海外進出での商社を活用するメリットとは?基礎知識・注意点を解説!

 

目次

    日本の多くのメーカーが海外に製品を輸出する際、商社を活用する傾向にあります。商社とは、メーカーと海外の顧客との間で仲介役を務める企業のことであり、商品の販売や流通、購買代行などの業務を行います。本記事では、海外進出で商社を活用するメリット、基礎知識そして注意点について解説していきます。

    海外進出で商社を活用するメリットとは

    上記にも記載したように、日本国内の商社を介して、海外の事業者と取引を行う「代理販売形態」を活用するメーカーが多く存在しています。その理由は、海外進出で商社を活用するメリットにあります。

    商社を活用するメリットとして大きく3つのことが挙げられます。

    ①海外市場に精通

    一つ目のメリットは、商社が海外市場に精通していることにあります。

    商社は海外市場に詳しく、現地のビジネス文化や法律、税制などに精通しているため、メーカーが直接海外に進出するよりも、商社を通じて輸出する方がスムーズに進めることができます。また、商社が持つ現地のネットワークを活用することで、市場調査や販路開拓が効率的に進められるため、販売戦略の立案に役立ちます。

    ②資金や人的リソースの節約

    二つ目のメリットは商社を活用することによる資金や人的リソースの節約です。商社を活用することで、輸出に必要な様々な手続きや文書の作成、商品の包装や輸送などの業務の代行を依頼することができるため、メーカーは資金や人的リソースを割かずに、本業に集中することができます。また、商社が保有する多言語対応のスタッフを活用することで、言語の壁も乗り越えることができます。

    ③リスク分散

    そして三つ目のメリットとしては商社を通じて輸出することによるリスク分散が挙げられます。販売代理店と同様に、商社の販路網を活用することで、海外ビジネスならではの取引先の信用リスクやカントリーリスクのようなリスクを低減することができます。また、商社が商品のストックや売上管理を行うことで、在庫リスクやキャッシュフローのリスクも回避することができます。

    海外進出で商社を活用する際の注意点

    しかし、海外進出で商社を活用する際には注意すべき点がいくつかあります。

    ①利益率が減少する

    初めに注意すべき点は、利益率の減少です。商社によって手数料の額は異なりますが、海外進出で商社を通じて輸出する場合、商社に手数料を支払う必要があるため、メーカーの利益率が下がる可能性があります。また、横持代金(工場・店舗・支店などの拠点間で、商品移送を行う際の輸送代金)の発生も多くなるため、海外現地での店頭価格が高くなる可能性があり、メーカーのコストが上がることになります。

    ②ブランドイメージが低下する可能性がある

    二つ目の注意すべき点は、ブランドイメージの低下です。商社が販売した商品の品質やサービスに問題があった場合、メーカーのブランドイメージにも悪影響を及ぼす可能性があり、品質やブランドイメージのコントロールが難しくなります。商社とのコミュニケーションを継続して実施することで一定ヘッジができることもありますが、いずれにしても品質のコントロールは難しくなります。

    ③情報の共有が限られる

    商社を通じて輸出する場合には、メーカーと顧客との直接的なコミュニケーションが限られてしまう場合があります。商社が仲介することで、情報の共有が制限され、顧客のニーズや要望を正確に把握することができない可能性があるため、顧客との関係を重視する場合は、直接的なコミュニケーションが必要となる場合があります。

    海外進出のその他の進出形態

    以上ここまでで、海外進出で商社を活用する基礎知識、メリット、注意点について解説してきましたが、その他にも海外への進出形態はいくつか存在します。下記では海外進出における様々な進出形態について簡単に解説していきます。商社の活用以外で、企業の海外事業には次の8つの進出形態があります。

    現地法人

    一つ目は進出先の現地にて法人を設立し、海外に自社の拠点を設ける形態です。この形態はあらゆる進出形態の中で最もハイリスクハイリターンな手法です。また、現地法人は資本形態によって「独資」と「合資」の2種類に分かれます。

    メリットとしては、自社の技術やノウハウの流出リスクが低いことや経営戦略をコントロールしやすいことなどが挙げられます。

    一方でデメリットとしては、多額なコスト、進出先の国や業種によっては外資比率が制限される可能性があることなどが挙げられます。

    支店

    二つ目として、海外支店を設けるという進出形態が考えられます。国内で新たに支店を設置する際と同様に、この場合も、国内支店本社と同じ事業を行い、投資や経営にともなうリスクもすべて本社が責任を負います。

    この形態のメリットとしては、本社と同一経営のため、新たに社内規定などを策定する必要がないこと、日本国内の本社から原材料などを取り寄せる場合も社内取引の一環として本社で経費申告ができることが考えられます。

