タンザニア貿易・輸出の基礎知識(概況や基礎統計)

東アフリカに位置するタンザニアは、鉱物資源や農産物を中心に成長が著しい市場であり、アフリカ諸国への輸出や進出を検討する企業にとって、注目すべき国の一つです。特に、コーヒーやカシューナッツ、金などが輸出の主力で、PVoC(出荷前適合性検証)制度や関税制度など、独自の貿易ルールが存在します。

本記事では、タンザニア輸出の概要とポイントをわかりやすく解説します。

タンザニアの概況

タンザニアでは鉱業、製造業、通信、観光、金融などのサービス分野の成長が顕著であり、近年天然ガスの探査が進んでいますが、貧困率は28.2%と、依然として高い水準に止まっています。
国土は日本の約2.5倍の大きさですが、人口は約6100万人(2021年)であり、人口密度は比較的高いです。2021年時点で、GDPは678億ドル、経済成長率は4.3%となっています。タンザニアは、アフリカ大陸東部に位置する国です。

基本情報

  • 面積:約945,087平方キロメートル
  • 人口:2021年時点で約6,000万人
  • 首都:ドドマ(行政機能)およびダルエスサラーム(経済的な中心および最大の都市)
  • 公用語:スワヒリ語と英語
  • 政体:大統領共和制
  • 大統領:サムィア・スルフ・ハッサン(2021年9月時点)
  • 通貨:タンザニアシリング(TZS)

タンザニアは自然豊かな国であり、セレンゲティ国立公園やンゴロンゴロ・クレーターなどのワイルドライフ保護区があり、多様な野生動植物が生息しています。また、キリマンジャロ山はアフリカ最高峰であり、登山者にとって人気のある目的地です。

経済面では、農業(主にコーヒー、タバコ、綿花など)、鉱業(金、ダイヤモンド、タンザナイトなど)、観光業が主要な収入源となっています。

タンザニアは発展途上国であり、一部の地域では貧困が依然として問題となっていますが、経済成長や社会的な改善も進んでいます。政治面では、タンザニアは長らくジュリウス・ニエレレによる社会主義体制が存在しましたが、1990年代以降、経済自由化や政治的な変革が進行し、多党制が導入されました。

タンザニアは金など資源輸出に依存しすぎており、価格変動の影響を受けやすく経済の安定性に課題があります。
さらに港湾・物流インフラの未整備貿易赤字構造が続いており、輸出拡大の足かせとなっています。

タンザニア市場を理解するうえで重要なのは、海外展開に挑む企業が直面する市場調査・商流構築・制度対応という3つの視点です。これらは新興国共通の課題でもあり、適切な準備がなければ輸出や現地販売が停滞するリスクがあります。

初めての海外輸出に必要な基礎や流れについては以下の記事をご覧ください。

タンザニアの貿易概況

タンザニアは東アフリカ最大級の人口を抱え、資源・農産品・サービスの3分野が経済を支えています。近年は金鉱業を中心とした資源輸出が外貨獲得の柱となる一方、国内消費や輸入依存に伴う貿易赤字も課題です。

まずは、タンザニア経済を構成する主要産品と輸出構造を整理し、その特徴を把握していきましょう。

タンザニアの主要産品について

タンザニアの産業において主要なものといえば、金をはじめとする鉱物産品であり、全体の約4割を占めるほどの重要性があります。鉱物産品以外の主要品目には、以下のようなものが挙げられます。

  • カシューナッツ
  • タバコ
  • サイザル麻
  • コーヒー

2000年以前には、綿花やコーヒーといった農産品が輸出の主力品目であったものの、現在ではタバコが輸出の5%程度を占めるのみです。

タンザニアの主要産業の経済に占める割合は、以下の通りです。

  • 農林水産:GDPの26.9%
  • 鉱業・製造・建設等:GDPの30.3%
  • サービス:GDPの37.2%

以上の情報からわかるように、タンザニアの産業構造は鉱物産品が中心であり、その他の産品として農産品やサービス業が存在しています。

タンザニアの主要輸出先

2017年におけるタンザニアの主要輸出先上位3カ国は次の通りです。

  • インド(27%)
  • 南アフリカ(17%)
  • ベトナム(8%)

