オーストラリアと日本は、世界経済において重要な貿易パートナーです。両国間の貿易は、経済成長と市場開放に貢献しており、製品やサービスの輸出入が盛んに行われています。
オーストラリアは主要な資源輸出国として知られ、2024年時点では鉄鉱石、石炭、液化天然ガス(LNG)が日本向け輸出の中心を占めています。日本はオーストラリアにとって輸出相手国の第2位であり、これらの資源は日本のエネルギーや製造業の基盤を支えています。
一方で、2022年の価格高騰を経て資源価格が落ち着いたことで、輸出収入の減少や市場構造の転換が進んでいます。
政府間の協力も深化しており、2015年に発効した日豪経済連携協定(JAEPA/EPA)を基盤に、近年ではクリーン水素や重要鉱物(リチウム・レアアースなど)といった新しい分野での連携が進展しています。こうした取り組みは、脱炭素化や経済安全保障を重視したサプライチェーンの構築につながっており、両国関係は次の段階へと発展しています。
本記事では、オーストラリアの貿易事情に関する最新情報やオーストラリアの貿易品目、貿易相手国、日豪の貿易関係について深掘りしていきます。
オーストラリア貿易・輸出の最新情報(2025年更新)

オーストラリアは日本の南に位置し、アジア太平洋地域における戦略的拠点の一つです。経済・外交の両面でアジア各国とのつながりが強く、近年は「インド太平洋地域」における連携の要としての役割も高まっています。
例えば、アジア太平洋地域21の国と地域が参加しているAPEC(アジア太平洋経済協力/Asia-Pacific Economic Cooperation)は、1989年に当時のオーストラリア首相ボブ・ホーク氏の提唱で設立された枠組みで、現在ではアジア太平洋地域21の国と地域が参加しています。
オーストラリアとの「日豪経済連携協定(日豪EPA)」とは
まず初めに、経済連携協定とは何かご存じですか。
経済連携協定とは2以上の国(又は地域)の間で、自由貿易協定の要素(物品及びサービス貿易の自由化)に加え、貿易以外の分野、例えば知的財産の保護や投資、政府調達、二国間協力等を含めて締結される包括的な協定です。日本は現在21カ国・地域と経済連携協定(EPA)を締結しており、オーストラリアとの協定は2015年に発効しました。
また、この協定は、日本とオーストラリアが互いに協力し合い、アジア太平洋地域の経済統合を進めることにも貢献しています。さらに、環境や知的財産権、雇用・労働条件などの分野でも協力を深めることを目指しており、両国間の関係をより強固なものにしています。
このように、「日豪経済連携協定(日豪EPA)」は、オーストラリアと日本間の経済関係をさらに発展させるための重要な枠組みであり、両国にとって多くの利益をもたらすことが期待されています。
2024年〜2025年の貿易動向と今後の見通し
2024年以降、資源価格の調整局面が続く一方で、クリーンエネルギーや重要鉱物といった新しい輸出分野への転換が進んでいます。政府は「オーストラリア・クリーン水素貿易プログラム(ACHTP)」などを通じ、日本を主要パートナーとするサプライチェーン構築を推進しています。
今後は、従来型資源に依存しない持続的な貿易構造への転換が焦点となるでしょう。
2024年7〜9月のオーストラリア貿易事情
オーストラリア統計局(ABS)の最新データによると、2024年第3四半期(7〜9月)の財・サービス貿易収支は黒字を維持しました。財の輸出額は前期比1.2%減の1,263億8,500万豪ドルとなり、鉄鉱石や石炭の価格調整による減少が影響しました。
一方で、輸入額は1,215億豪ドル前後(前期比0.5%増)とわずかに増加しており、国内需要の底堅さがうかがえます。結果として、貿易収支は46億豪ドルの黒字を維持しました。
品目別の分析
輸出面では、主要品目の鉄鉱石が0.9%減、石炭が11.9%減、液化天然ガス(LNG)も国際価格の下落により減少しました。これらエネルギー資源の価格変動はオーストラリアの輸出収益に直接影響を与えています。一方、非資源分野では、農産品や金属加工品の輸出が堅調に推移しています。
輸入面では、自動車や食品・飲料の需要が引き続き強く、特に自動車輸入は5四半期連続で増加しました。消費財全体でも堅調な伸びを示し、内需の回復が経済を支えています。
オーストラリアの貿易動向を理解するうえでは、資源輸出の構造変化や戦略的資源の位置づけも把握しておくことが重要です。
