越境ECで成功する日本企業は?日本企業ならではの戦略

 

目次

    「越境ECの成功事例を参考にしたい」「越境ECの成功の要因や留意点を知りたい」という声が多く見られます。

    越境ECを展開する際には、販売国の言語や文化の理解や支払い方法や配送方法の選定などさまざまな課題に直面することがあります。これらの課題を解決するためには、これまでの越境ECの立ち上げにおける成功事例から学ぶことが非常に重要です。

    本記事では、日本企業が実際に経験した様々な分野における越境ECの成功事例や成功の背景、日本企業が持つ魅力をまとめています。

    越境ECとは何か

    越境電子商取引(EC)とは、インターネット上で国境を越えた商取引を指します。近年、日本の企業は電子商取引サイトやモールを通じて、アメリカや東南アジアなどの海外の消費者に製品を販売しています。

    以前は、訪日観光客が日本製品を購入し、帰国した後にECサイトでリピート購入するというのが一般的でしたが、最近では、新型コロナウイルスによるインバウンド観光客の減少の影響で、越境ECが急速に成長しています。

    越境EC市場の規模

    経済産業省の2018年の調査によると、2018年の世界の越境EC市場規模は6760億ドルであり、2020年には9940億ドル迄に拡大しました。

    同様のデータによれば、日本のBtoC EC市場の規模は約19.4兆円です。世界の越境EC市場は国内市場よりもはるかに大きく、今後もさらなる拡大が予想されています。

    越境ECが注目される理由

    最近の越境EC市場の急速な成長は、コロナショックによる外出自粛の増加が一因とされています。世界的な外出制限やインバウンド市場の大幅な減少により、需要がECサイトへとシフトしています。

    また、スマートフォンの普及が世界中で進んでおり、これも越境EC市場の拡大を促しています。スマートフォンさえあれば、いつでも世界中の商品を簡単に検索・購入できるため、越境ECは広範なユーザーにアピールできるからです。

    越境ECのメリットとは

    越境EC(Electronics Commerce)は、国境を越えて商品やサービスの取引を行う形態のECです。越境ECには、以下の3つのメリットがあります。

    海外市場への販路拡大

    越境ECの最大のメリットは、国境を超えて、世界中の広範な市場で商品を販売することが可能になることです。アメリカ、東南アジア、中国等、EC市場が急成長している国々のユーザーにアプローチすることができ、国内市場だけでなく、海外市場での売上機会も大幅に拡大できます。

    日本製品の信頼性と安心感

    海外のユーザーにとって、日本製品の「品質」や「安全性」は非常に高い評価を受けています。特に、多くの偽造品が市場に出回る現代社会において、日本企業が自社製品を直接販売することは大きな利点となり、海外顧客の信頼と安心感を獲得できます。

    低コストでの出店が可能

    かつて、海外市場に進出する際には、現地に実店舗を設置するために大きな費用が必要であった他、従業員の雇用や在庫管理など、さまざまなリスクに直面することも考慮しなければなりませんでした。

    しかし、越境ECを利用することによって、実店舗を持たずに低コストで海外市場に出店できます。日本国内に拠点を持ちつつも、インターネットを活用して世界中の顧客に商品を販売することが可能となります。

    越境ECは、国内市場のみにとどまらず、世界中の顧客に商品を販売することができる、画期的な販売手法です。これにより、企業は売上拡大のチャンスを掴むことができ、今後ますます越境ECの活用が一層進展することが期待されています。

    越境ECにおけるデメリット

    越境ECビジネスは多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。主なデメリットは以下の2点です。

    運送費と製品価格の上昇

    越境ECでは、商品を海外に発送することから国内ECに比べて送料が数倍高くなることが一般的です。これを補うために商品価格に上乗せする等の対策が必要ですが、それでも総費用は増加します。高いコストが顧客の購買意欲を抑える恐れがあるため、越境ECを展開する際にはコスト管理に十分注意を払うことが重要となります。

    販売先国の言語、法規制、文化への対応が求められる

    越境ECを成功させるためには、販売先国の言語、法規制、文化を理解し、それらに適応したサイト運営が欠かせません。例えば、A国からB国への輸出が制限されるケースが存在したり、各国で普及している配送業者や決済方法が異なることがあります。これらの違いに柔軟に対応し、利用者数に応じた最適な手段を選択・導入することが大切です。

