初めての海外進出で気をつけたいこと、流れ・手続きを解説!

 

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    ここ10年、日本企業の海外進出は増加傾向にあります。コロナ危機の間は一時的に海外進出が停滞しましたが、危機が過ぎ去った後、海外進出は回復傾向にあります。 特に、安価な労働力と広い敷地を確保しやすい中国や、高度な人材を日本より比較的安く採用できるベトナム、タイなどの国が脚光を浴びています。他にも、シンガポール、台湾、アメリカ、インドネシアなど東南アジア諸国を中心に、西欧圏への進出を試みる企業が増えているのが現状です。

    東京証券取引所1部上場企業やそれに準ずる規模の企業の半分以上がすでに海外に進出していることがわかっています。ベンチャー企業の場合、上場企業と異なり、海外に進出した企業や海外進出を検討している企業の割合はまだ低いですが、海外にはより広いビジネスチャンスと収益創出の機会があるため、本記事では、海外進出のためにどのような検討が必要で、どのような流れで行われ、どのような長所と短所があるのかを簡単に説明いたします。

    海外進出の流れ

    1.目的の明確化

    企業であれば誰もが売上を上げたいと考えています。売上を上げたいという、究極の目的は誰しも同じでしょう。 しかし、海外でどのように売上を上げることができるのかという具体的な答えは、企業によって異なります。例えば、コスト削減を通じて収益を最大化できる企業がある一方、付加価値創出を通じて利益を拡大できる企業があります。 この2種類の企業は、異なる戦略で海外進出を検討する必要があります。

    海外進出のために検討する必要がある項目は以下の通りです。

    人的資源

    海外事業に集中するためには、社内の主要メンバーが海外に移動する必要が発生します。コア人材が海外に移動する場合、既存事業が弱体化する可能性があるため、人材の空白を埋めるための具体的な方策を事前に検討しておく必要があります。

    販売チャネル

    海外で商品販売を計画している場合は、様々な販売チャンネルを検討する必要があります。進出しようとする国の文化や消費者の消費傾向、所得水準など様々な面で国内市場と大きな違いがあります。 そのため、国内で展開してきた販売チャンネルとマーケティング方式が海外でも同じように通用しない可能性があることを認識しなければなりません。

    販売価格

    進出時点で設定された販売価格も、為替レートや進出国の状況によって変動が生じる可能性があることに留意しなければなりません。価格変動に影響を与える要素が国内よりも多いため、海外販売の場合、厳格な価格管理が難しい場合があります。特に、2022年第4四半期〜2023年第1四半期のように為替変動が激しい時期には、為替レートによって売上が大きく変動する可能性があるため、為替リスクをヘッジするための代替案も用意する必要があります。

    2.進出計画を立てる

    まず、進出したい国を検討する必要があります。

    進出しようとする国のターゲット顧客は誰であり、ターゲット顧客の所得水準はどの程度なのかを把握する必要があります。国が発表する様々な経済指標を利用して、ターゲット層の人口と1人当たりGDPの乗算指数を確認すれば、リスク予防に大きな効果があります。自社が海外に販売しようとする製品の価格が上記指数と乖離が大きい場合は、海外進出について再検討が必要な場合があります。

    人口統計、経済成長率、輸入制度、外資規制、競合他社の製品の購買層、購買頻度、購買場所など進出予定国の経済全般に関連する指標と競合他社のターゲット消費層と製品の特徴をすべて綿密に比較、分析しなければ成功的な収益を上げることができません。

    自社製品の輸入規制の有無を把握する必要があります。

    国によって輸入を規制している商品が異なるため、商品の輸入難易度が異なります。例えば、中国の場合、健康食品などの輸入規制が特に強いため、中国に健康食品を輸出する際には十分な検討が必要です。

    輸出入規制による具体的な内容は以下のページでご確認ください。
    https://www.jetro.go.jp/world/trade.html

    どのような方法でその国に進出できるかを把握する必要があります。具体的には次の3つの方法が考えられます。

    卸し

    • 販売代理店に任せれば手間が省けます。
    • 販売代理店に販売した時点で利益が確定します。
    • 販売拡大は販売代理店次第です。
    • 流通経路のコントロールが難しく、価格暴落の可能性があります。
    • 正規輸入のため時間がかかる場合があります。

    越境EC

    • 迅速な実施が可能です。
    • テスト実施も可能です。
    • 自社で価格やプロモーションをコントロールできます。
    • 正式な輸入申請が不要なため、輸入規制を回避できます。
    • 消費者の決済手段が限定的(クレジットカード限定など)です。
    • 販路が限定され、拡張性が不足する可能性があります。

