AMS(Automated Manifest System)は、米国向けの貿易で、米国税関・国境警備局(CBP)に貨物の積荷情報(マニフェスト)を事前に電子送信する仕組みです。海上輸送では、外国の港で船に積む24時間前までに送信することが義務づけられており、「24時間ルール」と呼ばれます。
米国向けの輸出では、AMSとあわせて、輸入者が出す「ISF(10+2)」も必要です。どちらも日本側の輸出者が直接送信するものではありませんが、輸出者から出す情報が遅れたり誤っていたりすると、罰金が科される・船積みが遅れるといったトラブルにつながります。
この記事で分かることは、次のとおりです。
- AMSと24時間ルールの基本
- AMSとISF(10+2)の違い(早見表)
- 海上・航空それぞれ、誰がいつまでに申告するか
- 見積もりに出てくる「AMSチャージ」とは何か
米国向けの輸出を担当している方は、手続きの全体像をつかむために、ぜひ最後までご覧ください。
AMSとは:米国向け貿易で必要な積荷情報の事前申告

AMS(Automated Manifest System)とは、米国向け貨物の積荷目録(マニフェスト)を、米国税関・国境警備局(CBP)へ事前に電子送信する仕組みです。船会社やNVOCC(フォワーダー)が、貨物情報を電子的に送信します。具体的には、海上輸送や航空輸送において、コンテナや船荷証券の情報が電子マニフェストに記載され、税関へ提出されます。
米国税関は、AMSを通じて取得した貨物情報をもとに、米国向け貨物のリスク分析を行い、セキュリティ対策に役立てています。
このように、AMSは、米国向けの貿易において重要な役割を担っています。
AMSの主要な目的:セキュリティ対策と効率化
AMSの主要な目的は、セキュリティ対策と効率化です。セキュリティ対策の点では、AMSが提供する貨物情報をもとに、税関はリスク分析を行い、潜在的な脅威を事前に特定できます。これにより、危険な貨物の監視や摘発が可能となり、国内の安全が確保されます。
また、到着前にリスク審査が済むため、問題のない貨物は到着後の手続きが滞りにくくなります。このように、AMSはセキュリティ対策を主な目的とした、国際貿易において重要な仕組みです。
AMSの仕組み:電子マニフェストの提出と確認
AMSの仕組みは、電子マニフェストの提出と確認です。船会社やNVOCCは、輸送する貨物の詳細情報を電子マニフェストに記載し、税関に提出します。具体的には、貨物の品名、数量、重量、輸送経路などの情報が記載されます。提出された電子マニフェストは、税関が確認し、リスク分析を実施します。
分析結果に問題がなければ、貨物はそのまま輸送されます。もしリスクが懸念される場合は、詳細な検査が行われることがあります。このような仕組みにより、AMSは米国向け貨物のセキュリティ対策を支えています。
米国でのAMSの利用:輸入貨物の事前申告が義務づけられている
米国では、輸入貨物の事前申告が義務化されており、Automated Manifest System(AMS)がそのためのシステムとして利用されています。このシステムは、税関への貨物情報の電子申告をサポートし、海上コンテナや航空貨物の輸送に関する情報がリアルタイムで共有されるようになっています。
この制度により、米国税関は、安全保障対策の一環として、リスクのある貨物を事前に特定し、対策を講じることができます。
具体的には、船会社や航空会社、NVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrier)など、関連する業者は、海上は外国の港で船に積む24時間前まで、航空は米国到着の4時間前まで(近隣地域からの便は離陸時まで)に、マニフェストを税関に提出することが求められます。
また、この事前マニフェスト提出には、コンテナ積み荷主情報及び輸送経路等の詳細情報が記載されます。したがって、AMSの利用は、輸入業者や輸送業者にとって、国際貿易の円滑化とセキュリティ対策に貢献しています。
米国向けの輸出では、関税の動きにも注意が必要です。最新の状況は2026年アメリカ関税が日本の貿易に与える影響の記事で詳しく解説しています。

