自動車部品の輸出はどうなってる?現状と問題点

 

目次

    日本の輸出のうち自動車は大きな割合を占めています。具体的に、日本自動車工業会によると、2019年の自動車の出荷額は15.9兆円であり、輸出総額全体の20.7%を占めていることが分かっています。また、2019年に日本で生産された四輪車のうち、約半分の481.8万台が輸出されており、輸出された四輪車の90.8%が乗用車であることが示されています。(図表1)

    図表1) 出典:日本自動車工業会

    2018年の統計によると、世界の主要国の四輪車輸出台数を見ると、日本の輸出台数(481.7万台)よりも多いのはフランス(637.6万台)だけであることが分かります。ドイツは日本に続いて421.2万台、米国が288.0万台、韓国が244.9万台、スペインが230.4万台、中国が104.0万台と続いています。これにより、日本の自動車産業が世界で戦う基幹産業であることが明らかになっています。(図表2)本記事では、自動車部品の輸出、現状、問題点をわかりやすくご説明します。

    図表2) 出典:日本自動車工業会

    自動車部品はなぜ分解して輸出?

    自動車の輸出には、完成車の輸出(CBU:Complete Build-up)以外にも、部品の輸出が非常に多く行われています。部品の輸出には、CKD(Complete Knock Down)とSKD(Semi Knock Down)の2種類があります。CKDは、部品単位で分解され、現地で複雑な工程が必要な塗装や溶接などが行われます。一方、SKDは、大きな構成部品は組み立て済みであり、簡単な加工のみで組み立てが可能です。なぜ自動車メーカーは完成車の輸出ではなく、部品を輸出して海外で組み立てる方法を選択するのでしょうか?これには、以下の3つの要因があると考えられます。

    ① 輸送効率:完成車は大きく、かさばるため、部品に比べて輸送コストが高くなってしまいます。また、部品は密度を上げて梱包することができるため、単位面積当たりで送ることができる数量を増やすことができます。さらに、品質トラブル対策も部品の方がしやすいため、損失のリスクを低く抑えることができます。

    ② 関税:自動車産業は裾野の広い産業であり、各国政府は自国の雇用や産業を守るために高い関税をかけています。完成車には高い関税がかかる一方で、部品には低い関税がかかる傾向があります。

    ③ コスト削減:また、新興国では自国に生産拠点を誘致することが活発化しており、人件費が安く、大きな市場に近い現地で組み立てることによって製造コストを下げることができます。このように、部品の輸出は企業にとって大きなメリットがあるため、自動車産業では一般的な手段となっています。

    自動車部品の輸出の6つの方法

    コンテナ輸出

    日本の中古車輸出業界は、中古自動車本体だけでなく、中古自動車部品の輸出も盛んに行われているのです。これらの部品は、海外市場でニーズがある場合にリサイクルされて活用されることで、不要な廃棄処分を避ける助けとなり、環境保護に寄与しています。海外市場では、新品部品を購入するのと比較して、中古部品を利用することでコスト削減にもつながります。

    コンテナ輸出における重要な注意事項

    輸出業者がコンテナで中古自動車部品を輸出する際、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。

    ① 中古自動車部品の関税は部品の種類によって異なります。高い税率が適用されるものや輸入が禁止されているものも存在するため、輸入業者は輸入規制や関税率を事前に調査し、取り扱いが可能かどうかを確認することが重要です。

    ② 第二に、コンテナに重量物のみを詰め込むと、重量制限を超過してしまう可能性があります。この問題を回避するためには、事前に個数を決定し、空いたスペースに軽量な部品を詰め込むことが必要です。

    ③ 最後に、部品だけでなく不要なゴミや鉄くずが混じっている場合があります。これにより、invoiceやpacking listの作成が困難になり、税関で問題が発生する可能性があります。税関検査の対象となった場合、コンテナの中のすべての物を取り出す必要があるため、高額な費用がかかることになります。したがって、正確な書類作成や管理が重要です。

