2025年に迎えた国交正常化60周年を経て、日韓関係はいま、新たな局面を迎えています。かつて歴史認識や領土をめぐる対立がしばしば表面化し、関係改善が進みにくかった両国ですが、2026年現在は「未来志向の協力関係」を軸とした再構築の動きが強まりつつあります。
背景にあるのは、東アジア全体を取り巻く地政学的な緊張の高まりや、両国が共通して抱える社会・経済課題の深刻化です。日本では高市早苗政権が、韓国では李在明政権がそれぞれ誕生し、明確な国家ビジョンと現実的な対外政策を掲げる指導者同士の対話が本格化しています。両首脳は安全保障や経済、安全保障におけるサプライチェーン強化、さらには若者交流といった広範な分野での協力を確認し、2026年1月には17年ぶりとなる共同合意文書の発出に至りました。
こうした一連の動きは、日韓関係が単なる近隣国同士の関係性を超え、民主主義・市場経済という共通の価値を基盤とした「戦略的パートナー」へと移行していることを意味します。一方で、歴史問題や領土問題といった根深い課題が完全に解消されたわけではなく、今なお関係の安定性に影を落としています。
本記事では、2026年1月現在における日韓関係の現状を、多角的かつわかりやすく解説し、今後の展望についても読み解いていきます。
歴史から紐解く日韓関係の現状とその背景

日韓関係を語るうえで、歴史的な経緯を抜きにしては全体像をつかむことはできません。2026年1月現在、両国は未来志向の関係構築に動き出しているものの、歴史認識や司法判断をめぐる対立は依然として現在の関係に影響を及ぼしています。この章では、国交正常化以降の主要な歴史的節目を整理し、2026年の現状にどうつながっているのかを考察します。
日韓関係の出発点と植民地支配の記憶
日韓関係の最初の転換点は、1910年の韓国併合にまで遡ります。日本による植民地支配は1945年まで続き、その間に発生した文化抑圧、労働動員、軍慰安婦などの問題は、韓国に深い歴史的記憶として刻まれました。この経験は、戦後の対日感情や教育内容に強く影響を与えており、現在も外交や世論の基調に残っています。
一方で、日本国内では「すでに終わった問題」と捉える声も根強く、両国間の歴史認識には大きな隔たりがあります。このギャップは、のちの国交正常化交渉や各種の合意形成においてもたびたび衝突の要因となってきました。
国交正常化と日韓基本条約の意義
1965年に締結された日韓基本条約は、両国の公式な外交関係樹立を可能にした画期的な枠組みでした。同条約では、日本が「経済協力金」として5億ドルを韓国に提供することで戦後補償問題を「完全かつ最終的に解決」とみなすとした一方、韓国側では国内世論への配慮から詳細な議論が避けられる傾向にありました。
この曖昧な合意内容は、のちの元徴用工や慰安婦問題に関する司法判断において、「法的解決」と「道義的責任」の乖離を生む構造的原因ともなりました。2026年に至っても、両国の国民感情にはこの「解決済みか否か」をめぐる根本的な意見の違いが色濃く残っています。
司法判断と政治判断が交錯する元徴用工・慰安婦問題
近年の日韓関係において、最大の摩擦点の一つが元徴用工訴訟に関する司法判断です。2018年、韓国最高裁は日本企業に対して賠償を命じ、日本政府はこれを「国際法違反」として強く抗議しました。その後、韓国国内で日本企業の資産売却手続き(いわゆる「現金化」)が進行しましたが、2026年1月時点では、韓国政府がこれを事実上停止しており、外交的配慮の姿勢が見られます。
また、慰安婦問題に関しても、2015年の日韓合意を受けた和解・癒やし財団の解散以降、実質的な解決が進んでいない状況です。李在明政権は「被害者の名誉回復」を掲げつつも、日韓関係の破綻を回避する慎重なバランス外交を模索しています。
歴史認識の隔たりが外交の足かせとなる構造
2026年現在、首脳レベルでは協力的な関係が築かれている一方、歴史問題は依然として外交的緊張の温床です。高市早苗首相は、竹島(韓国名:独島)について「歴史的にも国際法上も日本の領土」とする立場を堅持しつつ、記念式典への閣僚出席など刺激的な対応は控える「外交的リアリズム」に転じています。
韓国側では、慰安婦支援団体の元代表に対する恩赦や、歴史的記憶を象徴する発言が依然として支持を集めており、歴史問題が国内政治の重要なアイデンティティであることは変わっていません。これにより、歴史問題は単なる外交案件ではなく、内政と深く結びついた「構造的課題」として、日韓関係の現状に重くのしかかっています。
日韓の主な歴史的節目と現状への影響
| 年代 | 主な出来事 | 現在の関係への影響 |
|---|---|---|
| 1910年 | 韓国併合 | 歴史認識問題の根源 |
| 1965年 | 日韓基本条約 | 法的解決 vs 道義的責任の対立 |