    越境ECを展開する企業は、これらのデメリットを克服しながらビジネスを拡大することが求められます。そのためには、事前の調査や現地のビジネスパートナーとの連携、販売チャネルやマーケティング戦略の選定、及び効果的な資料活用が大切です。越境ECが若干のリスクを伴うとはいえ、海外市場へのアプローチが電子商取引の成長と拡大につながることを念頭に置くことが重要です。

    越境ECにおける日系企業の成功事例

    SAMURAI STORE

    「SAMURAI STORE」というECサイトは、元eBay社員の桐田俊彦氏が創設し、日本の甲冑レプリカを販売することを専門としています。

    この事業は、世界的に人気を集める商品を中心に展開することで、販路の拡大とリピーター獲得に成功した典型的な事例とされています。

    また、同サイトはインターネットの普及期である2002年に既に設立されており、越境ビジネスの黎明期に甲冑という、まだ海外市場への取引が進んでいなかった商品をタイムリーに展開することができた点も大変重要です。

    この成功事例から、以下の要素が越境ECにおいて特筆すべきポイントとなります。

    ・独自性の高い商品やサービスの提供で、競合との差別化を図る

    ・ターゲットとなる海外市場を適切に分析し、需要のある商品を販売する

    ・インターネットやECサービスの普及を機に、タイムリーな市場参入を果たす

    これらの戦略によって、SAMURAI STOREは国際的なECサイトとして多くの成果を上げており、今後もその成長が期待されています。

    多慶屋

    東京都御徒町に位置する「多慶屋」は、年間約43万人の観光客が訪れる人気ディスカウントショップで、実店舗を持っています。

    越境EC事業の一環として、「buyee」という購入代行サービスを利用し、実店舗に訪れたユーザーが帰国後もリピート購入ができるように、自社ECサイトを展開しています。

    実店舗での訪問客には、ECサイトへのアクセスを容易にするために、QRコードやURLが記載されたチラシを配布し、継続的な購入を促進する取り組みが行われています。このような工夫によって、ECサイトを効果的に活用して事業を拡大していると言えます。

    さらに、多慶屋は中国の大手ECモール「アリババ」が運営する決済システム「アリペイ」を実店舗に導入することで、中国人観光客が商品を購入しやすい環境を整えています。このような取り組みも、同社の魅力の一つと言えるでしょう。

    ・越境EC事業によって、実店舗に訪れたユーザーが帰国後もリピート購入ができるようにする

    ・ECサイトへのアクセスを容易にするためのチラシ配布などの施策を実施

    ・海外の観光客向けに、外国の決済システムを導入し簡単に購入できる環境を提供

    このような事例からもわかる通り、「多慶屋」は、実店舗とECサイトの両方で効果的なビジネス展開を行っており、国内外の皆様に喜ばれるサービスを提供しています。今後もこのような取り組みが増えていくことで、越境EC事業が更に発展していくことが期待されます。

    A-JANAIKA JAPAN

    「A-JANAIKA JAPAN」は、海外市場を対象とした日本の伝統工芸品を提供するECサービスです。2016年に創設されて以来、現在は取引規模が拡大し、約2000アイテムを扱う人気のある越境ECサイトに成長を遂げました。

    このサイトの強みは、海外顧客に対して日本の伝統工芸品の「粋」や「わびさび」を丁寧に解説し、リピーターの獲得に効果的なプロモーション活動を展開している点です。

    具体的な取り組みとして、以下のような方法を用いて情報発信を行っています。

    ・YoutubeやSNSを活用し、職人の技術や工芸品の歴史・背景を紹介し、商品への理解や愛着を深めるための情報提供を継続的に行っています。

    ・現地のイベントや活動で、甲冑を着用してチラシを配布することで、ターゲット顧客に強烈なインパクトを与える独自の広告戦略を実施しています。

    このような独自のマーケティング戦略により、「A-JANAIKA JAPAN」は多くの海外ユーザーから支持され、日本の伝統工芸品の国際的な普及に貢献しています。

    まとめ

    これまでの経験から分かるように、海外市場では「品質」と「安全性」が非常に高い評価を受けている日本製品が注目を集めています。このため、多くの日本企業がECサービスを活用し、国際取引を行っています。言語対応や決済方法の選択、配送対応などの課題は存在しますが、これらをクリアすれば、海外に物理的な店舗を設けるよりも低コストでのビジネス展開が可能です。

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    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。