モロッコでの日本企業のビジネスチャンスは?必要な基礎知識

 

目次

    はじめに

    中東の国々を中心とした世界地図で見ると、モロッコは一番「左側」にあるためイスラム教の国々の中でも「最西端」に位置する国として有名です。また、ヨーロッパのスペインやポルトガルに非常に近く、すぐ南にはサハラ沙漠やサハラ以南の国々があり北部には農地が広がり、農業生産物を加工して輸出も行っています。

    歴史的、文化的、そして地理的にも非常にユニークなモロッコについて、本記事ではモロッコの基礎知識、そして日本企業のビジネスチャンスに関して解説していきます。

    モロッコについての基礎知識 

    面積:44.6万平方キロメートル(日本の約1.2倍,西サハラ除く)

    人口:3,603万人(2018年 世銀)

    首都:ラバト

    民族:アラブ人(65%),ベルベル人(30%)

    言語:アラビア語(公用語),ベルベル語(公用語),フランス語

    通貨:モロッコ・ディルハム(MAD)

    宗教:イスラム教(国教ほとんどスンニ派)

    政体:立憲君主制

    対欧米諸国との関係:モロッコは2008年、EUから包括的なパートナーシップである「前進的地位」を付与され、欧州との市場統合などの関係強化に力を入れています。フランスは、かつて宗主国であったという歴史的な関わりに加え、モロッコにとって最大の貿易相手国であり、経済・技術協力、人的交流等極めて緊密な関係にあります。また、ジブラルタル海峡を挟んで隣接するスペインとも、歴史的、経済的な結びつきが強いです。

    経済概況

    1 主要産業:農業(麦類,ジャガイモ,トマト,オリーブ,柑橘類,メロン),水産業(タコ,イカ,鰯),鉱業(燐鉱石),工業(繊維,皮革製品,食品加工,自動車,自動車部品,電子部品,航空部品),観光業

    2 GDP:約1,118.5億米ドル(2018年 世銀)

    3 一人当たり国民所得:3,090米ドル(2018年 世銀)

    4 経済成長率:3.0%(2018年 世銀)

    5 物価上昇率:1.6%(2018年 世銀)

    モロッコビジネスを検討する上で大切な経済概況

    モロッコは農業を基盤とし、漸進的に工業化を進めていくという基本政策を採っています。加えて、自由市場経済を採用しており、経済のグローバル化に対処するための経済の自由化、一部公的企業の民営取り組み、海外投資誘致政策の推進を行い、外国企業の誘致に積極的な体勢をとっています。

    また、フリーゾーンを整備し、各種投資・税制優遇措置をとるなどして投資環境を整備しつつ、高速道路、鉄道、港湾、社会住宅などの公共事業にも投資し、インフラ整備・内需拡大を図っています。

    再生可能エネルギーの利用促進も目指しており,2020年における発電容量のうち,再生可能エネルギーが占める割合を42%(うち太陽エネルギー14%,風力14%,水力14%)とし,2030年までに同割合を52%(うち太陽エネルギー20%,風力20%,水力12%)へ引き上げることを目指しています。

    以上、モロッコの基礎知識について解説してきましたが、実は多くの日本企業がこういったモロッコの経済概況や地理的な特徴を活かし、モロッコでのビジネスを展開しています。では、次に実際にモロッコでのビジネスを展開している日本企業の例を取り上げながら、モロッコでの日本企業のビジネスチャンスについて解説していきます。

    モロッコでの日本企業のビジネスチャンス 

    モロッコの基礎知識を踏まえ、ビジネスの視点から見ていくと、初めに地理的な特徴において、上記に記載のようにモロッコはヨーロッパへの距離が近く、またスペインの対岸に位置するモロッコのタンジェには、アフリカ最大級のコンテナ港があるため、欧州などへの輸出が容易です。加えて鉄道や高速道路などのインフラも充実しており、国内にある自由貿易ゾーンからのアクセスも良いという特徴があります。

    そして中東や欧米など多くの国と自由貿易協定(FTA)を締結しているのもモロッコの魅力の1つであり、2022年4月18日にはアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)設立協定も批准しました。AfCFTAが進展すれば、アフリカ域内での貿易もさらに自由に行えるため、生産拠点としてもモロッコは現在注目を集めています。

    また、他の北アフリカの国とは異なって石油や天然ガスをほとんど産出していないのもモロッコの特徴であり、そのため水力や風力、太陽光を柱に再生可能エネルギーの開発や活用に熱心に取り組んできました。グリーン水素やグリーンアンモニアの分野でも、産学官連携や国際連携が進んでいます。

    これらを踏まえ、さまざまな分野において日本企業のビジネスチャンスが存在しています。例えば、FTA網が充実しているため、自動車や航空機産業などの製造分野では、製造拠点としての強みがあります。

    農業分野では、降雨に恵まれない年でも農業生産を高められる技術を導入しようという動きがあり、また、モロッコ政府は海水の淡水化施設を建設するなど水不足対策に取り組んでいるため、農業資機材、淡水化や水処理の分野でも、日本企業の参入に期待が寄せられています。

    また、モロッコの人口規模自体は大きくないが、1人当たりGDPは3,000ドル台で、アジア諸国ではベトナムと並ぶほどであり、カサブランカのような大都市では、欧州レベルの生活様式や所得水準の人口も多く、高機能製品の需要もあるため、日本食など高級消費材などにも商機があると考えられます。

    ジェトロが2月28日に開催した「日・モロッコ ビジネスフォーラム」でもモロッコが有望な投資先である理由として、モロッコの政治・社会的安定性や投資誘致政策、アフリカ諸国・地域の中で米国や欧州市場に近い地理的優位性、多くの国や地域と締結した自由貿易協定(FTA)の存在、国内の再生可能エネルギー活用割合の高さなどが挙げられました。

    実際に、70社以上の日系企業がモロッコに進出し活躍していますが、ここでは例として阪神高速道路とMARS Companyの事例をあげます。

    阪神高速道路は、モロッコ人の「インフラ維持管理の必要性」の認識が高まっていることをビジネスチャンスと捉え、開発していたNinjar-fech(特殊高所技術:足場や作業車を使わず高所で点検・調査・補修作業ができる技術)をモロッコで活用し始めました。そして現在国営モロッコ高速道路会社 

    (ADM)との協働ビジネスについても具体的な検討を進めており、モロッコを拠点に他のアフリカの国々への技術移転を視野に入れています。

    MARS Companyは水産業がモロッコの主要産業のひとつ で、日本にも多くの水産品を輸出していることをビジネスチャンスと捉え、より新鮮な水産物を提供し、食品ロスを削減するために、鮮度をチルドのまま高く保持し長期保存できる高度冷蔵保存技術をモロッコ の水産業で活用しようと取り組みをしています。

    まとめ

    以上見てきたように、モロッコには多くのビジネスチャンスがあり、有望な投資先としても注目を集めている国です。日本企業にとって、モロッコの地理的、経済的そして社会的な特徴を踏まえた上でモロッコ進出を検討していくことは大きな進歩につながる可能性があると考えられます。

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