| 2018年 | 元徴用工判決 | 日韓外交の緊張化 |
| 2025年 | 国交正常化60周年合意 | 戦略的パートナーとしての再定義 |
このように、日韓関係の現状を理解するには、歴史の重層性と、それが現代の政策・感情にどのように影響を与えているかを捉えることが欠かせません。今後の関係改善には、過去に向き合う姿勢と同時に、未来に目を向ける視点の両立が求められます。
経済の視点から見る日韓関係の現状と相互依存の深化

政治的な対立が浮き彫りになりがちな日韓関係においても、経済分野では一貫して実務的な連携が継続されています。2026年1月現在、両国は経済安全保障や先端技術の分野で補完関係を強めており、相互依存の質的深化が進んでいます。とりわけ、半導体や水素、AIといった新興分野での協力は、日韓が競合から「共助」へと関係を転換させる動きを象徴しています。
この章では、日韓経済関係の現状を輸出入・投資・政策協調といった観点から具体的に分析し、その戦略的意義を明らかにします。
貿易と産業構造が生む相互補完性
日本と韓国は、長年にわたりアジア有数の貿易相手国同士としての関係を築いてきました。日本にとって韓国は2025年時点で第3位の輸出相手国であり、韓国にとっても日本は半導体製造に不可欠な装置・素材の供給国として位置づけられています。
とくに、半導体産業をめぐる日韓の協力は、米中の技術競争が激化する中で重要性を増しています。2025年後半からは、日韓両政府主導のサプライチェーン再構築協議が継続的に行われ、両国間での部材供給・技術共有の仕組みが制度化されつつあります。
投資の活発化と韓国企業の対日進出
2025年から2026年にかけて、韓国企業による対日直接投資は過去最高水準に達しています。背景には、日本市場の安定性と、韓流ブームによる消費者心理の好転があります。IT、エネルギー、コンテンツ産業など、幅広い分野での韓国資本の参入が相次ぎ、東京・大阪のみならず地方都市にも拠点を広げています。
一方、日本企業の韓国展開も安定的に推移しており、自動車、精密機械、バイオ関連などの分野で協力が進んでいます。このような双方向の投資は、日韓経済関係が単なる輸出入の枠を超え、「共に成長する関係」へと移行していることを示しています。
経済安全保障と産業連携の戦略的意義
日韓両国は2026年現在、経済安全保障を国家戦略の中核に据えています。サプライチェーンの強靭化はもちろんのこと、水素エネルギーやAI、量子コンピューティングといった次世代分野での協力も進展しています。
2025年に発出された合意文書では、こうした分野での官民協力に加え、詐欺犯罪や金融犯罪への越境的対策の重要性も盛り込まれました。また、地方経済の活性化や人口減少といった社会課題への対応も、経済連携の一環として協議対象となっており、協力の射程はかつてないほど広範囲に及んでいます。
2025〜2026年の主な経済連携・投資動向
| 分野 | 主な動き | 背景・目的 |
|---|---|---|
| 半導体 | 供給網強化協議 | 経済安全保障の確保と米中対立への対応 |
| 水素・AI | 技術協力合意 | 脱炭素社会の実現と次世代産業の基盤形成 |
| 対日投資 | IT・物流・エンタメ分野で拡大 | 日本市場の再評価と韓流需要の定着 |
| 経済制度連携 | EPA再検討・3国FTAの議論再開 | 対中依存の分散と貿易多角化の必要性 |
経済安全保障協力の主要政策項目
| 協力内容 | 具体的施策 | 合意時期・出典例 |
|---|---|---|
| サプライチェーン強化 | 半導体・素材分野での相互依存構造の再設計 | 2025年 首脳会談合意文書 |
| 特殊詐欺対策 | 捜査協力・越境情報のリアルタイム共有 | 2025年 安全保障協力項目の一環 |
| 地方経済協力 | 地方自治体間の産業連携モデルの構築 | 2025年 地方連携枠組み合意 |
相互依存の深化が示す新たな枠組み
こうした経済面での協力の深化は、政治的摩擦が生じた際でも日韓関係全体の破綻を防ぐ「安定装置」として機能しています。とくに企業や自治体レベルでの連携は、中央政府の動きに左右されず継続されやすいという特徴を持っており、日韓関係の下支えとしての役割を担っています。
2026年における日韓経済関係の現状は、「ライバル」としての過去から、「補完的パートナー」への段階的転換を象徴しています。この流れを一過性に終わらせず、制度化された連携枠組みへと進化させることが、両国の経済的安定と戦略的自立にとって不可欠です。
安全保障における日韓関係の現状と地政学的な課題

