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日本国内の市場の冷え込みが止まらず、今後に関しても好転するとは言えない状況が続いています。日本は1955年〜1973年までの19年間、いわゆる高度経済成長期の中で大きな発展を遂げ、世界にその名をとどろかせました。その終焉から半世紀が経過し、その姿は一変。諸外国とは異なり一向に上がる気配のない賃金で、高い物価に耐え続けることへの違和感があちこちから聞こえてくる世の中になりました。
一方、国外に目を向けてみると、市場の拡大が見て取れます。賃金上昇率は日本よりも圧倒的に高く、増え続ける人口も日本とは逆のトレンドであり、市場の発展に大きな影響を与えています。
人口減と低い賃金上昇率の日本、人口増と高い賃金上昇率の海外。これらを踏まえると、国内市場の成長が頭打ちとなる中で、海外進出にいち早く踏み切れるかどうかが今後の企業成長のカギになってくるということは想像に難くありません。実際に海外進出を検討する企業はここ数年で増加傾向にあり、8月には政府が海外進出支援室を設けたことからもその重要さが確認できます。
海外進出には企業価値の上昇・新規販路開拓・コスト削減など様々なメリットがありますが、いち企業がいざ海外進出をしようとなると基本戦略の理解や注意すべき事項が沢山あり、なかなか一筋縄ではいかないのが実情です。
本記事では「海外展開の基本戦略と注意事項」として、日本企業が海外進出をする際に押さえておくべきポイントを簡潔にご紹介いたします。
日本企業が海外進出するには?重要な考え方
日本企業が海外進出するには、①市場調査と現地視察による情報収集②貿易計画の策定と予算設定
以上2つの基本戦略が必要となります。また、注意事項としては①資金調達②現地のカントリーリスク③現地の市場に関する情報不足④コミュニケーション・言語の壁⑤現地の販売経路の問題があります。
これらの基本戦略と注意事項は、海外進出する際には必ず確認しておかなければなりません。なぜなら、大前提として海外進出での成功は国内での成功よりも難しいからです。先に述べた通り、企業の海外進出はトレンドになっています。しかしながら、海外の市場が拡大しているから、進出すれば国内よりも容易により高い利益を得られると思うのは大きな間違いです。もちろん、国内にはない可能性が広がっていることは事実ですが、ハイリスク・ハイリターンであることをしっかり頭に入れ、進出の第一歩として基本戦略と注意事項について確認しましょう。
基本戦略①市場調査と現地視察による情報収集
「どこの国が適しているか/いないか」「どんなものが売れるのか」「何がトレンドなのか」。海外進出の為には知らなければいけないことが山積しており、まずはそれを的確に理解する必要があります。
「市場調査」というと複数人で手分けをし、現場へ飛び回り、データを集めて分析し…というイメージがあるかもしれませんが、インターネットが発達した現在では、足を動かさずとも手に入る有益な情報は充分にあります。ある国にあてをつけたら、「国名+〇〇」と検索するだけで必要な情報が手に入ってしまうなんてことも珍しくありません(〇〇に入るのは「日系企業」「経済」「最低賃金」など)。
また検索結果が芳しくない場合、英語で検索すると情報の母数が激増し、欲しい情報が手に入る可能性がぐんと上がります。しかし「百聞は一見に如かず」というように、いくら情報の海が広くても、やはり現地視察は欠かせません。進出先が決まっている・いないに関わらず、現地での情報収集、具体的には現地市場や店舗・同業他社・JETEOなどの公的機関・現地パートナーの訪問は基本中の基本であり、海外進出の根幹となるので省略することはできません。
基本戦略②貿易計画の策定と予算設定
①で集めた充分な情報(同業他社の進出状況・信頼できるパートナーの有無・現地の物流事情など)をもとに、いよいよ貿易計画の策定と予算設定をします。貿易計画は基本的に達成したい数値から逆算して進めていくので、まずは目標として事業が成り立つための売上げと投資回収のめどを設定します。
適切な目標設定が完了したら、拠点の形態や独資・合資など軸となる部分を決め、追加で必要な情報を適宜集めながら貿易計画を肉付けしていきます。この時、各所の予算設定は後述のカントリーリスクも考慮してバッファを設けておくのが賢明です。貿易計画のより詳細な作り方はJETROのHPをご覧ください。
注意事項①資金調達
