食品を越境ECで販売したい!押さえておきたい注意点と対策

 

目次

    はじめに

    食品を越境ECで販売することは、グローバル市場での成長と成功への道を開く素晴らしい機会です。また、食品業界においてグローバル市場への進出は、新たな顧客層を開拓し、売上を拡大させる絶好のチャンスです。しかしこのような貿易活動には、注意が必要です。国や地域ごとの法律や規制、文化や消費者の好みの違い、物流や配送の課題など、多くの要素を考慮しなければなりません。ノウハウがなく初めて手を付ける場合、何から始めれば良いのかわからないという方も多いでしょう。本記事では、食品企業が越境ECで販売する上での、具体的な注意点と対策をわかりやすく解説します。

    越境ECとは

    越境ECは、国境を越えて行われる電子商取引を指し、インターネットを活用した販売や購入が簡単になった現代において、世界中の消費者と企業に新たなビジネスチャンスを提供しています。越境ECの主な特徴は、グローバル市場へのアクセス、独自性の高い商品の需要拡大、そして通貨リスクの分散が挙げられます。これにより、企業は国内市場だけでなく、世界中の顧客に製品やサービスを販売することができるようになります。

    また、国内では競合が少ない、または独自性の高い商品を世界に向けて販売することで、需要を拡大させることが可能です。さらに、複数の国の通貨で売上を上げることにより、通貨リスクを分散できます。これらの特徴により、越境ECは企業にとって大きなメリットをもたらしています。

    越境ECを取り入れる際には、物流インフラの構築、多言語対応、決済手段の多様化といった要素を考慮することが重要です。商品を効率的に配送するための物流インフラを構築する必要があり、通関手続きや税制対応も適切に行うことが求められます。また、世界中の顧客にアプローチするために、ウェブサイトやカスタマーサポートの多言語対応が不可欠です。さらに、消費者の好みに合わせて、複数の決済手段を用意することが望ましいです。これらの要素を踏まえることで、越境ECはさらなるビジネスチャンスへと繋がります。

    越境 EC による食品の輸出に関する市場規模

    図表1の「平成29年度 日本からの電子商取引(EC)を用いた農林水産物・食品の輸出に関する調査」によると、日本の食品の越境EC市場規模は1,574億円でした。食品関連の商品において、最も多く販売されているのは健康食品(サプリメント・健康飲料)であり、その売上高は613億円となっています。次に菓子類が404億円、調味料が113億円、緑茶が103億円などとなっています。この調査によれば、日本の健康食品は、食品全体の売上高の約4割を占めていることが示されています。

    (図表1 越境ECを使用した日本の食品に関する市場規模)

     

    さらに、図表2では、アジア太平洋地域、中東、北米・中南米、欧州、アフリカの各地域における食品輸出の市場規模を示しています。この図表からは、アジア太平洋地域が最も大きな市場規模であり、全体の82%(1,299.8億円)を占めていることが分かります。この背景には、中国の巨大な市場規模が存在していることが挙げられます。さらに、近年では東南アジアの電子商取引市場も拡大傾向にあります。2019年には、東南アジアの電子商取引市場は1兆円を超え、2025年には市場規模が3兆円を超えると予測されています。これらの現状と将来の市場成長を考えると、食品輸出の市場のターゲットとして、アジア太平洋地域の消費者がおすすめとされています。

    図表2:地域別の市場規模(単位:億円)

    (日本からの電子商取引(EC)を用いた 農林水産物・食品の輸出に関する調査)

    越境ECで扱いやすさを決定する4要素

    ①軽量であること

    ペットボトル飲料や酒類など、重量や体積の大きい商品は海外販売には向いていません。代わりに、菓子類やサプリメント、緑茶などの軽量な商品がより扱いやすくなります。

    ②体積が小さいこと

    商品の体積も重要な要素です。小さな商品は倉庫や物流のスペースを節約し、輸送コストを抑えることができます。

    ③賞味期限が長いこと

    食品の賞味期限は重要な要素です。海外販売では商品が長い期間持続する必要があります。賞味期限の長い菓子類や乾麺、ドライフルーツなどが扱いやすいと言えます。

    ④温度や鮮度管理が容易なこと

    食品は適切な温度や鮮度管理が必要です。常温での配送が可能な商品が海外販売に適しています。冷蔵や冷凍が必要な商品は物流上の制約が増えるため、注意が必要です。

    越境ECで食品を販売するメリット

    越境ECは、国際的な取引を行うことができる電子商取引の一形態です。日本企業が越境ECで食品を販売することには、多くのメリットがあります。ここでは、日本企業が越境ECで食品を販売する際の主な利点を詳しく解説します。

