目次
中国のEC市場は、世界的にもトップクラスの規模を誇るマーケットであり、近年はさらに成長を遂げています。そして今後もさらなる発展が見込まれているため、早い段階から進出することが大きなビジネスチャンスで効果的であると考えられています。この記事では、中国EC市場の特徴、発展理由、そしてその基礎知識を解説していきます。
中国のEC市場の5つの特徴
1)市場規模と成長率
はじめに、中国のEC市場の市場規模と成長率について
経済産業省が2021年7月に発表したレポートによると、中国のEC市場規模は2020年時点で2兆2,970億ドルでした。同資料における日本のEC市場規模が1,413億ドル、アメリカのEC市場規模が7,945億ドルであったことを踏まえると、中国のEC市場規模は日本と比較して16倍、アメリカと比較しても2.9倍と大きく突き放しており、いかに中国市場が巨大なマーケットであるかが分かります。(図表1)
また、年ごとの成長率をみても毎年5,000億ドル規模の成長傾向にあり、今後もさらなる成長が期待できるでしょう。
(参考:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」)
中でも、中国における越境ECの貿易総額は2015年から2019年にかけて50.8%の年平均成長率となっており、中国国内のEC成長率の2倍以上の数値となっています。つまり、中国では越境ECの需要が年々高まっており、今後も成長が見込まれると考えられます。また、今後は中国の農村部でもEC化が進むとみられており、米国の市場調査会社eマーケターのデータによると、2023年には63.9%に達するとの見込みです。すでに全世界の半分以上を占めているともいわれている中国のEC市場は今後も注目を集めていくと予想されています。
2)「3大プレイヤー〝アリババ〟〝京東〟〝ピンドゥドゥ〟が中国EC市場を先導」
「アリババグループ」「京東グループ」「ピンドゥドゥ」がトップ3として中国のEC市場を先導しています。
(参考:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」)
アリババグループ
中国EC市場のトップを走るアリババグループは、ネット通販のB2C市場の半数近くのシェアを誇り圧倒的1位に君臨し続けています。
中でも「天猫国際(Tmall Global)」はアリババグループが運営する中国最大の越境ECサイトであり、企業が出店する販売手法と B2B2C型と呼ばれる販売手法を組み合わせて提供しています。 そして、品数が多く出店基準も厳しいため信頼できる越境ECサイトとして人気を集めています。
京東グループ
京東グループの「京東国際(JD Worldwide)」は、配送スピードや正規品保証などの特徴から人気を集めている越境ECサイトであり、「天猫国際(Tmall Global)」と同じく、企業が出店する販売手法と、B2B2C型と呼ばれる販売手法を組み合わせて提供しています。
ピンドゥドゥ
「拼多多(Pinduoduo:ピンドゥドゥ)」は、中国のベンチャー企業である上海尋夢信息技術有限公司が2015年にスタートさせたECアプリであり、2020年にはユーザー数が6億人を突破しました。「拼多多(Pinduoduo)」の特徴としては、農村部にユーザーが多いことが挙げられます。また、共同購入で商品をさらに安く購入できる仕組みが好評を得て、ネットショッピングの習慣がなかったユーザーを一気に取り込むことに成功しました。 加えて、購入した商品が偽物だった場合に備えて、慰謝料支払い保険制度も整えたため信頼度も上がり、現在では都市部でも「拼多多(Pinduoduo)」を利用するユーザーが増加しています。
3)インフルエンサー/KOLがライブコマースで圧倒的な支持を獲得
中国では近年、ライブコマースが人気を集めています。ライブコマースとは「ライブ配信」と「Eコマース(電子商取引)」を組み合わせたもので、ライブ配信内でインフルエンサーや 「Key Opinion Leader」(専門性と強い影響力を持つインフルエンサー)が、動画中継で商品を紹介しユーザーはその配信を見ながら商品を購入することができるという新しい販売形態です。
人気インフルエンサーが2時間で3億円の売上を記録したことや、農村から生産者が農産品をライブコマースで販売したことなどが話題となり注目を集めました。中国では広告やマスメディアに対する信頼度は低く、口コミを重視する傾向が以前からあったため、ライブコマースにおけるインフルエンサーやKOLの口コミは大きな影響力を持っています。
4)決済方法の主流はモバイル決済