海外進出を進めていくうえで気になるポイントは資金の問題です。海外に数か所の拠点を持つような名だたる企業であれば問題はありませんが、今まで貿易をしたことがなかったり、これから海外進出を始めたかったりする企業にとっては、躓きやすいポイントです。国内での展開に必要な業務、たとえば出張や現地視察などでも、海外で行うというだけで数倍〜数十倍の費用がかかることも珍しくありません。
しかし海外進出には使える補助金や助成金が豊富なので、実は知ってさえいれば解決できるという事案が少なくないです。海外進出の波が来ている昨今、適用できる補助金もそれに伴い増えているので、積極的に活用してみましょう。
注意事項②現地のカントリーリスク
事前の情報収集である程度まではつかめますが、注意しておきたいのが海外進出とは切っても切り離せない「カントリーリスク」です。カントリーリスクとは、貿易の際に相手国の政治・経済などの社会情勢が大きく変化し、為替変動などがおこることによって、資産が変動してしまうというものです。
国内で取引を行う際はあまり意識しないことですが、国と国とでやり取りをする以上、相手国の情勢が直接会社の業績に打撃を与えることも容易に考えられます。あまり現実味を感じない「国の倒産」、いわゆるデフォルトも海外では度々ニュースになっているのを見ます。
ハイリスクハイリターンであることを理解するのみでなく、どういった状態がハイリスクなのかまでしっかり考慮しておかないと、希望に満ち溢れた海外進出が致命傷への第一歩になりかねないことを常に頭に入れておきましょう。
注意事項③現地の市場に関する情報不足
海外進出の際に直面する問題として「進出先で事業を成功させるための情報・知識・ノウハウが無い」ということがよく挙げられます。何も調べずに現地に進出し、販売を始めてから売れ行きがわかるというのではなく、事前にその地域のビジネスに関する情報を収集することが、リスク軽減という観点から大切です。
しかしながら、実際には、多くの日本企業が限られた予算の中で十分な情報収集ができないまま海外進出を始めてしまいます。そして、予算が潤沢な大企業でさえも、現地の競合他社に関する情報がうまく集められなかったために撤退を余儀なくされるケースもあります。
そのため、やはり正確に市場の情報を集めることは海外進出において必要不可欠です。こうした市場の情報には、国や国際機関が調査する統計情報といった定量的なデータと、現地の人々の意識・嗜好がみえる定性的なデータがあります。この両方の情報を収集することが、市場とニーズを捉える上で重要になります。
注意事項④コミュニケーション・言語の壁
さらに、海外進出において頻発するトラブルとして「コミュニケーション・言語の壁」があります。日本企業が海外に進出する際に、進出先で日本語が通じるということは滅多にありません。その一方で、英語が話せればビジネスにおけるコミュニケーションを問題なくこなすことができるといえるでしょう。
こうしたことから、現地での商談やカスタマー対応においては、英語や現地の言語が流暢に話せる通訳が必要となります。また、商品・サービスの説明においても、通訳といった存在が必要不可欠となります。例えば、商品・サービスを現地の人々に宣伝したり、広告・キャッチコピーのために魅力的な翻訳をしたりする場面です。こうした部分においては、より質の高い言語運用能力が必要となり、必然的に言語的な問題が大きくなります。
注意事項⑤現地の販売経路の問題
そして、「進出先で商品・サービスを消費者に届ける窓口がない」ということも大きな問題です。海外進出を初めて行う場合、当然のことながら企業・商品・サービスの知名度はなく、販路も確立されていません。そのため、販売経路や現地の卸会社、小売店、代理店などを見つけ、現地企業とのネットワークを構築することは必要不可欠となります。
そして、ここでは上記の予算・情報・言語の問題がさらに絡んでくるため、莫大なコストがかかってしまいます。これを乗り越えるには、現地企業やそれらの担当者と繋がるという段階があり、さらにハードルが上がってしまいます。
海外進出の魅力
今回は日本企業が海外進出するための基本戦略と注意事項についてお伝えしました。冒頭で述べた通り、海外進出の成功は一筋縄ではいきませんが、国内に留まったままでは決して得られないリターンの可能性が秘められているのも事実です。正しい理解と準備をして、企業の飛躍につなげましょう。
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