オーストラリアの鉱物・資源戦略2025を深掘りした以下の記事をご覧ください。

また、観光や教育分野を中心としたサービス輸出が回復基調にあります。国境再開以降、留学生や観光客の戻りが進み、サービス収支の改善が進行しています。
オーストラリアの主な貿易品目

さて、オーストラリアの輸出入品目と聞いて、皆様はどのようなものを思い浮かべるでしょうか。オーストラリアといえば、やはり世界有数の資源大国のうちの一つです。詳しくは以下を見ていきましょう。
オーストラリアの主要輸出品目(2024年)
| 順位 | 品目 | 金額(百万豪ドル) | 構成比 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 鉄鉱石 | 124,545 | 24.1% | −8.6% |
| 2位 | 石炭 | 85,170 | 16.5% | −17.5% |
| 3位 | 天然ガス(LNG) | 67,465 | 13.0% | −9.2% |
| 4位 | 非貨幣用金 | 35,702 | 6.9% | +25.9% |
| 5位 | 牛肉 | 14,038 | 2.7% | +22.5% |
| 6位 | ボーキサイト(アルミナ含む) | 12,924 | 2.5% | +31.3% |
| 7位 | 原油 | 10,644 | 2.1% | −7.2% |
| 8位 | 小麦 | 8,435 | 1.6% | −39.6% |
| 9位 | 肉(牛肉除く) | 7,101 | 1.4% | +15.1% |
| 10位 | 銅鉱 | 6,544 | 1.3% | −2.0% |
| — | その他合計 | 144,438 | 28.9% | — |
| 合計 | 517,016 | 100.0% | −7.5% |
2024年のオーストラリア輸出は、鉄鉱石・石炭・天然ガスの主要3品目で全体の約54%を占めましたが、いずれも価格下落の影響で減少しました。
特に鉄鉱石は中国向けが約84%を占め、中国・日本・韓国での需要鈍化が全体の落ち込みにつながりました。一方で、非貨幣用金やボーキサイト、牛肉といった品目が好調で、資源価格の下落を一部補う形となりました。
全体では前年比−7.5%と減少したものの、輸出の多様化に向けた動きが少しずつ進みつつあります。
オーストラリアの主要輸入品目(2024年)
| 順位 | 品目 | 金額(百万豪ドル) | 構成比(%) | 前年比(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 石油精製品 | 47,345 | 11.0 | −6.7 |
| 2位 | 乗用車 | 35,758 | 8.3 | −1.5 |
| 3位 | 通信機器・同部品 | 17,072 | 4.0 | −1.9 |
| 4位 | 貨物自動車 | 16,797 | 3.9 | −5.5 |
| 5位 | コンピュータ | 12,649 | 2.9 | +20.9 |
| 6位 | その他電気機械・同部品 | 9,956 | 2.3 | +46.9 |
| 7位 | 非貨幣用金 | 9,878 | 2.3 | +15.3 |
| 8位 | 薬剤(家畜用含む) | 9,081 | 2.1 | −0.9 |
| 9位 | 医薬品(薬剤除く) | 7,932 | 1.8 | +1.2 |
| 10位 | 原油 | 7,751 | 1.8 | −2.1 |
| 11位 | 土木重機・同部品 | 7,078 | 1.6 | −13.7 |
| 12位 | 家具 | 5,993 | 1.4 | +12.3 |
| 13位 | 冷暖房器具・同部品 | 5,991 | 1.4 | +50.1 |
| 14位 | その他自宅用電気機器 | 5,288 | 1.2 | +15.4 |
| 15位 | その他プラスチック製品 | 5,115 | 1.2 | +9.8 |
| 合計(その他含む) | 429,923 | 100.0 | +3.9 |
2024年のオーストラリアの輸入は、家電関連(冷暖房器具・電気機械など)が軒並み前年比110〜150%台と大幅に伸び、内需拡大や住宅需要の影響が見られました。
一方で、石油精製品や貨物車、土木機械などの資源・建設関連分野は90%前後に減少し、エネルギー依存からの脱却傾向を示しています。