AMSとISF(10+2)の違い【早見表】
AMSとISFの比較
米国向けの海上貨物では、AMSとISFの2つの事前申告が必要です。名前が似ていますが、出す人も中身も違います。
| 項目 | AMS(24時間ルール) | ISF(10+2ルール) |
|---|---|---|
| 何を出すか | 積荷目録(マニフェスト)情報 | 輸入者の貨物情報10項目+船会社の2項目 |
| 誰が出すか | 船会社、またはNVOCC(フォワーダー) | 輸入者(米国の通関業者が代行するのが一般的)。残り2項目は船会社 |
| いつまでに | 外国の港で船に積む24時間前まで | 輸入者の10項目は原則として船積み24時間前まで(一部は米国到着24時間前までに修正・提出可) |
| 主な内容 | 荷送人・荷受人、品名、数量、重量、コンテナ番号など | 売り手・買い手、製造者、原産国、HTSコード、コンテナの詰め込み場所など |
| 対象 | 海上・航空(航空は期限が別) | 海上のみ |
| 守らないと | 罰金(違反1件ごと)、船積みの遅れ | 罰金(違反1件ごと)、未送信だと輸入が認められない |
ISF(10+2)の中身と輸出者の役割
ISFは「10+2」とも呼ばれ、輸入者が出す10項目と、船会社が出す2項目(船の積み付け計画とコンテナの状況を知らせるメッセージ)からなります。2009年に始まった制度です。
輸出者に直接の提出義務はありませんが、10項目のうち売り手、製造者、原産国、HTSコード、詰め込み場所、混載業者の6項目は、輸出者から輸入者へ伝える必要があります。米国の取引先から問い合わせがあったら、早めに返せるよう準備しておきましょう。
誰がいつまでに申告するか(海上・航空)
海上輸送の場合
AMSは、船会社が送信します。フォワーダー(NVOCC)がハウスB/Lを発行している貨物は、NVOCCが自社で直接送信するか、船会社に情報を渡して送信してもらいます。期限は、外国の港で船に積む24時間前までです。
ただし実務では、船会社やフォワーダーが船積みより前に独自の締め切り(AMSカット)を設けています。輸出者は、この締め切りに間に合うよう、インボイスやパッキングリストの情報を早めに渡す必要があります。
インボイスの作り方は、インボイス作成の全てがわかる!貿易業務の効率アップ術もあわせてご覧ください。

なお、穀物などのバルク貨物(コンテナに入れず船倉に積む貨物)は、米国到着の24時間前までと期限が異なります。
航空輸送の場合
航空貨物では、航空会社が積荷情報を送信します。フォワーダーや通関業者などが代わりに送信することもあります。期限は、日本など遠方からの便では米国到着の4時間前まで、メキシコ・中米・カリブ海など近隣からの便では米国へ向けて離陸するまでです。
加えて、貨物を飛行機に積む前までに、一部の情報を先に送る仕組み(ACAS)もあります。
輸出者が気をつけること
AMSの送信は船会社やフォワーダーが行いますが、輸出者が渡す情報に誤りがあると、送信の遅れや罰金の原因になります。特に、次の点に注意しましょう。
- 品名は具体的に書く。「General Cargo」「FAK(Freight of All Kinds)」「STC(Said to Contain)」のようなあいまいな表記は認められない
- 荷送人・荷受人の名称と住所を、インボイス・B/Lと同じ表記にそろえる
- 船積み後に内容を直すと、手間と追加の費用がかかることがある
これらの情報は、インボイスやB/Lの記載内容とそろっている必要があります。
B/Lの宛先や記載事項は、船荷証券(B/L)とは?種類・流れ・電子化まで徹底解説!の記事で詳しく解説しています。

AMSチャージとは
AMSチャージは、船会社やフォワーダーがAMSの送信にかかる手数料として請求する費用です。米国向けの見積もりや請求書に「AMS Fee」「AMS Charge」などの名前で入っています。
AMSチャージの請求のしくみ
AMSチャージについて、押さえておきたい点は次のとおりです。
- 海上運賃とは別に、B/Lごとに請求されることがあります
- 金額や請求の単位は船会社・フォワーダーによって異なります
- 船積み後に内容を直すと、修正の手数料が別にかかることがあります
- ISFの手数料は、輸入者側(米国の通関業者)が請求するものなので、AMSチャージとは別です
請求の有無や金額は、見積書や請求書の内訳で確認できます。
AMSチャージは誰が負担するか
誰が負担するかは、貿易条件(インコタームズ)と見積もりの内訳によって変わります。見積もりの段階で「AMSチャージが含まれているか」「誰の負担か」を確認しておくと安心です。
貿易条件ごとの費用負担の違いは、インコタームズ全11条件のまとめの記事で詳しく解説しています。

