アパレル海外展開の考え方、日本と海外の違いとは?

アパレル業界は、グローバルな市場での競争が激しくなっています。多くの企業が海外展開を模索しており、新たな市場での成功を目指しています。しかし、海外展開を初めてするにあたって、「日本での事業展開と海外では何が違うのか」「何から手を付ければよいか分からない」等、多くの不安を抱えている方が多いです。

本記事では、アパレル関連で海外展開を考えている読者を対象に、海外展開の考え方や日本と海外の違いについて解説します。さらに、具体的なビジネス例を挙げながら、海外展開におけるアパレル事業の始め方をわかりやすく説明します。

日本ブランドと海外ブランドの違い

日本のアパレルブランドと海外ブランドでは、組織の形態や職種に大きな違いがあります。アパレルブランドには「日本ブランド」と呼ばれる国内で企画されたブランドと、「海外ブランド」として日本に進出したブランドが存在します。
同じファッション企業でも、日本と海外では商品の生産過程において大きな違いがあります。そのため、人材などの企業体制も大きく異なるのです。

海外のファッションブランド

一般的に、海外ファッションブランドは外資系企業(ジャパン社)として知られています。彼らは主に商品を海外から輸入して販売しています。つまり、ものづくりの職種は存在しません。
商品企画を日本で行うことは非常に珍しく、デザインや生産の拠点は海外に設けられ、全ての決定はそこで行われます。また、外国からの顧客が多いだけでなく、外資系企業であるため、社内でも英語が必要です。求められる能力も、日本ブランドとは大きく異なるのです。

代表的な海外ブランドには、エルメス、グッチ、ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオールなどのラグジュアリーブランドや、ZARAやH&Mなどのファストファッションブランドがあります。

日本のファッションブランド

一方、日本のアパレルブランドの多くは、商品の企画から生産、販売までを一貫して手掛けています。国内や自社内でのものづくりが行われており、日本ブランドではデザイナーやパタンナーなど、商品を作り出す職種が存在します。国内でのものづくりを行っているため、顧客や店舗スタッフからの声や意見が企業内に反映され、直接ものづくりに生かされることが多いのです。

アパレルの海外展開では、市場調査や規制対応だけでなく、現地文化に合わせたブランド戦略が成功の鍵となります。国内と同じ手法では通用しにくいため、柔軟な適応とパートナー選びが重要です。

日本ブランドの強みを海外で活かすには「現地顧客の嗜好」と「購買環境の違い」を理解することが重要です。海外でのアパレル展開の全体像やリスクは、アパレル貿易については以下の記事をご覧ください。

アパレル海外展開の必要となるステップと留意点

アパレルを海外で展開する際は、国内と同じ戦い方では成果につながりません。市場の規模や消費者の好み、商習慣は国ごとに大きく異なるため、前提となる情報収集と準備が不可欠です。

以下では、実践に向けて押さえるべき具体的なステップと注意点を整理します。

市場の特性を理解する

海外展開を考える際には、まず対象となる市場の特性を詳しく調査することが重要です。市場の規模、成長性、消費者の嗜好や文化的背景などを把握することで、需要の予測や商品・ブランドの適応度を判断することができます。また、競合他社の事例や地域のトレンドにも目を向け、マーケットインサイトを得ることが重要です。

地域の法律や規制を理解する

海外展開では、各国の法律や規制に準拠することが必要です。労働法や消費者保護法、輸入・輸出の関税や税制など、地域ごとに異なる要件や制約が存在します。地元の専門家や現地法人のサポートを活用し、現地の法的要件について理解を深めることが重要です。

ローカルなパートナーを見つける

海外展開においては、地域の文化や商慣行を熟知したローカルなパートナーを見つけることが成功の鍵となります。現地のディストリビューターやエージェント、卸売業者など、地域に密着したネットワークを持つパートナーとの提携は、市場進出の効率化やリスク軽減につながります。
パートナーシップにおいては、相互の価値観やビジョンの一致が重要な要素となるため、選定プロセスを慎重に行いましょう。

ブランドのローカライゼーション

海外展開にあたり、ブランドのローカライゼーションは欠かせません。海外市場では、言語や文化の違いにより、商品やブランドのメッセージを適切に伝える必要があります。例えば、ロゴやパッケージのデザイン、商品のカラーバリエーションやサイズ展開、広告やキャンペーンの内容など、地域に合わせたアレンジを行うことで、消費者に訴求力のある商品を提供することができます。

マーケティング戦略の適応

海外展開におけるマーケティング戦略は、国内展開とは異なるアプローチが求められます。広告媒体やプロモーション手法、販売チャネルなど、地域ごとに異なる特性に対応する必要があります。例えば、SNSやインフルエンサーマーケティングが盛んな地域では、デジタルプラットフォームを活用した戦略を展開することが効果的です。
現地のマーケティングエキスパートやコンサルタントのアドバイスを仰ぎながら、マーケティング戦略を適応させることが重要です。

海外展開では、市場特性の理解やブランドの適応に加え、コスト構造を正確に把握することが欠かせません。特に仕入れ時の課税や輸入時の負担は利益率に直結するため、個人輸入の関税については以下の記事をご覧ください。

その他の方法

既に述べた手順を踏まずとも、自社ブランド製品を海外展開する方法があります。それは、越境ECを利用する方法です。

ネット上でブランド商品を販売することで、現地に向けた人材派遣・育成や店舗展開の必要が無く、地理的制約を受けずに事業展開することが可能です。店舗展開の必要がないことから、コストを抑えられる点も大きな魅力と言えるでしょう。

まとめ

アパレルの海外展開は、新たな販路獲得の機会である一方で、国内と同じ手法では成果が出にくい領域です。市場規模や購買行動、文化的価値観は国ごとに大きく異なり、価格帯・サイズ展開・デザイン・販売チャネルなど、事業の前提そのものを再設計する必要があります。

加えて、労働法や知的財産、輸入規制などの法的要件も国ごとに変わるため、初期段階から情報収集と体制構築を進めることが重要です。

本記事では、市場調査のポイント、ローカルパートナーとの連携、ブランドのローカライゼーション、マーケティング戦略の適応など、実務で押さえるべきステップを整理しました。海外展開は短距離走ではなく、継続的な学習と修正の積み重ねにより成果が生まれます。自社の強みやブランド資産を守りながら、現地に寄り添った戦略を描くためにも、一度専門家に相談することをおすすめします

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