    ①市場の拡大

    越境ECを利用すれば、日本国内のみならず、世界中の消費者に商品を提供することができます。その結果、市場規模が大きく拡大し、売上や利益の増加が期待できます。

    ②海外へのブランド認知

    世界中で高く評価されている日本食品の品質や美味しさを、越境ECを通じてアピールすることができます。これによって、海外市場における日本企業のブランドや商品の認知度が向上するでしょう。

    ③為替差益の獲得

    国際取引においては、為替レートの変動が大きな影響を及ぼすことがあります。適切な為替リスク管理を実践することで、為替差益を上手く獲得することができます。

    ④業種の多様化

    越境ECの導入により、日本企業は多種多様な食品カテゴリーや業種への進出が可能になります。その結果、以下のようなメリットが得られます。

    ・リスクの分散

    ・新たなビジネスチャンスの創出

    ⑤海外の消費者ニーズの把握

    越境ECを通じて、海外市場での消費者のニーズや嗜好を正確に把握することが可能です。その情報を商品開発やマーケティング戦略に活用することで、競争力を高めるとともに、顧客満足度向上につながります。

    ⑥低リスクでの海外進出

    越境ECを活用すれば、実際に物理的な店舗を構えることなく、インターネットを通じて海外市場へのアプローチが可能になります。そのため、海外進出に伴う初期リスクや費用を大幅に削減できます。

    越境ECで食品を販売する際の注意点

    食品を越境ECで販売する場合、ビジネスの視点からの課題、各国の法規制、配送、輸入規制品の確認、決済など、注意点が多く存在します。

    ①ビジネス戦略

    越境ECにおけるビジネス戦略として、まず海外の顧客層やニーズを明確化し、同様の商品が競合他社から販売されている場合、差別化戦略が重要です。食品の場合、低価格なので単品販売ではなく、大容量パックやセット商品、定期購入、ノベルティの付加などの販売方法を検討する必要があります。さらに、海外のEC事情やマーケットの基本情報を把握し、プロモーション施策や商品の売れる要素を見極めることも重要です。

    ②法律や制度

    食品は人体に関わるため、各国には健康被害を防ぐための法律や制度が存在し、一部の食品には販売ライセンスが必要な場合もあります。対象国の食品法規制を確認し、販売する商品に適合させる必要があります。また、食品のラベルには栄養成分や原材料、原産国の表示などが必要となる場合もあります。さらに、海外では個人情報保護のための法律が存在し、自社のECサイトでプライバシーポリシーや利用規約を遵守する必要があります。

    ③配送

    物流面では、食品の品質維持や破損対策に注意が必要です。食品の賞味期限に合わせて受注から納品までの時間を短縮し、配送日数とコストの最適化を図ることが重要です。現在は新型コロナ禍により一部の国や地域でEMSが利用できない場合があるため、代替のクーリエサービスの料金体系も確認する必要があります。また、返品率が高い国や地域もあるため、キャンセルポリシーや返送業務の対応を事前に協議し、マニュアル化することが良いでしょう。

    ④輸入規制品

    税関では厳しい輸入禁止品の取り締まりが行われているため、越境EC事業者は販売可能な商品かどうかを事前に確認する必要があります。アメリカではアルコール飲料や食肉、乳製品、タバコなどの販売にはFDAの許可が必要です。中国では小麦、トウモロコシ、コメ、砂糖などが輸入制限品となっています。各国や地域ごとに輸入規制品目が異なるため、確実に確認する必要があります。

    ⑤決済

    販売対象国や地域に合わせた決済方法を提供する必要があります。日本では代金引換やクレジットカード、コンビニ決済などが一般的ですが、アメリカではクレジットカード決済に加えてPayPalなどの電子決済やデビットカード決済も需要があります。中国ではAlipayやWeChat決済、銀聯カード決済が必要です。東南アジアなどの一部の国ではクレジットカードを持っていないユーザーも多く、スマホによるキャッシュレス決済にも対応する必要があります。

    以上が越境EC運用における注意点の要点です。

    最後に

    越境ECで食品を販売するためには、市場調査、法律遵守、パートナーシップ構築、ウェブサイトの最適化、デジタルマーケティング戦略、物流の最適化など、様々な注意点と対策を講じる必要があります。これらの要素を適切に組み合わせることで、グローバル市場での成功を実現することができます。成功事例を参考にしながら、これらのポイントを押さえて越境ECでの食品販売を実現しましょう。

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    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。