    デメリットとしては、進出先によっては設置が承認されない可能性があることが考えられます。

    駐在員事務所

    次の形態としては、駐在員事務所の設置が考えられます。駐在員事務所は市場調査や広告宣伝といった活動の拠点として設置されるのですが、非営利活動に限定されることが大きな特徴です。

    メリットとしては、法人登記や従業員雇用が不要であることが挙げられますが、デメリットとしては、直接的な営業活動ができないことがあります。(※本社経由で契約を行うことで、実際に営業活動を行っている企業も存在します)

    販売代理店

    四つ目の進出形態として、進出先での販売を代理店へ委託する方法があります。この方法は、あらゆる進出形態の中でもリスクとリターンのバランスがとれた手法です。

    メリットは、現地商社の販路網を活用することで、海外事業には付きもののカントリーリスクなどネガティブな要因への対策がとれることにあります。

    しかし、デメリットとして、現地顧客の声を感じにくいため情報収集が難しく、また成功体験やノウハウ蓄積の実感が得られず、事業として成長しにくいことなどがあります。

    直接貿易

    五つ目の方法は、自社製品を海外顧客に直接販売する方法で、現地法人を設立する前段階として、マーケティングのテストを兼ねて導入されることが多い手法です。

    メリットとしては、進出先に製造拠点を設けるコストの節約ができること、海外の事業者に対して直接交渉を行い、現地のマーケティングを肌で感じることができること、海外事業のノウハウを自社に蓄積できることなどが挙げられます。

    一方で、デメリットとしては、関税などの輸出コストが発生することやリスク管理を社内で行う必要性があるため、人材や体制を慎重に選定しなくてはいけないことなどが挙げられます。

    現地委託生産

    次の形態としては、現地委託生産が挙げられます。現地委託生産は、自社製品や部品の生産を海外企業に委託することで、生産コストの削減という効果が期待できる進出形態です。現地委託生産には大きく「ODM」と「OEM」の2種類があります。

    この形態のメリットは製造にともなう設備投資や人件費が発生しないこと、企画、開発など製造以外の工程に人員を費やすことができることにあります。

    デメリットとしては受託企業の設備や技術によって製品の品質が左右されることが考えられます。

    ※ODMとは「Original Design Manufacturer」の略で、生産技術や設備などがない企業が、製品の企画から設計・生産にいたるまでを他社へ委託する手法のことです。

    ※OEMとは「Original Equipment Manufacturer」の略で、委託を受けた企業が他社ブランドの製品を製造する手法のことです。下請け製造の一種ですが、販売戦略として広く知られています。

    フランチャイズ

    7つ目の形態として、フランチャイズが挙げられます。フランチャイズとは、事業者(フランチャイザー)が他の事業者(フランチャイジー)と契約を結ぶことで、商標使用権や商品販売権を与え、見返りとして一定の対価(ロイヤリティ)を受け取る手法です。有名なフランチャイズとしては、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、セブンイレブンなどが挙げられます。この方法のメリットは、自社に資本力がない場合でも、海外現地企業の資金や人材、販路網などを活用できることや、集客ノウハウなど、独立までの手助けを受けられることにあります。

    デメリットとしては進出先フランチャイジーの業績によっては立て直しなどのコストが発生するケースがあることが挙げられます。

    越境EC

    最後の形態としては、越境ECが考えられます。越境ECとは、海外顧客をターゲットとしたオンラインビジネスのことで、インターネットを活用して海外へ商品・サービスを販売するECサイトを指しています。大きく分けて、自社ECとECモール出店があります。自社ECとは、オリジナルドメインを取得した自社独自のECサイトのことで、自社の製品やサービスにあったデザイン設計やサイト構築が可能です。しかし、リピート購入に繋げやすい一方で、ECサイト構築に時間や労力、費用といった社内リソースを費やしてしまうことが難点であるといえます。ECモール出店とは、複数のショップが集まるECショッピングモールへの出店のことです。既存のプラットフォームを利用するため、ECサイトを構築する必要がなく、集客力が高いことがメリットですが、出品料や決済手数料など運用にはある程度のコストがかかります。

    越境EC全体のメリットとしては、海外に直接出店するリスクやコストを低減できること、在庫リスクを抑えることができることなどが挙げられます。デメリットとしては、日本から海外へ発送するため、国内と比較すると輸送コストが高額になりやすいことや、海外発行のクレジットカードによる不正利用などのトラブルへの対策が必要となることが考えられます。

    まとめ

    以上本記事では、海外進出で商社を活用する際の基礎知識やメリット、注意点、その他の海外進出形態について解説してきました。
    商社を利用するか否かは、メーカーの目的や戦略によって異なります。商社を通じて海外市場進出をすることで、スムーズに販路開拓や販売が進められ、リスクを分散することができる一方で、コストがかかるだけではなく、品質や顧客の声といった重要な要素もコントロールが難しくなります。メリットと注意点を総合的に判断し、他の進出形態とも比較しながら適切な戦略を立てる必要があります。

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