    現地法人化

    現地法人化とは、日本企業が海外現地に法人を設立する形の進出形態です。現地法人では、国内にある本社と分離して事業を行うため、発生した利益についても原則として日本で申告する必要がありません。 また、現地法人で発生した利益については海外の低い法人税率が適用されるため、法人税率の低い地域に現地法人を設立することで大きなメリットを得ることができます。ただし、海外企業が現地法人を設立する場合には、出資可能な資本比率に制限がかかっているなどの規制がある場合がありますので、慎重に確認する必要があります。

    • 独自に価格やプロモーションをコントロールすることができます。
    • すべての販売経路に商品を配置することができ、拡張性が最も高い進出方法です。
    • 設立に手間と時間がかかります。
    • 正式な収入が必要で、時間がかかる場合があります。

    販売のために必要な業務を把握する必要があります。

    • 進出方法ごとに必要な業務と整備すべきインフラを整理する必要があります。
    • 業種や販売したい製品群によって、販売に必要な業務はすべて異なるため、自社の状況に合わせた検討が必要です。
    • 場合によっては、すべてを自社で解決するのではなく、必要な業務やサポートを一括して行ってくれるサポート会社を探すのも効果的な手段となることがあります。 特に海外の税務・法務・会計法に関する検討や、海外企業との契約締結やリーガルチェックの場合は、一般的に自社内で行うことが難しい場合が多いため、自社に対応可能な部署がない場合は、専門家にアウトソーシングすることが効率的な場合があります。

    3.現地調査

    市場規模を算出し、綿密な事業計画を策定しても、実際に商品が売れる可能性や実際の肌で感じる体感度は異なる場合があります。 なぜなら、文化的な面で国内とは非常に異なる場合があるからです。 したがって、現地調査は必ず必要です。定量的なデータの確認と、定量的なデータでは確認できない体感データの両方を十分に収集し、検討・分析する必要があります。

    • 定量的、定性的調査を実施する必要があります。
      • 現地の人々に実際に製品を使用させ、定量的・定性的調査を通じて現地の生の声を収集する必要があります。
        • 具体的に製品を使った感想を収集する必要があります。
        • どのくらいの価格帯なら購入したいかを確認する必要があります。
        • 製品に含まれる成分に対する印象を確認する必要があります。

     

    • 手間はかかりますが、決裁者が現地に直接訪問する方法も効果的です。
      • 実際に現地を視察し、パートナーや現地ビジネスに必要な機能を確認することで、具体的な進出をイメージしやすくなります。
      • また、最終的な意思決定を早めることができるため、直接の決裁権者や事業責任者が現地視察を行うことは、必要不可欠な手続きかもしれません。

    4.最終決定

    数年間、どの程度の規模の資金を投入して回収するのか、具体的な資金調達計画と回収計画を立てなければなりません。 海外進出は国内事業展開よりも変動性が大きいため、綿密に収益化計画を立てなければなりません。 このすべての過程を完璧に遂行した上で進出を決定すれば、成功的な海外進出を実現することができるでしょう。

     海外進出のメリットとデメリット

    海外進出による長所と短所は以下の通りです。 もちろん、海外には国内市場を超えた成長機会と新しいビジネスチャンスがありますが、それだけ多くのチャンスがある分、高いリスクを伴うことも見逃せません。 海外進出による一般的な長所と短所は以下の通りですが、企業の業種と特性によって、より大きくあるいは小さく作用する長所と短所があるため、それぞれの状況に合わせて綿密に検討してください。

    メリット

    • 新たな市場拡大を狙うことができます。
    • 海外で有名になれば、国内販売のインバウンド需要が増える可能性があります。
    • 進出国によっては法人税率が低いため、節税効果が期待できます。
    • 海外事業補助金で事業を行うことができる場合があります。
    • 少子高齢化でますます縮小している国内市場以外でビジネスチャンスを模索することで、利益増大を狙うことができます。

    デメリット

    • 進出費用がかかります。
    • 海外事業拡大のための資源が分散され、国内事業が弱体化する可能性があります。
    • 現地の経済状況によってビジネスが影響を受ける可能性があります。
    • 国内とビジネス文化が異なるため、初期段階で適応に苦労する可能性があります。

    まとめ

    今回の記事では、海外進出の手順と注意点、メリットとデメリットについて簡単に検討してみました。 人口減少により国内市場規模がどんどん縮小しており、また継続的な円安により、国内企業はこれまで以上に海外進出について綿密に検討する必要がある時代です。しかし、様々な面で国内とは状況が異なるため、海外進出には勇気が必要で、大きなリスクを伴うのも事実です。自社の製品が海外の消費者にどのようにアプローチできるのか、どのような競争力を持つことができるのか、十分な検討をお忘れなく行ってください。

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    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。