【徹底解説】デマレージ費用とは?港での滞留コストを防ぐ実務対策

海外から商品を輸入した際、思いがけず発生する「デマレージ費用」に戸惑った経験はありませんか?
輸出入に関わる実務では、通関や物流のタイミングがずれるだけで、数万円単位のコストが発生するケースもあります。

この記事では、貿易初心者や実務担当者の方が安心して対応できるよう、「デマレージ費用とは何か」を基本からわかりやすく解説します。加えて、回避策や社内での説明に役立つ情報も整理しましたので、ぜひ参考にしてください。

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デマレージ費用とは何か?貿易実務における基本の理解

デマレージ費用は、輸入貨物の物流管理において重要なポイントです。まずは、その仕組みを正しく理解しましょう。

デマレージ費用の定義と目的

「デマレージ費用(Demurrage Fee)」とは、コンテナ貨物が港の指定保管場所(コンテナヤード:CY)に一定期間以上留まった場合に、船会社から請求される追加費用のことです。

港のスペースには限りがあるため、船会社は貨物が長期間置かれないよう、無料で保管できる期間(フリータイム)を設けています。この期間を過ぎると、保管料としてデマレージ費用が発生します。

デマレージ費用が発生するタイミング

デマレージ費用は、コンテナが船から降ろされたあと、ターミナル内に留まっている間に発生します。通関がスムーズに進まず、フリータイムを過ぎた場合に請求されるのが一般的です。

例えば、週末を挟んで通関が遅れたり、トラックの手配が間に合わなかったりすると、1日単位で費用が加算されていきます。

よくある誤解と混同しやすい費用項目

デマレージ費用は、「保管料」と理解されがちですが、実際には「コンテナの使用料」に近い性質があります。また、似た言葉に「ディテンション費用」や「ストレージ費用」があり、混同されることも少なくありません。

以下の表は、それぞれの費用の違いをまとめたものです。

費用名発生場所発生条件
デマレージ費用港のコンテナヤード港内にコンテナが長期間滞留
ディテンション費用荷主の施設などコンテナを持ち出した後の返却遅れ
ストレージ費用倉庫貨物が倉庫などで長期間保管された場合の費用

それぞれ発生場所とタイミングが異なるため、請求内容を確認する際は正確な区別が必要です。

デマレージ費用が発生する原因と計算方法

請求書に「Demurrage Fee」と記載があった際、その根拠を把握しておくことは非常に重要です。ここでは、デマレージ費用が実際にどのように発生するのかを詳しく見ていきます。

発生要因と実務でのトラブル例

デマレージ費用が発生する主な原因は、次のような実務上の遅延です。

  • 通関書類の不備による許可の遅れ
  • 輸入許可待ちで週末や祝日を挟んでしまった
  • トラック手配が間に合わず、引き取りが遅延
  • 税関による検査対象となり、出庫が保留された

これらの要因は、事前の確認や調整によってある程度防ぐことができますが、初めての輸入やイレギュラー対応では見落とされがちです。

フリータイムの考え方と確認方法

フリータイム(Free Time)は、船会社が無料でコンテナを港に保管してくれる期間です。一般的には3~5営業日が多く、契約条件や船会社、仕向け地によって異なります。

確認方法としては、以下の書類をチェックします。

  • アライバルノーティス(Arrival Notice)
  • B/L(船荷証券)の条件記載欄
  • フォワーダーとの取引契約書

とくにコンテナが複数ある場合や繁忙期は、実際の搬出スケジュールと照らし合わせて慎重に確認しておくことが求められます。

デマレージ費用の一般的な計算方式

デマレージ費用は、超過日数とコンテナのサイズによって段階的に課金されるのが一般的です。以下は一例です。

超過日数20ftコンテナ40ftコンテナ
1〜3日目5,000円/日7,000円/日
4〜6日目8,000円/日10,000円/日
7日目以降12,000円/日15,000円/日

実際の金額は港や契約内容によって変動するため、正確な費用を把握するには、船会社またはフォワーダーに直接確認することが大切です。

デマレージ費用は、港湾でのコンテナ滞留によって発生する追加コストであり、通関遅延や輸送計画のズレが主な原因です。正しい理解と事前準備ができていれば、無駄な支出を防ぎ、安定した物流運営が実現できます。

デマレージ費用とディテンション費用の違い

実務担当者が混同しやすいのが、デマレージ費用とディテンション費用の違いです。請求書に同時に記載されることも多く、正しく理解しておかないと社内外への説明に苦慮する場面もあります。

ディテンション費用の定義と発生条件

ディテンション費用(Detention Fee)は、輸入者がコンテナを港から搬出した後、空コンテナを指定のデポ(返却場所)に期限内に返却できなかった場合に発生する延滞費用です。

たとえば、荷下ろしが長引いたり、自社倉庫の作業が滞ったり、返却先のデポが遠方で返却スケジュールがずれた場合に発生します。フリータイム終了後、1日単位で加算され、コンテナ数が多いと数十万円規模になることもあります。