    これらの点をふまえて、輸出業者はコンテナ輸送において事前準備や計画を十分に行うことが、無駄な経費やトラブルを避けるために重要です。

    航空輸送

    自動車部品の航空輸送は、時間の要素に重点を置いており、多くの自動車製造企業が採用しています。部品の迅速な入手により、製造コストと納期が短縮されます。その速さが緊急時に対応可能なため、有益な選択肢となっています。航空輸送では、梱包の重要性が増します。適切な箱・パレット・保護材を使い、環境条件も考慮して劣化を防ぎます。

    航空輸送はコストが高いですが、遅れずに部品が届くことで生産ラインが滞らず、企業への損失を最小限に抑えることができます。

    陸上輸送

    自動車部品の陸上輸送は、国内外の製造拠点や販売拠点へ部品を運ぶ重要なプロセスです。効率的な輸送手段を選択することで、コスト削減や納期の短縮が期待できます。主要な輸送方法はトラック、鉄道、パイプラインです。トラックは柔軟性が高く、短距離・長距離のどちらにも対応できる点がメリットです。一方、鉄道は大量輸送に適しており、長距離輸送ではコスト面で優位です。パイプラインは液体やガスの輸送に特化しており、自動車部品の輸送には適していません。

    代理店や貿易会社を通じた輸出

    自動車部品の輸出において、代理店や貿易会社を通じる方法が一般的です。これにより、現地の市場ニーズに応えることができ、効率的なビジネス展開が可能になります。また、代理店や貿易会社は現地の法規制や言語に精通しており、円滑なコミュニケーションが期待できます。これらの利点を活用し、業界の競争力を高めることが重要です。

    電子商取引

    自動車部品の電子商取引は、現代のビジネス環境において急速に成長している分野です。インターネットの普及により、消費者や企業は自動車部品をオンラインで簡単に購入できるようになりました。この方法は、従来の店舗での購入に比べて手間がかからず、時間も節約できるため、多くの人々にとって魅力的です。さらに、自動車部品の電子商取引では、顧客は商品の比較・検討が容易であり、価格や品質に関する情報も瞬時に入手できるため、賢明な選択を行いやすくなります。しかし、オンライン取引には欠点も存在します。例えば、詐欺や偽装品のリスクが伴います。そのため、信頼性のあるサプライヤーやプラットフォームを選択することが重要です。

    現地調達

    近年、海外での生産において、部品の調達先が輸出から現地調達に変化しています。日系自動車メーカーが海外に進出すると同時に、日本の部品メーカーも現地に工場を作り、製品を納入するようになりました。また、保護主義政策の強化に伴い、世界各国で現地調達率が重視されるようになりました。例えば、北米では自動車生産に対して、米国・メキシコ・カナダ協定により原産地比率を75%以上にするよう求められています。これにより、自動車メーカーは完成品を生産するだけでなく、サプライチェーンを築くことが戦略的に重要になってきています。

    現地調達における問題点

    そこで日本の自動車業界が直面する問題の一つに、海外生産における品質の維持があります。垂直統合型の「ケイレツ」関係により、自動車メーカーとサプライヤーが密接に取引を行っているため、海外生産においても同等の品質を維持することが求められます。しかし、海外での生産には、現地のサプライヤーとの取引や品質管理が必要であり、そのためには多くのリソースが必要になります。さらに、設備投資や代替の仕入先の手配なども必要になります。また、現地企業に生産を任せることには、技術やノウハウが流出するというリスクもあります。そのため、海外生産においては、慎重なリスク管理や品質管理が求められます。

    まとめ

    企業が海外市場への参入方法を選定する際には、数々の要素を精査することが不可欠です。新規に工場を設立するという選択肢を採用する場合、膨大な設備投資が必要となり、その結果企業経営に大幅な影響を及ぼすおそれがあります。このような決断は極めて困難であり、取り違えると企業の業績が大幅に悪化するおそれがあることから、注意深く検討を重ねることが重要です。

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