2026年1月現在、東アジアの安全保障環境は複数の脅威が同時並行的に進行する不確実性の高い局面を迎えています。その中心にあるのが、北朝鮮による核・ミサイル開発の加速、ロシアとの軍事的連携、中国の地域的影響力の拡大、そして台湾海峡の緊張などです。
日中関係については以下の記事で解説しております。
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こうした状況下で、日韓関係における安全保障協力の重要性はこれまで以上に高まっています。とりわけ、2026年1月13日に行われた高市早苗総理と李在明大統領による首脳会談では、安全保障と経済安全保障の両面にわたる戦略的協力が確認されました。本章では、地政学的観点から日韓関係の現状を掘り下げ、リスクと可能性を整理します。
北朝鮮情勢と日韓の連携強化
最大の共通課題は、北朝鮮による核・ミサイル開発です。2025年以降、北朝鮮は短距離・中距離ミサイルの発射を繰り返し、さらにロシアとの軍事物資の交換や合同訓練の報道も相次ぎました。
こうした動向を受け、日韓両政府は「朝鮮半島の完全な非核化」という共通目標の下、日米韓3カ国による安全保障連携の枠組みを再強化。2025年4月にはソウルで防衛実務者協議が開催され、机上演習や通信体制の共同整備が進められました。
サイバー・宇宙など新領域への協力拡大
2026年の安全保障協力は、陸海空といった従来の軍事領域に加え、サイバー・宇宙といった新領域に拡大しています。特に注目されたのが、2025年8月に日米韓3カ国が発表した「北朝鮮ITワーカー」に関する共同声明で、これによりサイバー空間での監視と資金源遮断の国際協力が強化されました。
また、宇宙分野では、地球低軌道(LEO)におけるミサイル探知や、宇宙領域把握(SDA)情報の相互提供が日韓間で制度化されつつあります。これは、技術的信頼と情報共有をベースにした新しいタイプの防衛協力の兆しといえます。
対話の制度化と「強靭な関係」への転換
2026年1月の高市・李会談は、形式的な儀礼を超えた「実務重視」の会談として高く評価されています。小規模会合と拡大会合を連続して実施し、共同記者発表を通じて国民へのメッセージを発信することで、両国の意思疎通の深度が明確になりました。
このような「シャトル外交」の定着は、過去のように突発的な事件によって関係全体が麻痺する「脆弱な関係」から、制度化された対話によってリスクを管理する「強靭な関係」への転換を意味します。
シャトル外交については以下の記事をご確認ください。

安全保障分野における主な合意と対応領域(2025〜2026年)
| 領域 | 合意・動向 | 特徴・目的 |
|---|---|---|
| 北朝鮮核問題 | 完全な非核化を日米韓で確認 | 実務協議の定期開催で共同対応体制を構築 |
| ロシアとの連携対処 | 軍事情報共有・ミサイル探知の連携 | 日米韓の枠組み内での戦略的対応 |
| サイバー安全保障 | IT人材の違法活動監視・資金遮断 | 北朝鮮による外貨獲得手段の封じ込め |
| 宇宙領域把握(SDA) | 極超音速兵器の探知・追尾技術の共有 | 日韓の技術・監視能力を融合し抑止力を高める |
| シャトル外交制度化 | 首脳・閣僚間の年次対話スケジュール整備 | 外交の予測可能性向上と信頼構築のベース |
懸念材料としての拉致問題と世論の温度差
安全保障協力が進む中で、日韓間にはなお解消されていない感情的・倫理的な課題も存在します。その一つが日本側にとっての拉致問題です。高市総理は李大統領との会談において、拉致問題の継続的な支持と情報共有を求め、李大統領もこれを明確に支持しました。
しかし、韓国国内での世論における関心は必ずしも高くなく、日韓の間で「共通の脅威」としての温度差が存在している点には注意が必要です。
現状の先にあるリスクと課題
地政学的環境の急速な変化により、日韓の安全保障協力は不可逆的な関係へと進展する可能性を持ちつつも、依然としていくつかのリスクを抱えています。特に、以下のような不安定要素が残存しています。
- 国内政治の変動による外交方針の転換リスク
- 歴史・領土問題の突発的再燃による協力の後退
- 米中対立の激化による同盟戦略のずれ
これらにどう対応していくかは、日韓が「戦略的安定性」をどこまで共有できるかにかかっています。安全保障分野での信頼構築が、経済・文化といった他分野への波及的な安定を生む可能性は十分にあるものの、それを維持・深化させるには、不断の対話と柔軟な調整が必要です。
国民感情と文化交流から見る日韓関係の現状と変化

政治的な緊張が続く一方で、日韓関係にはもう一つの顔があります。それが、文化・観光・人的交流を通じた市民レベルでのつながりです。2026年1月現在、若者を中心に相互理解の基盤が大きく変化しており、国民感情もかつてとは異なる方向へと動き出しています。
