仲値)で単純に計算すると150万円になるため、その差額1万5,000円分が銀行の利益として回収される形です。

この差は、銀行のリスクヘッジコストとして、また事務処理にかかる人件費などをまかなう目的であらかじめレートに組み込まれています。

TTBの理解不足が「想定外の受取額」につながる

TTBの概念を知らずに取引すると、「思っていたよりも入金額が少ない」と感じることがあります。これは、市場のレート(TTM)ではなく、実際の取引ではTTBが使われているためです。

特に、以下のような場面では注意が必要です。

  • 海外の取引先からドルで送金を受ける → 想定よりも受取額が少ない
  • 外貨預金を満期で引き出す → 為替差益を得られるはずが、TTBの影響で利益が目減り
  • 外貨建て保険を解約する → 解約返戻金が仲値よりも低く換算される

こうしたギャップは、TTSとTTBの差=スプレッドが原因であり、知らないままでいると「損したように感じる」ケースが少なくありません。

実際の取引で「TTBの影響」を体感する例

たとえば、以下のケースを考えてみましょう。

  • 仲値(TTM):150.00円
  • TTB:148.50円
  • 受け取る外貨:10,000ドル

この場合、TTMで換算すれば150万円の受取額になるはずですが、実際の入金額は148万5,000円。差額の15,000円がスプレッドとして差し引かれていることになります。

外貨の受け取りや引き出しの際に、実際の日本円換算額が予想とずれている場合は、TTBが原因であることがほとんどです。このように、TTBは受取額や円換算時の収益に直接影響する重要な指標なのです。

TTBは「銀行が顧客から外貨を買うときの価格」です。為替レートの表示だけでは見えない“実質的な受取金額”を左右するため、輸出業務や資産運用など、外貨を扱うあらゆる場面で注意が必要です。

為替スプレッドとは?TTS・TTBとの違いと関係性・計算方法を解説

為替レートにおいて「TTSは高く、TTBは低い」とよく言われますが、両者の間に生じる差には明確な理由があります。それが「為替スプレッド」と呼ばれる仕組みです。この章では、スプレッドの意味と目的、そしてTTS・TTBとの具体的な関係について解説します。

スプレッドとは「銀行が設定する実質的な為替手数料」

為替スプレッドとは、TTSとTTBの差額を指し、銀行や金融機関が設定する「見えない手数料」のようなものです。

たとえば、1ドル=150円の仲値(TTM)に対して、以下のようなレートが提示されることがあります。

  • TTS:151.50円
  • TTB:148.50円

この場合のスプレッドは:

151.50円 − 148.50円 = 3円

つまり、銀行は顧客に1ドル売るときには151.5円で販売し、買い取るときには148.5円で受け取るということです。この3円分が銀行の利益(またはリスク管理費用)にあたります。

なぜスプレッドが存在するのか?

スプレッドは単なる手数料ではなく、為替市場の変動リスクを銀行がカバーするための調整幅でもあります。為替レートは秒単位で変動しており、銀行が常に損をしないようにするには、ある程度の「幅」を持たせる必要があります。

また、スプレッドには以下のような要素も含まれています:

要素内容
市場の変動リスク対策レートが急変しても損失が出ないようにするための保険的な価格幅
業務コスト人件費やシステム運用費、事務処理費など
利益確保金融機関の収益源として一定のマージンを確保
サービスチャネルの違い店舗・ネットバンキング・アプリなどによりスプレッドが異なる場合もある

特に、外貨両替や海外送金などの少額・個人向け取引ではスプレッドが広く設定されることが多く、FXやインターバンク市場のような大口・専門取引では極めて狭くなるのが一般的です。

スプレッドの広さで損得が変わる

スプレッドは銀行ごとに異なり、同じ日の同じ通貨でも、金融機関によっては差が出ることがあります。特に個人が利用する場合、スプレッドの広さは実質的なコストに直結します。

以下のような比較表で確認してみましょう。

銀行名仲値(TTM)TTSTTBスプレッド(円)
銀行A(大手)150.00円151.50円148.50円3.00円
銀行B(ネット系)150.00円150.80円149.20円1.60円

上記の例では、銀行Bの方がスプレッドが狭いため、外貨両替にかかるコストが少なくなります。たとえば10,000ドルの送金を行う場合、スプレッドの違いだけで1万4,000円相当の差が出ることもあり得るのです。

