新興国の輸出はどうなっている?市場の魅力・注意点

 

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    国内市場の縮小や新興国の急成長にともない、昨今、海外進出を考える企業は多くなってきました。しかし、事業の海外進出を考える際には、市場ごとの特徴をおさえておくことが必要不可欠です。そんな中で、最近多く注目を集めているのは成長がめざましい新興国市場です。新興国市場はまだ規模が小さく、不安要素の多い市場ですが、人口や資金の増加による経済成長は目を見張るものがあります。本記事では未来への期待の大きい新興国市場における輸出の魅力、注意点について紹介していきます。

    新興国市場とは?

    初めに、新興国市場とは、人口が増加傾向にあり経済成長が期待される国の市場のことです。人口が増加していく国では消費が増え始めるため、お金の循環が良くなり、それに連れて経済が発展し、国が成長していきます。最近ではBRICsやVISTA、ネクスト11のように経済成長の著しい国をグループにして呼ぶことがあります。これらのグループに属する国々は現在成長中であり、10年後20年後の世界を背負っていくことが期待されています。

    BRICsとはブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の頭文字を集めた造語です。これら4カ国は2000年以降にめざましい経済の発展を遂げ、2011年からは南アフリカもこのグループに参加しており、名称もBRICSと、sが大文字に変化しました。2039年頃には、BRICSのGDPは米日独仏英伊の6カ国の合計GDPを上回ることが想定されています。BRICSの国々の共通点は国土の広さ、天然資源の豊富さ、労働力の大きさです。これからの世界を支えていくことになる一方で、エネルギーの需要が大きくなり、世界的な原油価格の高騰や食糧不足に大きく影響を与えることが現在予想されています。

    VISTAとはベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンの5カ国の頭文字を合わせた造語で、BRICsに続いて経済発展が大きくなる新興国グループとして評価されています。人口が増加の一途をたどり、消費の多い中産階級の割合が大きいことが特徴として挙げられます。また外貨導入にも積極的であるため、VISTAの5カ国に進出する外資系企業も増加しています。しかし、経済成長がめざましい一方で、国内情勢が不安定になりやすい点があります。

    ネクスト11も経済成長が期待されている新興国市場のひとつで、ネクスト11にはイラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラディシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコの11ヵ国が所属しています。韓国は先進国と同様の評価を国際社会で得ていますが、韓国以外の国々では国内情勢や通貨の価値が変動しやすいなど懸念があります。成長は間違いないものの、不安要素も大きい国々です。

    新興国市場に輸出するメリット

    ①急成長し多様性に富む市場

    新興国市場の特徴として、成長率の大きさと多様性に富んでいることがあげられます。人口が右肩上がりに増加していくため、消費は拡大していき、参入当時市場規模が小さくとも、時間の経過とともに人や資本が流入してくることが予想されます。それにともなって市場は拡大し成長していきます。またグローバル化の影響も受け、国内外からの人や資本の流入が多くなることも考えられます。市場拡大していくと扱われる商品も増えていき、市場は多様性に富んでいきます。

    ②成長する経済圏での利益確保

    新興国市場で利益を確保できることはとても大きな特徴かつメリットです。初めこそ市場規模は小さく、市場の成長や国内情勢など不安な要素は多いですが、市場の成長とともに利益も拡大していきます。成長市場は国内外から人や資本が集まりやすいため、同じ労力やコストであっても他の市場よりも大きな利益をあげられることが多いです。また競合も少なく、利益を確保しやすい特徴があります。参入当初こそ賭けの要素が大きいものの、それに見合ったリターンも期待できるでしょう。

    ③人件費や原材料費などのコスト削減

    上記に記載したように、新興国の特徴として人口が増加していること、天然資源が豊富であることが挙げられます。したがって、人件費や原材料費などのコストが削減できる点が新興国市場の大きな特徴となります。新興国では先進国と比べて人件費が安いです。さらに人口が増加の一途をたどっているので労働力の確保に困ることはなくなります。したがって優秀な現地の人材を確保することが重要です。また新興国では天然資源が豊富であることが多く、資源の輸出が貿易の中心となっている国も多いです。輸入分のコストがかからないので日本よりも安く資源を利用できます。

    新たな顧客層の開拓

    新興国市場への進出は、新たな顧客層にアクセスする機会を提供します。これらの市場には通常、中間所得層や消費者が急増しており、製品やサービスへの需要が高まっています。新たな顧客層を開拓することで、売上を拡大し、収益を増加させる可能性があります。また、これらの市場での成功は、長期的な顧客関係を築くことにつながり、持続的な成長を支えます。

    競争力の向上

    新興国市場はしばしば競争がまだ緩やかであるため、企業は競争力を発揮しやすい状況があります。市場への早期進出や独自の価値提案を通じて、競合他社よりも優位性を築くことができます。また、市場の特性に合わせて製品やサービスをカスタマイズすることで、競争上の優位性を獲得できます。

