海外展開における商社の役割とは?

海外展開を検討する企業にとって、最大のハードルは「販路」「決済」「法規制」「信頼」の4つです。製品に自信があっても、現地に実績やネットワークがなければ、商談の不成立、未回収リスク、物流トラブル、規制違反などに直面しやすく、途中で撤退してしまうケースも少なくありません。こうした不確実性を低減し、輸出の成功率を高める存在が商社です。

商社は単なる仲介者ではなく、商取引・物流・資金調達・市場情報・法務コンプライアンスまでを一貫して担う“海外展開の伴走者”です。メーカー単独では難しい取引条件の交渉や、現地バイヤーの信頼獲得、資金回収、規制対応までカバーすることで、企業が自社の製造・商品開発に集中できる環境をつくります。

本記事では、商社の主要な役割、企業が受けられる具体的な支援、そして商社を利用できない場合の注意点をわかりやすく整理します。初めて海外展開に挑戦する方でも、商社の活用イメージを掴める内容です。

商社の役割

日本で製品を生産して海外で売る場合、主に①日本の商社を通じて現地に流通させる、②海外の販売代理店と直接取引するといった方法があります。

今回は①日本の商社を通じて現地に流通させる場合に絞って、海外展開における商社の役割を解説していきます。

商取引

商社の基本的なビジネスモデルとなっているのが商取引です。商社は、メーカーと違い、自社で商品を製造することはありません。売り手の販売機会の拡大と、買い手のニーズを満たすことを可能にしています。商取引といっても、ただ商品を横流ししているわけではありません。

国内国外問わず、各メーカーの製品理解、原材料の調達などが必要となってきます。そういった、原料の加工や、部品の製造という付加価値をつけて商品の取引を行っています。そのための物流サービスの提供や、販売戦略の考案、商品の広告PRにも携わって行くことになります。

メーカーと販売業者の間に立って流通を拡大させる必要があるため、販売業者や顧客との綿密なコミュニケーションが欠かせない職業になっています。

ファイナンス

商社は、商取引以外にもファイナンス事業も行っていることが多いです。商取引で起きてしまった金融トラブルに迅速に対応するためです。メーカーや販売業者で為替変動や資金不足といったトラブルが起きた際、商社が対応します。

この際にも、メーカーと販売業者の融資や保険機能を受け持ったり支払期日の設定などの相談を受けたりすることもあります。こういったことは、商社が円滑に事業を行っていくうえでも欠かせません。

海外展開では、商社が担う仲介・調整・金融支援などの役割を理解しておくことが重要です。
海外進出の落とし穴3選 については以下の記事をご覧ください。

事業投資

事業投資も、商社の業務として挙げられます。例えば、ある総合商社は、大手コンビニエンスストアに対して事業投資を行っています。商社から社員が出向しており管理体制に携わることで人材の供給や、商社の大規模なネットワークを生かした情報の提供といった支援を行っています。

店頭に並ぶ日用品や、食品にも原料が必要です。その原料を供給する店舗としてコンビニはうってつけの場所というわけです。コンビニに事業投資をすることで、コンビニの企業価値を上げ、業績を成長させることができます。

また、事業投資している商社や、コンビニに卸されている食品や日用品の食品加工業者や日用品製造業者も業績を伸ばすことができ、お互いにとってwinwinな関係を築くことができます。

市場情報提供とリサーチ

商社は、海外市場のトレンドや競合情報などを収集し、企業に提供する役割を果たします。これによって、企業は適切な戦略を立てるための情報を得ることができます。さらに、商社は、製品やサービスに関するカスタマーサポートを提供することで、顧客満足度を向上させます。異なる文化や言語に対応することも含まれます。

法務と規制遵守

異なる国々には異なる法律や規制が存在します。商社は、企業がこれらの法律や規制に適切に従い、コンプライアンスを守るための支援を提供します。また、国際ビジネスには為替リスク、政治的リスク、市場変動などのさまざまなリスクが伴います。商社は、これらのリスクを分析し、適切な対策を講じることで、企業のリスクを軽減する役割を果たします。

商社は貿易の仲介だけでなく、商取引、ファイナンス、事業投資、市場リサーチ、法令遵守といった多面的な機能を果たし、メーカーの海外展開を包括的に支援します。

商社を利用できない場合

商社を利用できない場合、自社で海外の販売代理店と直接取引する必要があります。そのためには自社製品の理解をしてもらうことが重要になってきます。また、言語の壁もあり現地の人との交渉に課題がある企業が多数いるのも事実です。また食品などの分野では輸出に制限がかかる場合もあり、自社で貿易を行うのはハードルが高く日本全体でも課題となっています。

商社を介さず直接取引する場合、交渉・物流・規制対応を自社で担う必要があり、特に初心者企業には大きな負担となります。
中小企業の海外展開の実態 については以下の記事をご覧ください。

まとめ

商社は、売りたい企業や国と買いたい企業や国をつなぐ仲介役としての機能を持ち、その役割は単なる取り次ぎにとどまりません。市場調査や情報収集を通じ、新たなビジネス機会を創出し、物流や資金融通の提案を通して取引をスムーズに進める支援も行います。

さらに、ITを活用した取引効率化や、金融保証によって信頼性を高める機能も備えています。商社には多種多様な品目を扱う「総合商社」と、特定分野に特化する「専門商社」があり、それぞれの強みを活かして企業の海外展開を支えています。

貿易実務を安心して進めるためには、一度専門家に相談することをおすすめします

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