全体の輸入総額は前年比103.9%と、緩やかな拡大基調を維持しました。
オーストラリアの主な貿易相手国

これまでオーストラリアの主な貿易品目に関して見てきましたが、オーストラリアの貿易相手国はどのような国があるのでしょうか。以下で見てみましょう。
オーストラリアの主要輸出相手国(2024年)
| 順位 | 国・地域 | 輸出額(百万豪ドル) | 構成比 | 前年比(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 中国 | 179,232 | 34.7% | −12.3 |
| 2位 | 日本 | 72,638 | 14.0% | −17.3 |
| 3位 | 韓国 | 39,166 | 7.6% | −6.3 |
| 4位 | ASEAN諸国計 | 65,470 | 12.7% | −4.5 |
| └シンガポール | 18,445 | 3.6% | +6.8 | |
| └インドネシア | 13,375 | 2.6% | +6.3 | |
| └ベトナム | 10,510 | 2.0% | −13.0 | |
| └マレーシア | 11,048 | 2.1% | −2.7 | |
| └タイ | 7,018 | 1.4% | −23.2 | |
| 5位 | インド | 25,055 | 4.8% | −1.5 |
| 6位 | ニュージーランド | 12,775 | 2.5% | −0.1 |
| 7位 | 米国 | 24,355 | 4.7% | +13.5 |
| 8位 | 英国 | 9,717 | 1.9% | +62.8 |
| 9位 | EU(27か国) | 17,300 | 3.3% | −3.1 |
| 10位 | 中東諸国 | 14,444 | 2.8% | +5.7 |
合計:517,016百万豪ドル(前年比 −7.5%)
2024年のオーストラリアの輸出先は引き続きアジア中心で、中国・日本・韓国・ASEAN諸国で全体の約70%以上を占めています。中国・日本向けの資源輸出が減少した一方、米国や英国向けが大きく伸び、地理的・品目的な多様化が進みつつあります。
オーストラリアの主要輸入相手国(2024年)
| 順位 | 国・地域 | 輸入額(百万豪ドル) | 構成比 | 前年比(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 中国 | 110,419 | 25.7% | +5.4 |
| 2位 | ASEAN諸国計 | 78,887 | 18.3% | +4.5 |
| └シンガポール | 15,051 | 3.5% | −7.2 | |
| └インドネシア | 8,416 | 2.0% | +49.3 | |
| └ベトナム | 11,831 | 2.8% | +19.9 | |
| └マレーシア | 17,333 | 4.0% | −7.0 | |
| └タイ | 20,207 | 4.7% | +4.4 | |
| 3位 | 日本 | 25,236 | 5.9% | −3.7 |
| 4位 | 韓国 | 24,316 | 5.7% | −7.8 |
| 5位 | 米国 | 51,752 | 12.0% | +8.5 |
| 6位 | EU(27か国) | 64,022 | 14.9% | +2.2 |
| 7位 | 英国 | 7,746 | 1.8% | −4.0 |
| 8位 | インド | 11,474 | 2.7% | +26.6 |
| 9位 | ニュージーランド | 7,513 | 1.7% | +1.1 |
| 10位 | 中東諸国 | 7,230 | 1.7% | +22.1 |
合計:429,923百万豪ドル(前年比 +3.9%)
2024年の輸入は引き続きアジア依存が高く、中国・ASEAN・日本・韓国で全体の過半を占めています。特にインドネシアやベトナムなど東南アジア諸国からの輸入が大幅に増加し、電機製品や繊維製品の供給拠点としての存在感が拡大しています。一方で、日本や韓国からの輸入はやや減少し、為替変動や需要調整の影響が見られました。
オーストラリアの貿易ネットワークをより広い視点で理解するためには、他の主要新興国との比較も有効です。
ブラジル貿易・輸出の基礎知識(2025年更新)については以下の記事をご覧ください。

日本 – オーストラリア間の貿易について

