海外における着物の需要は?海外販売の方法も解説

着物は海外で安定の人気を集めており、特に近年のインターネット普及により、世界中の人々が簡単に日本の着物を閲覧したり購入したりすることができるようになっています。
さらに、海外でも着物を着たいと考える人が増える中で、そのニーズに応えるサービスが拡大しており、着物レンタルや着付け教室などのサービスが利用される機会が増えています。
伝統衣装としてだけではなく、コスプレの一部として使用される場合もあります。

この記事では、海外における着物の需要、海外販売する方法、着物ビジネスにおける注意点について説明いたします。

海外における着物の需要

日本の着物は、国外でも非常に人気が高いです。多くの事業者が外国人からの売上を急増させ、そのうち25〜30%は外国人によるものです。また、直接の着物の調達も盛んで、ヨーロッパ、中東、台湾などからのバイヤーが日本を訪れて直接着物を購入しています。

海外向け着物ビジネスの成功例

着物は世界中で「クール」と称される日本文化の代表ですが、現代ではなかなか気軽に着られるものではありません。

しかし、京都で生まれ育った田尻大智氏は、このギャップを埋めるため、2018年に着物をアップサイクルするブランド「Relier81」(ルリエ エイトワン)を立ち上げました。彼は、カルチャープレナー(文化起業家)のひとりとして、新しいアプローチで着物の魅力を海外に発信し、市場を開拓しています。

田尻氏は外国人観光客が着物の帯を購入し、部屋に飾るなど、その特別な価値を活かす可能性に着目しました。
しかし、着物の着付けには多くのアイテムが必要であり、外国人にとってはハードルが高かったことから、「自国に帰っても使えるアイテムがあればいい」との発想から彼のブランドは生まれ、海外でヒットしました。

着物を海外販売する方法4選

海外での日本文化への関心の高まりを背景に、着物はファッション・インテリア・アートの分野で注目されています。実際に海外へ販売するには、販売チャネルの選定が重要であり、事業規模やリソースに応じた方法を選ぶ必要があります。

ここでは、着物を海外向けに販売する代表的な方法を整理して解説します。

① 海外対応ECモールを活用する方法

AmazonやeBayなどの海外対応ECモールを利用する方法は、比較的手軽に海外販売を始められる点が特徴です。すでに海外ユーザーが集まっているため、集客の初期コストを抑えやすく、越境EC初心者にも向いています。

一方で、販売手数料が高いことや、商品掲載ルール・価格設定・返品対応など、各モールの規約に従う必要があります。利益率やブランディングの自由度を重視する場合は注意が必要です。

② 自社ECサイトで直接販売する方法

自社サイトを構築して海外向けに販売する方法は、価格設定やデザイン、ブランド表現の自由度が高い点が魅力です。ShopifyなどのEC構築サービスを利用すれば、専門知識がなくても多言語・多通貨対応のサイトを比較的簡単に立ち上げることができます。

ただし、集客や決済、海外配送の仕組みを自社で整える必要があり、立ち上げ初期は広告運用やSNS活用などのマーケティング施策が重要になります。中長期的にブランドを育てたい事業者に向いた方法です。

③ 現地パートナーと連携して販売する方法

現地のバイヤーやショップ、販売代理店とパートナー契約を結び、着物を卸販売する方法もあります。現地市場や消費者ニーズを熟知したパートナーを活用することで、販売や在庫管理の負担を軽減できます。

一方で、契約条件や価格交渉、知的財産の管理などには注意が必要です。信頼できるパートナー選定と、契約内容の明確化が成功のカギとなります。

海外販売では、実務負担を抑える手段として輸出代行業者の活用も有効です。外注する際の判断ポイントや注意点については、以下の記事をご覧ください。

 

世界的な需要とEC基盤の拡大で、着物は少資本でも海外販売を伸ばしやすい。成功例のようにアップサイクルや現地パートナー活用で付加価値と販路を広げられる。一方で、古物商許可・開業届などの手続きや知財リスク、サイズ/着付けのハードル、越境物流・返品やモール手数料が利益を圧迫しやすい。価格設計と法務・オペ体制の整備が必須。

着物ビジネスを行う際の注意点

着物を国内外で販売するビジネスは比較的始めやすい一方で、事業として運営する以上、法的手続きや知的財産権への配慮が欠かせません。特に個人で開業する場合や越境ECに取り組む場合は、事前に押さえておくべき注意点があります。

① 開業時に必要な手続きと許可

着物通販のネットショップを開業するために、特別な資格や許可は原則として必要ありません。ただし、個人事業主として新たに着物販売を始める場合は、税務署へ開業届を提出する必要があります。開業届は、新たに収益を得る事業を開始する際に提出する基本的な書類で、所得税や確定申告の手続きを行うためにも重要です。

② 中古着物を扱う場合の古物商許可

中古の着物や古着(リユース品)を販売する場合には、古物商許可の取得が必要です。これは盗品流通防止を目的とした制度で、警察署を通じて申請します。許可を取得せずに中古品を継続的に販売すると、法律違反となる可能性があるため注意が必要です。アンティーク着物やリユース着物を扱うビジネスでは、早い段階で取得しておくことをおすすめします。

③ 越境ECで注意すべき知的財産権

越境ECに取り組む際は、著作権・商標権・意匠権といった知的財産権への配慮が不可欠です。特に、キャラクターがプリントされた生地や素材を使用した商品、有名ブランドのロゴやデザインを無断で使用した着物や小物は、海外販売であっても法的問題となる可能性があります。

国によって取り締まりの厳しさは異なりますが、ECモールでのアカウント停止や商品削除、損害賠償請求につながるケースもあります。オリジナルデザインの商品を扱う、または権利関係が明確な素材を使用するなど、リスクを回避した運営が重要です。

着物を海外で販売するにあたっては、海外輸出の流れを全体像として把握しておくことが重要です。越境ビジネスの基本的な進め方については、以下の記事をご覧ください。

 

まとめ

着物は日本の伝統文化として世界的な評価を受けており、近年はインターネットや越境ECの普及により、海外販売のハードルも大きく下がっています。実際に、海外ではファッションやインテリア、アート、アップサイクル商品としての需要が広がり、EC販売や現地パートナーとの連携など、多様なビジネスモデルが生まれています。

一方で、着物ビジネスを事業として展開するには、開業届や古物商許可といった法的手続き、著作権・商標権などの知的財産権への配慮、越境物流や返品対応など、実務面での注意点も少なくありません。特に海外販売では、販売チャネルごとの手数料や規約、現地ニーズを踏まえた価格設計が収益性を左右します。

着物の魅力を正しく伝え、持続的なビジネスとして成長させるためには、文化的価値と商業的視点の両立が重要です。制度面や実務に不安がある場合は、早い段階で専門的な知見を取り入れることが成功への近道となるため、一度専門家に相談することをおすすめします

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