デマレージ費用とディテンション費用の見分け方

両者の費用の違いは、発生場所とタイミングにあります。

費用項目発生場所発生条件
デマレージ費用港(ターミナル内)通関・引き取りが遅れ、コンテナが港内に滞留
ディテンション費用港の外(倉庫・工場等)搬出後の返却期限を過ぎた場合

見分けるポイントは「コンテナの所在場所」です。港に残っていればデマレージ費用、引き取り後で返却が遅れていればディテンション費用となります。

実務上の対応の違い

デマレージ費用への対応は「港湾内の作業スケジュールの最適化」、つまり通関の迅速化やトラック手配の前倒しがカギです。一方、ディテンション費用は「荷下ろしスケジュール」「返却手配の管理」が求められます。返却先デポの営業時間やトラックの空き状況まで踏まえた調整が不可欠です。

どちらの費用も、「フリータイムの認識不足」「計画の甘さ」が原因になりやすいため、取引条件や物流フローの見直しを含めた全体最適が重要です。

デマレージ費用の回避には、契約段階での適切な条件設定が鍵となります。貿易条件を基礎から整理したい方は、以下の記事をご覧ください。

 

デマレージ費用を回避する方法と予防策

デマレージ費用は、ちょっとした手続きの遅れや調整不足によって発生することが多く、予期せぬコストとして実務担当者を悩ませます。まずは、どのような要因で費用が発生しやすいのかを改めて整理しておきましょう。

デマレージ費用が発生しやすい主な要因

発生要因内容の概要
通関書類の不備インボイスや原産地証明などに記載漏れや誤記があると、税関での処理が遅れる
検疫・検査の対象検査や検疫の対象となり、通関が保留されるケース
週末・祝日を挟んだ遅延通関や搬出手配が間に合わず、営業日でない期間に滞留
トラック・ドレージ手配の遅れ搬出用の輸送手段が手配できず、フリータイム内に引き取れない
社内連携不足書類の手配やスケジュール共有が社内で徹底されていない

上記のような要因をあらかじめ想定し、スケジュールや契約条件の確認を徹底することで、不要な費用発生を防ぐことが可能です。

ここからは、具体的な回避策について紹介します。

フリータイムの確認と延長交渉

出荷前に船会社やフォワーダーとフリータイムの日数を確認し、想定される物流スケジュールに対して十分かどうかを見極めることが重要です。

その場合、B/L発行前の段階で、船会社に延長の交渉を行うことで、後々の追加費用を回避できます。検疫対象品や検査頻度の高い商品を取り扱う場合は、余裕を持ったフリータイムを確保するようにしましょう。

また、フォワーダー経由でブッキングしている場合は、フリータイムの条件が事前に提示されないケースもあります。納期や引き取り日程に不安があるときは、遠慮なく確認を求める姿勢が実務上のリスク管理につながります。

通関スケジュールの事前調整

通関の遅れは、デマレージ費用発生の大きな要因です。とくに初めて扱う商品や法令規制が関係する貨物では、通関業者との情報共有が鍵になります。

事前に以下のような項目を確認しておくと有効です。

確認項目内容の例
必要書類の種類インボイス、パッキングリスト、原産地証明など
商品分類の妥当性HSコードの適用内容、関税率の確認
税関検査の可能性検疫対象か否か、過去に同様の貨物で検査があったか
輸入申告予定日船の到着予定日とのタイムライン確認

貨物が到着する前日までに申告準備が整っていれば、フリータイム内でのスムーズな搬出が可能になります。

インコタームズと費用負担の見直し

貿易契約におけるインコタームズ(国際貿易条件)は、デマレージ費用が発生した際に「誰が負担すべきか」を判断する基準となります。

契約締結時に以下の内容を明記しておくと、請求トラブルを防げます。

確認項目内容の例
フリータイムの基準日数、開始日、延長可否
費用の負担者契約書やB/Lに明記
遅延リスクの分担検査・通関・ストライキ等への責任範囲を取り決める

実務担当者は、これらの条件が契約書やB/Lにどう反映されているかを事前に確認し、社内の関係部署(営業・経理・物流)とも共有しておくことが望まれます。

インコタームズの知識は、デマレージ費用の責任範囲を把握する上で不可欠です。インコタームズの各条件については、以下の記事をご覧ください。

 

まとめ

デマレージ費用とは、港に到着したコンテナが一定期間を超えて滞留した際に発生する保管料で、貿易実務においては避けて通れない重要なコスト項目です。

発生原因を正しく理解し、フリータイムや通関のスケジュールを事前に把握・調整することで、費用の発生を未然に防ぐことが可能です。また、ディテンション費用との違いを明確にすることで、社内での説明や責任分担にも役立ちます。

突然の請求に戸惑う前に、関係者と十分な情報共有を行い、再発防止策を講じておくことが実務では重要です。

状況に応じた最適な対応が難しい場合は、専門家に一度相談してみることをおすすめします。

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