貿易の関係者別に見るAMSの役割と責任

AMSでは、各業者が連携して貨物の輸送と申告を円滑に進めています。船会社や航空会社は、貨物の運送とマニフェストの提出を担当し、AMSへの正確な情報入力を行います。
NVOCCは、船会社と荷主の間で輸送サービスを提供し、AMSへの必要情報を登録します。荷主は、貨物の詳細情報を正確に提供し、輸出入に必要な書類を整備します。
通関業者は、荷主からの情報を基に税関への申告や関税手続きを行います。これらの業者が連携することで、AMSへの申告が円滑に進み、国際貿易の安全性が向上します。
船会社や航空会社の役割:マニフェストの提出と管理
船会社や航空会社は、AMSにおいて重要な役割を担っています。
まず、貨物の運送を行い、必要な情報をAMSに登録することが求められます。この情報には、貨物の種類、量、荷主の情報、輸送経路などが含まれています。次に、マニフェストの提出と管理を行います。船会社や航空会社は、米国税関へのマニフェスト提出が義務づけられており、海上は船積みの24時間前まで、航空は米国到着の4時間前までに、正確な情報が記載されたマニフェストを提出する必要があります。
また、運送中や税関検査時に変更が発生した場合、速やかにマニフェストの修正を行い、情報を更新することが求められます。このような役割を果たすことで、船会社や航空会社は、国際貿易の効率化とセキュリティ対策に貢献しています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 貨物情報の登録 | AMSシステムに貨物の種類、量、荷主情報、輸送経路などを正確に登録。 |
| マニフェストの提出と管理 | 米国税関への正確なマニフェストを、決められた期限(海上は船積み24時間前、航空は到着4時間前)までに提出し、その管理を行う。 |
| マニフェストの修正と更新 | 運送中や税関検査時に発生した変更を速やかに反映し、AMSに情報を更新。 |
| セキュリティへの貢献 | 正確な情報提供と登録を通じて、米国向け貨物のセキュリティ向上に貢献。 |
貿易業者や物流業者の責任:情報の正確性と報告の完全性
貿易業者や物流業者は、輸出入の際に取引や輸送に関わる情報を正確に報告し、その完全性を確保する役割を担っています。これには、輸出入に関わる書類の作成や提出、通関手続きのサポート、国内外の税関および関連機関との連携が含まれます。
具体的には、以下のような活動が行われます。
| 業務内容 | 詳細 |
|---|---|
| 通関手続きのサポート | 必要な書類の準備、提出、税関手続きの円滑化を図る業務。 |
| 貨物の追跡情報の管理 | 貨物の位置や状態を把握し、リアルタイムでの情報更新を行うことで、物流の可視化を支援。 |
| 荷主や関係者への情報提供 | 貨物の状況や手続きの進捗について、関係者に正確かつ迅速に情報を提供する業務。 |
これらの業務を遂行する上で、情報の正確性と報告の完全性は非常に重要です。不正確な情報や不完全な報告があると、貿易や物流の遅れやトラブルが発生する可能性があり、最終的には企業の利益や信頼性にも影響を与える可能性があります。
このため、貿易業者や物流業者は、常に情報の正確性と報告の完全性を確保する努力が求められています。
輸出全体の流れは、初めての海外輸出、どうすれば?企業が行う基本や流れまとめもあわせてご覧ください。

