初めての工芸品の海外市場進出に必要な基礎知識をご紹介!

 

目次

    日本の伝統工芸品が海外で大きな人気を集めています。日本の芸術が世界的に人気を集めるようになり、自分の作品を海外に輸出したいと考えている作家さんはたくさんいますが、海外進出を成功させるためにはどのような戦略を取るべきでしょうか? 海外の消費者の好みや文化に合わせてアレンジした工芸品を輸出するのが望ましいのでしょうか?それとも日本に工芸品である以上、ありのままの姿を見せることが望ましいのでしょうか?答えがある問題ではありません。 ありのままの日本を楽しみたい消費者もいれば、そうでない消費者もいるはずです。

    しかし、明確なのは、工芸品を海外に輸出するためには、かなりの努力が必要だということです。 作品の芸術性だけを信じて、とりあえず海外に出せばいつか売れるだろう、という受動的なアプローチは、失敗する可能性が非常に高いです。 自分の作品に価値を認めてくれる海外の消費者に出会うためには、時には作家自身が海外に出向いて営業をしなければならないこともあります。積極的に自分から自分の作品を海外に発信し、自分の作品に海外でのポジションを確保し、価値を高めていくアーティストは、海外でも成功することができるでしょう。

    ありのままの姿を海外に見せるか、それとも海外の好みに合わせて自分の作品を変えるか。 どのような戦略を取るべきかは、おそらく多くの作家さんにとって悩みの種でしょう。 そこで、異なる2つの方法をそれぞれ紹介することで、作家さん、そして日本の伝統工芸品を海外に輸出したい方のお役に立てればと思います。

    日本の有りのままを見せるべきだという視点

    日本の様々な行事で伝統的に使用されている工芸品は、その行事がない海外では、本来の用途をそのまま反映すると販売に苦労することがあります。 その理由は、伝統工芸品がその価値を十分に発揮するためには、その文化を共有する環境での用途が重要だからです。 しかし、これは用途に限った話で、デザイン自体は海外でも魅力を発揮することが可能です。

    日本でお土産として工芸品を購入することと、現地で日常生活で工芸品を購入することは、ニーズが異なります。しかし、慣れ親しんだ「和風」のデザインに「洋風」を加えることは、日本人には新鮮さを与えますが、欧米人の目にはどこかで見たことがあるような印象を与え、逆に陳腐な印象を与える可能性があることを考慮する必要があります。 そのため、日本文化を尊重している人たちに好感を持たれ、同時に斬新でユニークで素敵な印象を与えるためには、和風のデザインをそのまま商品化する方が良いでしょう。

    海外進出を計画している場合、必ずしも新しいデザインを開発する必要はありません。 なぜなら、慣れ親しんだ、場合によっては古く見えるかもしれないデザインも、外国人には新しく新鮮に感じられるかもしれないからです。 デザインの新しさを追求するよりも、伝統工芸品の本質に集中し、忠実に制作することがより重要でしょう。

    伝統工芸品が持つ独特の魅力と価値は、それ自体に深みと豊かさを含んでいます。こうした工芸品が持つ真の価値は、そのデザインや形だけでなく、その中に込められた文化や歴史、そして職人の真心から生まれるものです。 したがって、海外市場で成功するために必要なのは、そのデザインを完全に変えることではなく、その真正性と価値を理解し、認める消費者を見つけることかもしれません。

    また、海外でのマーケティング戦略にもそれを反映させる必要があります。 日本の伝統工芸品が単なる「モノ」ではなく、「文化」と「歴史」を表現する芸術作品であるというメッセージを伝える必要があります。 このような戦略により、工芸品が単なる機能的価値だけでなく、美的価値と文化的価値を併せ持つ製品として認識され、それに対する理解と尊敬が高まるでしょう。

    結局、日本の伝統工芸品が海外市場で成功するためには、その独特の文化的価値と魅力を維持しながら、各国の消費者が理解し、共感できる方法でその価値を伝えることが重要です。デザインの変化よりも、この点に重点を置くことが、伝統工芸品の世界的な認知度と価値を高めるために有効な手段なのです。

    サマリー

    日本人にとっては日常的で進歩的、あるいは自分には見えないデザインも、外国人にとっては新しく新鮮なデザインに感じることができるということです。 日本の芸術が持つ固有の美しさに西洋の視点を加えると、西洋人にとってはどこかで見たような既視感を与えてしまい、むしろ魅力が半減する可能性があるという意見です。日本の工芸品は、日本の芸術である以上、日本の芸術のアイデンティティを含んでいなければならず、日本の芸術のアイデンティティを含んでこそ、その工芸品は真の価値を持つことができると考えるのです。 工芸品の価値とは、単なるデザインだけでなく、その芸術に込められた文化や歴史、そして職人の心意気まで評価されなければならないからです。

    このような販売戦略をとるためには、日本の工芸品の価値を認めてくれる消費者を見つけることが最も重要です。どんなに素晴らしい作品であっても、その価値を認めてくれる消費者がいなければ売れないからです。 海外でターゲット顧客を見つける最も効果的な方法は、もちろん様々なマーケティング手段が存在しますが、作家自身が販売したい国に行き、自分の作品を知ってもらうことです。 足を運んで積極的に自分の作品を海外に知らせ、様々な展示会に自分の作品を出品できるようになれば、日本の工芸品の価値を認めてくれる消費者との出会いを得ることができるでしょう。