スプレッドを自分で計算する方法

スプレッドの計算は非常にシンプルです。TTSからTTBを引くだけです。

たとえば。

  • TTS:152.00円
  • TTB:148.00円

この場合、スプレッドは 4円。この4円は、1ドルあたりの「実質的なコスト差」となります。

取引金額が大きくなるほど、この差は無視できません。10,000ドルの取引であれば、4円 × 10,000ドル = 40,000円のコスト差になる計算です。

為替スプレッドは、TTSとTTBの違いを生み出す根本的な要因であり、外貨取引における“見えづらいコスト”です。送金、両替、資産運用など、あらゆる場面で影響を及ぼすため、スプレッドの存在を意識することは、無駄な出費を避けるうえで非常に重要です。

TTS・TTBの違いがわかる!為替実務での活用シーンと注意点

TTSとTTBは、単なる理論上のレートではなく、日常生活やビジネスのさまざまな場面で実際に適用される、非常に実務的な指標です。この章では、個人と法人の両面から、TTS・TTBがどのように使われているのかを具体的に見ていきましょう。

個人でTTS・TTBが使われるケース

私たちが生活の中でTTS・TTBに直面する場面は、意外に多くあります。

シーン適用レート内容
海外送金(円→外貨)TTS家族や留学先への送金時、外貨に換えるためTTSが適用される
海外からの送金受取TTB外貨で送られてきた資金を円で受け取るとき、TTBが使われる
外貨預金の預け入れTTS円を外貨に換えて預ける際にTTSで換算される
外貨預金の引き出しTTB外貨を円に戻す際にTTBが適用され、受取額が決まる
海外旅行の現地通貨両替TTS円をドルやユーロなどに換える際は、TTSが使用される

たとえば、ネットバンキングで米ドル建ての外貨預金を始める場合、円で入金する際のレートはTTSです。反対に、満期になって外貨を円に戻すときはTTBが適用されます。この差額がスプレッドとなり、実質的な手数料として発生します。

また、外貨建て保険商品や海外証券への投資でも、購入時にはTTS、解約や売却時にはTTBが使われるのが一般的です。こうしたレート差が、投資収益の実質利回りに影響するケースもあるため、注意が必要です。

企業でTTS・TTBが使われるケース

法人、特に輸出入を行う企業にとって、TTSとTTBは収益やコストに直結する極めて重要な為替レートです。

シーン適用レート内容
輸入決済(円→外貨送金)TTS海外の仕入先にドル建てで支払う場合、円をドルに換えるTTSが使われる
輸出代金の受取(外貨→円)TTB外国企業からドル建てで代金を受け取るとき、円換算にはTTBが適用される
海外子会社への資金送金TTS本社から現地法人への外貨送金にはTTSが使用される
外貨建て収益の国内換算TTB売上や利益を円ベースで計上する際、TTBで評価される

たとえば、日本の輸出企業がアメリカの顧客から10万ドルの支払いを受け取る場合、そのドルを日本円に換金する際にはTTBが使われます。仮に仲値が150円、TTBが148.5円なら、受取額は1,485万円となります。仲値で計算すれば1,500万円なので、15万円が為替差損のように見える形です。

逆に、輸入企業が10万ドルの商品を仕入れる場合、TTSが適用されます。仲値が150円、TTSが151.5円なら、支払総額は1,515万円。つまり、同じ10万ドルでも、受け取るときと支払うときで30万円の差が出る構造です。

このように、TTSとTTBは「いつ、どのような立場で使うか」によって企業の損益に直接影響します。契約時点で為替レートを固定しておかない限り、相場の変動とスプレッドの差により、売上や利益が予想と異なる結果になることも少なくありません

実務でのポイント

個人と企業、どちらにも共通する実務上のポイントとして、次のような点が挙げられます。

  • TTS・TTBは事前に確認できる:各銀行のサイトで公開されており、予測可能なコスト
  • 取引の「方向」を意識する:円から外貨か、外貨から円かで使われるレートが逆になる
  • 金額が大きくなるほど差額も大きい:外貨で10万ドル以上の取引なら、1円の差で10万円の違いが生まれる

外貨を扱うあらゆる場面で、TTSとTTBの理解が求められます。知らないまま取引をすると「なんでこんなに受け取りが少ないのか」「思っていたより高くついた」という事態に直面することになります。

まとめ

TTSとTTBは、為替取引で実際に適用される銀行のレートであり、それぞれ「外貨を買う」「外貨を売る」際に使われます。TTSは円から外貨へ、TTBは外貨から円への換算に用いられ、両者の差は“スプレッド”と呼ばれる実質的なコストです。

同じ金額でも、取引の方向によって適用レートが異なり、結果として受取額や支払額に大きな差が生まれることがあります。外貨送金や預金、貿易取引を行う際には、必ずTTSとTTBを確認し、納得のうえで取引することが重要です。

不明点がある場合や高額な取引を行う際には、金融機関や専門家に一度相談してみることをおすすめします

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