中国では現金を持たずに過ごすことが一般的になっているほどキャッシュレス化が進んでおり、モバイル決済サービスが普及しています。
そのため中国の越境EC市場に参入する場合には、一般的なクレジットカードやデビットカードなどの決済方法に加え、モバイル決済も決済方法の一つとして考えることは必要不可欠だと言えるでしょう。
5)ニューリテール(新小売)・「Online Merges with Offline」(ECと実店舗のボーダレス化)の発展
インターネットの普及と同時に、ニューリテール(新小売)やOMO(「Online Merges with Offline」の略)という小売に関する新しい概念が登場しました。これらは、インターネットとデータテクノロジーを活用し、小売業のデジタルトランスフォーメーションを実現することでオンラインとオフラインを融合させ新しい消費体験を提供するという概念です。実際にこれらの概念はアリババグループの中核戦略の一つであり、アリババグループはオンラインとオフラインの両方を活用した豊富な販売チャネルの実現をしようとしています。 この実現によって、ユーザーはオンラインやオフラインを意識することなくシームレスで快適な購買体験ができるようになるため中国EC市場では大きな関心を集め、発展しています。
中国EC市場発展の背景
では、なぜ中国のEC市場は世界の半分以上のシェアを占めるとされるほどの発展を遂げてきたのでしょうか。以下では、中国のEC市場が発展した3つの主な理由について解説します。
1)中国の中流階級・富裕層の増加と新型コロナウイルス
中国のEC市場が発展した1つ目の理由として、中国国内の中流階級や富裕層の増加に伴う消費の拡大、そして新型コロナウイルスの影響が挙げられます。
もともと中国の消費者行動は豪快ですが、経済状態の好転によって、新たに富裕層や中流階級が増加したため、本来の消費行動がより顕在化しました。しかし、中国では感染拡大を防止するために大規模なロックダウンやリモートワークが行われ、それに伴い、「拡大した消費」の現場もオフラインからオンラインへと移行し、その結果EC市場が以前よりも拡大をしていきました。
2)独身の日オンラインセールによる話題化
2つ目の理由としては、毎年11月11日の「光棍節(こうこんせつ)」に行われる大規模な販促イベントの話題化が挙げられます。11月11日は、1が並び、1人を連想させることから中国では独身を意味する「光棍節(こうこんせつ)」と呼ばれ、独身者を祝う日として浸透しています。2009年に、アリババグループが光棍節のタイミングに合わせて、大規模な販促イベントを行い、予想以上の売上を記録したため、EC市場は注目を集め、また一気に独身の日セールも広まりました。現在では、ECサイトはもちろん、デパートやスーパーなどの小売業界全体がセールを行う日として定着しています。
3)キャッシュレス決済の普及
そして中国でEC市場が広まった3つ目の理由として、キャッシュレス決済の普及が挙げられます。中国ではスマートフォンなどのモバイル端末の普及を背景に、早い段階からキャッシュレス決済が広く普及していました。多くの国民がキャッシュレス決済手段を利用していたからこそ、ECサイトにおける決済にもスムーズに対応ができ、その結果よりEC市場が広まったといえるでしょう。
中国EC市場の基礎知識
最後に、中国EC市場における4つの基礎知識について記載します。
1)日本企業が中国での越境ECを行うための方法について
日本企業が中国での越境ECを行うためには、3つの方法があります。
1つ目は、中国の越境ECモールへ出店をすることです。中国での主なECモールとして、「Tmall Global(天猫国際)」や「JD.worldwide」などが挙げられますが、これらのECモールにおいて、中国に法人を持たない企業でも出店することができます。またここ数年で中国がは本格的に越境ECに力を入れ始めているため、決済銀行は日本の銀行でも良く、販売許可においても日本の販売許可を活用できます。これまでの中国への商品輸出といえば、個人代行業者による輸出が多い傾向にありましたが、国際スピード郵便(EMS)の通関時の開封検査が厳しくなったことや、越境ECの健全化を図るための「電子商務法」(電商法)が施行されたことなどにより、個人代行業者による越境ECは難しくなりました。そのため集客効果が高く、またモバイル決済機能も備わったECモールへの出店は、自社の越境EC売上を力強く支えることができることから近年さらに注目をされています。