とくに、K-POPやアニメといったソフトパワーの拡大、ワーキングホリデー制度の拡充、コロナ後の観光回復などが後押しとなり、政治とは異なる次元での「関係改善」が静かに進行しています。本章では、日韓国民の感情変化と文化交流の実態に着目し、現在の相互認識の質的変化を読み解きます。
日本国内における韓国への親近感の高まり
2025年2月に内閣府が公表した世論調査では、「韓国に親しみを感じる」と回答した日本人の割合が56.3%に達し、調査開始以来過去最高を記録しました。これは、K-POPや韓国料理、美容、ドラマなどの文化的要素が日常生活に広く浸透していることに加え、首脳会談など外交的接触が報じられる機会が増えたことが背景にあります。
特に女性や18〜39歳の若年層において親近感が顕著であり、政治的課題とは切り離して韓国を「身近な文化的存在」として受け止める傾向が強まっています。このような市民感情の変化は、外交リスクの緩衝材としても注目されています。
韓国における対日好感度の急速な回復
一方、韓国側の世論にも明確な変化が見られます。韓国ギャロップが2025年に実施した調査では、「日本に好感を持つ」と回答した韓国人の割合は47.0%と、2022年の21%から2倍以上に増加しました。中でも18〜29歳の若年層では66%が日本に好意的な印象を持っており、対日認識が急速に前向きに変化していることがわかります。
背景には、日本文化への接触機会の増加、旅行経験、SNSによる個人交流の活性化があります。また、「日本人個人」に対する好感度は56.0%と、国家に対する評価よりも高い水準に達しており、実体験を通じた信頼の芽生えがうかがえます。
2025〜2026年 相互国民感情と交流状況(調査データ)
| 指標 | 日本人 → 韓国 | 韓国人 → 日本 |
|---|---|---|
| 好感度 | 56.3%(過去最高) | 47.0%(若年層66%) |
| 「親しみを感じない」割合 | 43.0%(減少傾向) | ー |
| 日本人への個人好感度 | ― | 56.0% |
| 訪日韓国人数(2025年11月) | ― | 82万4500人(前年比+10%) |
爆発的な観光回復と人的交流の再拡大
観光分野では、コロナ禍以降の回復が加速し、2025年を通じて韓国からの訪日観光客数は歴史的な高水準を記録しました。2025年11月には82万4500人が来日し、11月として過去最多を更新。航空路線の拡充により、地方都市への訪問も目立つようになっています。
また、2025年8月に合意された「ワーキングホリデー制度の拡充」により、ビザ取得回数が従来の1回から2回(最長2年)に拡大。若者の相互移動と労働・学習の機会が格段に広がっており、民間レベルでの経験と理解の蓄積が期待されています。
文化コンテンツの相互消費とソフトパワーの双方向化
2025年、日本のアニメ映画『劇場版 鬼滅の刃 無限城編』が韓国の年間興行収入で第1位を獲得するという、歴史的な出来事がありました。これは、日本のコンテンツが単なる流行を超えて、韓国のエンタメ市場の中核に定着しつつあることを示しています。
一方、日本国内でも韓国の映画やドラマ、アーティストの人気が持続的に拡大しており、もはや一方通行ではなく、双方向の文化交流として定着しています。このような草の根の交流は、政治的な行き違いが生じたときでも、相互理解を支える「心理的インフラ」として機能しています。
日韓関係における民間交流の戦略的意味
2026年現在、政府間での政策調整と並行して、民間レベルでの安定的なつながりが日韓関係の下支えとなっています。若者世代を中心とした市民感情の前向きな変化は、今後の両国関係における「長期的な信頼形成の土壌」となる可能性を秘めています。
文化交流や人的往来が、単なる経済効果にとどまらず、政治・安全保障リスクを緩和する「静かな外交」としての役割を果たしていることは、2026年の日韓関係を考えるうえで極めて重要な視点といえるでしょう。
まとめ
2026年1月現在、日韓関係は政治・経済・安全保障・文化の各分野で多層的に展開されています。両国の間には依然として歴史問題や領土問題といった課題が残る一方で、首脳間の対話制度化や経済安全保障分野での補完的連携、若年層による相互理解の深化など、前向きな動きが数多く見られます。
国交正常化60周年という節目を越えた今、日韓は「対立の管理」と「協力の制度化」を両立させる成熟したパートナー関係へと移行しつつあります。こうした流れを一過性にせず、戦略的に定着させていくためには、引き続き実務レベルでの協議と国民間の交流促進が不可欠です。
両国間での取引、投資、文化事業などを具体的に検討している場合には、日韓の制度や現地事情に詳しい専門家に一度相談してみることをおすすめします。