    海外市場に合うアレンジが必要だという視点

    堀田卓哉さんは、日本の伝統工芸を国内外に広く紹介するアーティストです。 彼は新人デザイナーと協力し、「Tokyo Crafts & Design」というプロジェクトでミュージアムショップグッズを制作し、イタリアの「ミラノサローネ」に出展しました。 しかし、これらの製品は多くの賞賛を受けましたが、実際に販売に繋がらなかったそうです。「 美しいけど、サイズが小さい」「芸術的だけど、売りにくい色かもしれない」などの反応があったそうです。

    彼はこの経験から、海外市場で成功するには、製品のローカリゼーションとそれに伴うポジショニングやマーケティング戦略に注意する必要があることを学んだそうです。例えば、江戸切子のような製品に高い関税が課せられ、バカラよりも高く売らなければならないような場合、海外市場での高い需要は期待できないということです。 芸術のオリジナリティよりも、経済性と海外の実情に合わせて製品を海外市場にポジショニングすることで、需要が生まれるという意見です。

    彼は作品に興味を示す100人に2時間かけて自分たちの製品作りについての話を伝えることが非常に重要だと強調しました。真心を込めてアプローチすることが重要であり、体験型販売戦略を考慮するのも良いと提案しました。 単に作品のデザイン性だけでなく、時間と手間をかけて作品に込められた誕生背景とストーリーテリングの両方を自分たちの作品に関心を持ってくれる消費者に納得させなければ、効果的な販売ができるということです。例えば、シェフが自分の料理を皿に盛って説明し、その場でお客さんが満足したらすぐに購入できる販売チャネルを作る方法が、彼が提示した効果的な販売戦略でした。

    また、日本の商品は価格競争では一般的に不利なので、富裕層をターゲットにしたペルソナに合わせた商品開発と直接販売できる方法を模索する必要があると述べました。 そのため、富裕層の好みに合わせて作品をアレンジしたり、作品の希少性を強調する戦略が効果的であると言います。 彼は伝統工芸品を海外に輸出するためには、国内販売戦略とは異なる方法を研究し、実行する必要があると強調しています。

    サマリー

    自身の販売に失敗した経験談から始まる彼の提案にも一理あります。一般的に日本の商品は価格競争で海外製品に比べ不利であるため、海外の消費者の好みや海外の文化をターゲットに製品を制作しないと、製品の価格競争力が著しく低下します。自分の作品の価値を認めてくれる消費者に出会うのをただ待つのではなく、作家自身がまず消費者の好みに合った作品を制作して消費者にアプローチすることが効果的な販売戦略だというのが彼の提案です。

    以上、日本の工芸品の海外販売方法に関する2つの意見についてまとめてみました。 どのような作品を制作し、どのように消費者にアプローチすべきかについては異なる意見でしたが、海外で作品を販売する作家の姿勢については、両者とも共通した答えがありました。それは、海外の消費者に作品が生まれた背景や作り手の思い、そしてストーリー性を十分にアピールし、消費者に作品の価値を認めてもらえるように努力することです。 また、海外の文化や流行、ファッション、そして情緒を考慮し、海外で販売する商品がそれにマッチしているかどうかを十分に検討しなければ、販売に失敗する可能性があることにも注意が必要です。 どのような戦略を取るにしても、重要なのは、作家や販売者自身が海外市場や海外の消費者を十分に理解し、積極的にアプローチすることであることは間違いなさそうです。

    工芸品を海外輸出する時の注意点

    海外市場への日本の工芸品の輸出にあたって、数多くの課題や注意点が存在します。これらのポイントを把握し、適切な対応を取ることで、スムーズで成功した輸出が実現できます。ここでは、日本企業が海外市場に工芸品を輸出する際に留意すべき要素を詳細に説明します。

    ①関税・輸入制限

    輸出を行う際、最初に調査すべきは関税および輸入制限です。輸出先国によっては、工芸品に関連する関税や輸入制限があり、これらを把握して事前の計画を立てることで円滑な取引が可能になります。

    ②物流の手配

    国際物流の選定と手配も重要です。海外輸出においては、適切な運搬方法や保管環境が要求されることから、信頼性のある物流業者と協力し、適切な手配を行うことが求められます。

    ③法規制・商慣習

    さらに、輸出先国の現地法規制や商慣行について知っておくことは不可欠です。日本とは異なる法規制や商慣行に適切に対応する必要があるため、現地の専門家や弁護士と連携することが望ましいです。

    ④アフターサービス

    品質管理やアフターサービスも重要なファクターとなります。海外輸出において、日本国内に匹敵する品質管理とアフターサービスを実現することで、顧客満足度向上やリピート率維持につながります。計画立案およびリソースの確保が重要です。

    ⑤マーケティング戦略

    最後に、海外市場における販路開拓とマーケティング戦略の重要性も忘れてはなりません。海外市場では、日本国内とは異なる競合状況や顧客ニーズが存在するため、適切な販路を確保し、効果的なマーケティング戦略を展開することが輸出成功への鍵となります。

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    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。