特にベトナムへの輸出は年々伸びており、2014年に1万ドルだった輸出額が2017年には約3万ドルまで上昇しました。その他の主要輸出先には、ケニアとスイスが続いています。

しかし、2015年まで好調だったケニアへの輸出は、両国間の貿易摩擦が原因で減少傾向にあります。具体的には、2015年時点でケニアへ約8万ドルの輸出額があったものの、2017年には約3万ドルにまで減少しました。

タンザニアの主要な輸入品目

タンザニアで重要な輸入品目は石油、機械類、運輸機材、建築資材などです。タンザニアの貿易収支は一貫して赤字で、2015年には88億5174万ドルの赤字に拡大しました。輸入額が高かった理由は、タンザニアが石油や中古車、機械類の輸入に依存していたことです。

  • 石油の輸入額は国際原油価格に左右される
  • 近年、タンザニア国内で新たなガス田や炭鉱が発見されており、今後の状況が変わる可能性がある

タンザニアの主要輸入先

2010年以降、中国とインドからの輸入高が寄与しています。2017年において、両国からの輸入総額は10億ドルを超えました。一方、2015年には、サウジアラビアからの輸入総額が約60億ドルに達し、顕著な数字を示しました。その内、97%が鉱物性燃料によるものでした。

以下に主要輸入品目を示します。

  • 中国からの輸入品:電子機器、機械、衣類など
  • インドからの輸入品:石油製品、鉄鋼製品、医薬品など
  • サウジアラビアからの輸入品:鉱物性燃料

以上のデータからわかるように、タンザニアの主要輸入先は、中国、インド、サウジアラビアとなっています。

アフリカ市場における現地の需要把握や商流の構築は、中小企業の輸出成功に直結します。
中小企業の海外展開の実態や成功のポイント については以下の記事をご覧ください。

日本との貿易

タンザニアにとって日本は、最大の貿易相手ではないものの、自動車や機械類を中心とした高付加価値品の供給源という独自の位置づけを持ちます。東アフリカ諸国へのアクセス拠点としてダルエスサラーム港が発展する中、日本製品は「信頼性」と「耐久性」を軸に現地市場へ浸透してきました。

ここでは、両国の貿易量の推移と輸出入構造を把握し、なぜ日本製品がタンザニアで存在感を保っているのか、その背景を整理します。

貿易関係の推移:ピーク後の縮小と構造変化

日本とタンザニアの貿易は2011〜2014年にかけて活況を迎えましたが、その後は輸出・輸入ともに減少傾向にあります。2017年には、タンザニアから日本への輸入は減少した一方、日本からタンザニアへの輸出は増加しました。

2017年の国連データベースによれば、日本はタンザニアにとって第11位の輸出相手国(全輸出額の約2%)に位置し、一定の存在感を保っています。

日本からの主要輸出品:中古車が中心

日本の対タンザニア輸出は輸送機器(特に自動車)が中心で、2017年には全輸出額の約46%を占めました。輸出される自動車の大半は中古車であり、新車輸出は限定的です。

  • 2017年の日本からタンザニアへの中古車輸出台数:47,563台(世界9位)
  • サブサハラアフリカでは、ケニア・南アフリカに続き3番目の規模

現地ニーズの背景:交通普及と耐久性への信頼

中古日本車が選ばれる背景には、価格競争力に加え耐久性・修理部品の入手容易性が挙げられます。道路整備が進むタンザニアでは、中小物流・小規模商店・個人輸送などの需要が伸びており、日本製車両は「現地の生活・ビジネスの足」として定着しています。

まとめ

タンザニアは、鉱業(特に金やダイヤモンド、タンザナイトなど)、農産物(コーヒー、タバコ、綿花、カシューナッツ、サイザル麻など)、観光業が貿易の中心であり、サービス産業の成長も顕著です。経済構造では、農林水産業がGDPの約27%、鉱業・製造・建設が約30%、サービスが約37%を占めます。

輸出先はインドや南アフリカ、ベトナムが主要で、日本とは自動車(主に中古車)を中心に取引があります。一方、輸入は石油、機械、建築資材が中心で、貿易赤字が続いています。実務に進む際には、専門家へのご相談をおすすめします

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