    多様性とリスク分散

    新興国市場への進出は、企業にとってリスク分散の手段として機能します。特定の国や地域に依存することなく、さまざまな市場で事業を展開することで、リスクを軽減できます。経済的なショックや市場変動が発生した場合、多様な市場での事業活動は企業を安定させる役割を果たします。

    ⑦技術移転とイノベーション

    新興国市場への進出は、技術とイノベーションの相互交流を促進します。現地のパートナーや競合他社から学び、自社の製品やプロセスに適用することができます。また、新しい市場での競争は、企業に対して常に新しいアイデアや改善を追求する刺激を提供します。新たな市場での要件や挑戦に対処するために、革新的なソリューションを見つけることができます。

    ⑧ブランド価値の向上

    新興国市場での成功は、国際的なブランド価値を高めるのに役立ちます。地域的な市場での実績を積み重ねることで、信頼性や認知度を向上させることができます。消費者は、国際的なブランドに対して信頼を抱くことが多いため、新興国市場での成功は国際的な市場での信用を高める助けになります。

    ⑨人材の獲得と育成

    新興国市場での展開は、地元の人材を採用し、育てる機会を提供します。地元の専門知識や市場洞察を持つ従業員を雇用することで、事業の適応力を高めることができます。また、地元の労働力を育てることは、企業の社会的責任を果たす一環としても重要です。

    新興国市場に輸出する際の注意点

    新興国の市場には様々なビジネスチャンスがある一方で、リスクも存在します。以下がそれ例です。

    ①市場・経済のリスク

    一つ目は、市場・経済のリスクです。新興国の市場や経済は成長が著しい一方で、変動しやすいというリスクも存在します。新興国の市場や経済は先進国に比べ、規模が小さいため、海外からの多額の資金の流入や流出があった場合には大きく変動します。また国内の有力な投資家も少なく、資本の多くが海外の投資家に握られているため、自国で経済や市場を管理しきれず、不安定な状況が続いているのも事実です。新興国市場では国内だけでなく海外の影響も考慮する必要があることを覚えておきましょう。

    ②政治状況に伴うのリスク

    新興国特有のもう一つのリスクは国内情勢が不安定であることです。具体例として、ミャンマー政権が軍に乗っ取られたことやインドやパキスタンでの空爆などが挙げられます。新興国では政権交代による影響がとても大きく、政権交代後、派閥の変化により前政権とは方針の異なる改革が行われる可能性もあります。また新興国諸国では政治に対する不満に対してデモが発生することが非常に多いため、デモがストライキにつながり、経済活動に影響を与える可能性もあります。

    また、上記で説明したカントリーリスクに加え、新興国以外でも発生しうるセキュリティリスクとオペレーショナルリスク(事業運営におけるリスク)も存在します。ビジネスリスクの分野と具体例をまとめた資料を参照することで、それぞれの分野においてどういったリスクが考えられるか理解しやすくなります。

    法的規制の複雑性

    新興国市場では法的規制が複雑で、変更が頻繁に行われることがあります。特に外国企業に対する規制や貿易関連の法律は複雑で、理解するのが難しいことがあります。法的コンプライアンスに違反すると、罰金や事業停止のリスクが生じる可能性があるため、適切な法的アドバイスを受けることが重要です。

    インフラストラクチャーの不足

    一部の新興国では、インフラストラクチャー(交通、通信、電力など)が不足していることがあります。これは製品の供給チェーンや物流に影響を及ぼす可能性があります。運送が遅延し、商品の損傷や紛失のリスクが高まることがあります。企業はこれらの課題に対処するための効果的な戦略を開発する必要があります。

    人材のスキルと教育不足

    新興国での人材獲得とスキル育成には課題があります。適切なスキルや教育を受けた労働力を見つけることが難しい場合があり、その結果、生産性や品質管理に課題が生じることがあります。企業は教育機関と提携したり、独自のトレーニングプログラムを導入したりして、人材のスキルを向上させる必要があります。

    長期の投資

    新興国市場での成功には、通常、長期の投資が必要です。市場の開拓やブランドの確立には時間がかかり、収益が最初から見込めるわけではありません。企業は慎重な財務計画と予算策定を行い、市場投資に関連するリスクを考慮する必要があります。また、急速な成功を期待せず、持続可能な成長を目指すことが重要です。

    まとめ

    本記事では、成長の期待が大きい新興国市場における輸出の魅力、注意点について紹介してきました。新興国市場は多様性に富んでいて、利益を確保しやすく、またコスト削減もできる非常に魅力的な市場でありながらも、リスクを伴う市場であるということをお分かりいただけたでしょうか。しかし、上記にも記載したように、各国の特徴に合わせたリスクマネジメント方法を的確に採用することで、様々なリスクを避けられます。事前に調査をし、参入リスクなどを知った上で計画的に新興国市場に進出していきましょう。

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    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。