日豪貿易はどのような現状なのでしょうか。日本とオーストラリアは補完関係にあり、貿易相手国として相性が良いと言われています。詳しく見ていきましょう。
歴史的な背景
オーストラリアと日本の経済関係は、両国の異なる強みとニーズの相補性に基づいています。オーストラリアは、食品、エネルギー、鉱物資源において信頼性の高い供給源であり、同時に金融や他のサービス分野でも世界的に評価されています。
日本は1970年代初めからオーストラリアにおける最大の貿易相手国であり、その地位を26年間にわたって維持しています。日本からの投資はオーストラリア経済の発展に重要な役割を果たし続けています。
日本からオーストラリアへの主要輸出品目(2024年)
| 順位 | 品目 | 輸出額(百万豪ドル) | 構成比 | 前年比(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 乗用自動車 | 12,328 | 48.9% | −0.8 |
| 2位 | 貨物自動車 | 3,131 | 12.4% | +15.8 |
| 3位 | 石油精製品 | 1,944 | 7.7% | −24.6 |
| 4位 | 土木重機・同部品 | 995 | 3.9% | −20.9 |
| 5位 | タイヤ | 989 | 3.9% | +9.0 |
| 6位 | 自動車部品・付属品 | 380 | 1.5% | +9.8 |
| 7位 | 無機化学元素 | 255 | 1.0% | −24.7 |
| 8位 | その他電気機械・同部品 | 231 | 0.9% | +1.3 |
| 9位 | 内燃ピストンエンジン | 231 | 0.9% | −12.9 |
| 10位 | 事務用機器 | 218 | 0.9% | +9.5 |
| — | その他合計 | 4,534 | 18.0% | — |
| 合計 | 25,236 | 100.0% | −3.7 |
2024年の日本からオーストラリアへの輸出は25,236百万豪ドルで、前年から3.7%減少しました。自動車関連製品が依然として全体の6割以上を占めており、とくに貨物車や部品の伸びが堅調でした。
一方で、石油製品や重機関連の落ち込みが全体を押し下げています。
オーストラリアから日本への主要輸出品目(2024年)
| 順位 | 品目 | 輸出額(百万豪ドル) | 構成比 | 前年比(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 石炭 | 27,092 | 37.3% | −23.9 |
| 2位 | 天然ガス(LNG) | 22,782 | 31.4% | −14.9 |
| 3位 | 鉄鉱石 | 7,314 | 10.1% | −8.4 |
| 4位 | 非公開項目 | 2,759 | 3.8% | −48.5 |
| 5位 | 牛肉 | 2,052 | 2.8% | +12.1 |
| 6位 | アルミニウム | 1,308 | 1.8% | +9.3 |
| 7位 | 液化石油ガス(LPG) | 961 | 1.3% | −13.7 |
| 8位 | 砂糖・糖蜜・蜂蜜 | 803 | 1.1% | −17.1 |
| 9位 | 採油用種果実 | 802 | 1.1% | −20.6 |
| 10位 | 銅鉱 | 644 | 0.9% | — |
| — | その他合計 | 6,121 | 8.4% | — |
| 合計 | 72,638 | 100.0% | −17.3 |
2024年のオーストラリアから日本への輸出は72,638百万豪ドルで、前年から17.3%減少しました。主力の石炭・天然ガス・鉄鉱石で全体の約79%を占めており、資源価格の下落が輸出額減少の主因です。
一方で、牛肉やアルミニウムなど非資源分野は堅調で、構造的な多様化の兆しも見られます。
まとめ
オーストラリアは鉱産資源や農産物に恵まれた資源大国で、石炭・鉄鉱石・天然ガス・原油・小麦・牛肉・ボーキサイトなどが主要な輸出品です。
輸出手続きでは、農産品など特定品目に検査や認証、輸出許可が必要となり、正確なHSコードの分類や輸出書類の作成、物流や保険対応まで多くの準備を求められます。
加えて、オーストラリア特有の法制度や規制を理解しなければ、通関や輸送の段階でトラブルが発生する可能性もあります。
こうしたリスクを避け、円滑に輸出を進めるためには、一度専門家に相談することをおすすめします。