AMS対応の物流と輸送手段

Automated Manifest System(AMS)は、アメリカ税関・国境警備局が開発した電子データ交換システムです。AMSで申告する輸送手段は、海上コンテナ輸送と航空貨物輸送です。なお、トラック輸送は別の仕組み(ACE e-Manifest)で申告します。
これらの輸送手段では、AMSで事前に貨物情報を送ることで、米国到着前にリスク審査が行われます。輸出者は、船会社やフォワーダーが期限内に送信できるよう、正確な情報を早めに渡すことが重要です。
海上コンテナ輸送におけるAMSの適用
海上コンテナ輸送においても、AMSの適用が求められています。具体的には、船積みの24時間前までに、貨物の詳細情報をAMSによって米国税関に報告することが義務付けられており、この報告が遅れたり誤っていたりすると、罰金が科されるほか、船積みが遅れることがあります。
AMSの適用により、海上コンテナ輸送では、米国到着前にリスク審査が行われます。
このように、AMSは海上コンテナ輸送の安全確保に役立っています。船会社やフォワーダーは、期限内に正確な情報を送信することが求められます。
航空貨物輸送におけるAMSの適用
航空貨物でも、AMSによる事前申告が必要です。日本など遠方から米国へ向かう便では、米国到着の4時間前までに積荷情報を送信します。
また、貨物を飛行機に積む前までに一部の情報を先に送るACASの仕組みもあります。送信は航空会社やフォワーダーが行うため、輸出者は早めに正確な情報を渡しておくことが大切です。
AMSが貿易にもたらすメリットとデメリット

AMSには、到着前のリスク審査やセキュリティの強化などのメリットがありますが、一方で情報準備の手間や費用などのデメリットもあります。
メリット:到着前の審査とセキュリティ強化
AMSのメリットは、米国到着前にリスク審査が済むことです。貨物情報が事前に電子的に税関へ送られるため、問題のない貨物は到着後の手続きが滞りにくくなります。
また、セキュリティ面でもAMSは役立っています。税関が事前に貨物情報を入手できることで、リスクのある貨物の検出が容易となり、国内の安全保護が向上します。
デメリット:情報準備の手間と費用
一方で、AMSにはデメリットもあります。まず、情報準備の手間が増えます。船会社やフォワーダーへ正確な貨物情報を期限までに渡す必要があるため、その分の人員や時間がかかります。また、社内での貨物情報の管理も求められます。
次に、費用がかかる点もデメリットです。輸出者はシステムを持つ必要はありませんが、船会社やフォワーダーからAMSチャージなどの費用が請求されます。見積もりの段階で、費用の有無や負担者を確認しておくことが重要です。
AMSの今後と日本の事前報告制度

AMSは、米国が貨物の安全を確保するために導入した制度です。同様の事前報告制度は、ほかの国でも導入されています。
AMSは、米国へ輸出する日本企業にとって、避けて通れない手続きです。
日本の出港前報告制度(AFR)
日本でも2014年3月から、日本向けの海上コンテナ貨物を対象に、同様の出港前報告制度(AFR)が始まっています。
輸出者は、船会社やフォワーダーと連携し、期限内に正確な情報を出せる体制を整えることが大切です。
国際貿易のセキュリティ対策の一環としてのAMS
AMSは、国際貿易のセキュリティ対策として導入され、海外貿易における貨物輸送の安全を高めることが期待されます。具体的には、AMSによって、貨物の運送前や出港前にマニフェストが電子的に提出され、税関による事前審査が行われます。
これにより、リスクのある貨物の早期発見や対策が可能となり、物流業者や輸入会社にとっても安全な貿易が実現できます。また、米国のAMSと同様の事前報告制度は、日本など他の国でも導入されています。
これにより、国際貿易の安全性が高まることが期待されます。
まとめ
AMSは、米国向け貨物の積荷情報を、海上は船積みの24時間前まで、航空は米国到着の4時間前までに送る仕組みです。あわせて、輸入者によるISF(10+2)も必要です。
送信するのは船会社やフォワーダーですが、輸出者が正確な情報を早めに渡すことが、遅れや罰金を防ぐ近道です。AMSチャージの有無や負担者も、見積もりの段階で確認しておきましょう。
なお、AMSに関する対応は複雑な場合もあるため、必要に応じて貿易専門家に相談することをお勧めします。今後もAMSの最新情報をチェックし、対策を講じていきましょう。