2つ目の方法としては、越境ECを目的とした自社ECの構築が挙げられます。電商法の施行やモールへの出店基準が厳しくなるなど、今後中国越境ECの選択肢が減る場合には、越境ECを目的とした自社ECの構築の需要が増す可能性があります。しかし自社EC構築のためには中国ユーザーが利用する検索エンジンでのSEO対策はもちろんのこと、販売導線・販売戦略なども考えていく必要があることをおさえておきましょう。
また、その他の方法として越境ECを得意とする事業者への業務委託によって、自社商品を中国の消費者へと届けることも可能です。
2)中国EC市場調査について
経済産業省の「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」によると、越境ECを利用する中国の消費者は以下のような商品を購入していることが分かります。
図表3) 参考:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」
また、「中国の消費者が越境EC事業者に改善を望むこと」という調査項目では以下のような回答があります。
図表4) 参考:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」
これらのデータから、中国の越境EC利用者は「より多様な商品」、また「正規品であることの保証」を求めていると考えられます。
かつては「爆買い」のイメージが強い中国でしたが、今や世界最大のEC市場を持ち、「価格は高くても、品質の良い商品が欲しい」と考えている消費者が多い市場に変化しています。こうした中国消費者の購買行動の変化に対して、古くから「ものづくり」を大切にし、世界的な信頼を得ている日本の製造事業者は自身の商品をアピールするチャンスとなるでしょう。
越境ECにチャレンジしたいが、「言語の壁」や「知見の足りなさ」、「越境ECに対する不安」などの悩みを抱えている事業者には、弊社の中小企業の貿易を”まるなげ”できるサービス『まるなげ貿易』の利用をおすすめします。
3)日中国越境ECにかかる関税や税金について
越境ECの配送方法には、国際スピード郵便(EMS)と保税区モデルの2種類があります。
「国際スピード郵便」を使えば、商品を日本から中国に直送できますが、宝石や高級商品、タバコやお酒といった嗜好品は税率が50%に設定されており、⾏郵税の支払いは購入した消費者が行うため、消費者にとっては割高な買い物に感じる可能性があり得ます。その他の商品においてはおよそ13~20%の税率がかかります。
「保税区モデル」とは、中国国内に設けられた保税倉庫に在庫を一旦保管し、ECサイトで注文を受けてから出荷する配送方法のことです。実際には、保税区モデルの利用は国際スピード郵便よりも進んでいますがその理由として、通関がスムーズに進むこと、受注から配送までの日数が短く済むこと、そして荷物1個あたりの送料が安価なことが挙げられます。また、保税区モデルであればお酒(ワイン)や宝石などを税率20.2%で輸出することが可能であり、また食品や日用品などにおいても税率11.2%であるため、消費者の負担をおさえるには保税区モデルの利用が良いと考えられます。
4)注意すべき法律について
越境ECで注意すべき法律には「電子商務法(電商法)」があります。電商法は中国国内の電子商取引に適用されるものですが、中国の越境ECモールに出店する場合は「中国の法人」として登録されるため電商法が適用されます。しかし日本の法人が販売提供元になる場合や、越境ECを得意とする事業者に業務委託をする場合には別の法律に注意する必要があります。日本貿易振興機構(JETRO)によって中国越境ECの関係法令が「中国における越境ECの概要と留意点:中国向け輸出」でまとめられているので、こちらを参考にしてみてください。
まとめ
中国のEC市場は全世界の半分以上を占めているともいわれるほどのトップクラスの規模を誇るマーケットであり、今後も更なる発展が期待できます。また、消費者が「高価格でも品質の良い商品」を求める傾向にあるため、日本製の商品は大きな可能性を秘めており、早期の中国EC市場への進出が大きな売り上げの実現に効果的であると考えられています。
中国貿易を始めるなら『まるなげ貿易』
今回は「中国EC市場が発展した理由は?特徴と基礎知識を解説」をお届けしました。
STANDAGEは独自の貿易クラウドサービスを使い、中小企業の貿易を”まるなげ”できるサービスである『まるなげ貿易』を提供しています。
『まるなげ貿易』はIT導入補助金の適用により、低コストでの海外販路開拓が可能です。大手商社ではなしえない小規模小額の貿易や、国内買取対応も可能なので、是非一度お気軽にお問い合わせください。