韓国は半導体や自動車を主力とする輸出主導型経済であり、日本にとっても重要な貿易相手国です。両国は製造装置や電子部品などを通じて密接なサプライチェーンを形成しています。
しかし2025年、米国の通商政策が韓国貿易に大きな影響を与えました。トランプ政権は通商拡大法232条に基づき、3月に鉄鋼・アルミニウム、4月に自動車および同部品へ25%の追加関税を発動しました。韓国産業通商資源部によれば、これにより対米輸出は一時的に減少しました。
その後、韓国が約3,500億ドル規模の対米投資を約束することで関税は一時15%へ引き下げられましたが、2026年1月には再び25%へ戻す方針が示され、市場には不透明感が広がっています。
一方で、2025年4月の韓国の輸出総額は582億ドルと前年同月比で増加しており、HBM(広帯域メモリー)などの高付加価値半導体が輸出を下支えしています。関税リスクと先端産業の成長が同時に進む中、韓国貿易の構造は大きく変化しています。
本記事では、最新データをもとに韓国貿易の現状と産業構造を整理し、日韓の相互依存関係や通商政策の変化が企業活動に与える影響を解説します。
韓国の基本情報

韓国は、日本や中国と同じアジア地域に位置し、経済の観点からは貿易相手国として非常に重要です。以下、韓国の基本情報をご紹介します。
| 正式名称 | 大韓民国(Republic of Korea) |
| 首都 | ソウル(Seoul) |
| 人口 | 約5,121万人(2024年末時点) |
| 面積 | 約10万平方キロメートル |
| 主要産業 | 半導体、電気・電子機器、自動車、鉄鋼、石油化学、造船 |
| 公用語 | 韓国語 |
| 宗教 | 無宗教が過半数。信仰を持つ層ではキリスト教、仏教が主要 |
| 通貨 | 韓国ウォン(Korean Won、₩) |
| 時間帯 | 韓国標準時(KST、Korean Standard Time)、UTC+9 |
| 国境 | 北に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国境 |
韓国貿易の最新動向

韓国は輸出依存度の高い経済構造を持ち、外部環境の変化が貿易統計に直接反映されます。2025年は米国による追加関税発動という逆風に直面しましたが、通年では過去最高水準の輸出額を記録しました。
2025年の輸出入総額と貿易収支の推移
韓国産業通商資源部の発表によれば、2025年の輸出総額は7,097億ドルと前年比3.8%増加し、史上初の7,000億ドル突破となりました。輸入総額は6,317億ドルでほぼ横ばいとなり、貿易収支は780億ドルの黒字を計上しています。これは2017年以来最大の黒字幅です。
2025年は米国が鉄鋼・アルミニウムおよび自動車・同部品に25%の追加関税を発動するという厳しい環境下にありましたが、半導体輸出の増加が全体を押し上げました。
韓国貿易の基本構造は次の通りです。
| 項目 | 内容 | 実務的な示唆 |
|---|---|---|
| 輸出主力品目 | 半導体、自動車、石油化学、鉄鋼 | 産業集中度が高い |
| 輸出依存度 | GDPに占める輸出比率が高水準 | 外需変動の影響が大きい |
| 最大輸出市場 | 中国、米国、ASEAN | 地政学・関税リスクの影響を受けやすい |
| 市況影響 | 半導体価格変動が収支を左右 | 在庫循環の波が大きい |
このように、韓国経済は「輸出依存」と「産業集中」という二つの特徴を併せ持っています。
主要輸出品目と構成比
2025年の輸出を品目別に見ると、半導体が1,734億ドルで輸出全体の約24.4%を占め、前年比22%超の増加となりました。AI向けHBM需要の拡大が主な要因です。
自動車は約720億ドルで約10.1%を占めていますが、米国の関税措置により対米輸出は減少しました。
| 主要品目 | 2025年実績 | 輸出全体に占める割合 | 主なリスク要因 |
|---|---|---|---|
| 半導体 | 1,734億ドル | 約24.4% | 市況循環、対中規制 |
| 自動車 | 約720億ドル | 約10.1% | 米国関税政策 |
| 石油化学 | 約425億ドル | 約6.0% | 中国景気減速、グローバル供給過剰 |
| 鉄鋼 | 約300億ドル | 約4.2% | 保護主義、単価下落 |
半導体と自動車の2品目だけで全体の約3分の1を占めており、品目集中度の高さが韓国貿易の特徴です。
主要輸出相手国と市場依存構造
市場別では、対米輸出が1,229億ドルで前年比3.8%減少しました。一方、ASEAN向けは1,225億ドルで前年比7.4%増加し、シェアは17%台に拡大しています。
米国向けが減少する中、ASEAN向けの中間財・半導体輸出が増加し、市場多角化が進みつつあります。従来の「米国・中国」中心構造から、ASEANを含む三極構造へと変化が見られます。
韓国は半導体、自動車、電子機器などの輸出主力産業に加えて、IT・バイオ・環境エネルギー等の新興分野を政策的に支援しており、これらが今後の輸出拡大のカギとなっています。
韓国貿易の産業構造と輸出依存リスク

韓国経済の競争力は、特定分野で世界的な優位性を持つ点にあります。しかしその構造は、外部環境の変化に対する感応度の高さという側面も持っています。2025年から2026年にかけての通商環境の変化は、その両面をより鮮明にしました。
半導体依存とAI需要が牽引する成長構造
2025年の半導体輸出額は1,734億ドルに達し、前年比22.2%増と過去最高を更新しました。輸出全体に占める割合は約24.4%に達しており、韓国の輸出のほぼ4分の1を単一産業が占める構造となっています。
特にサムスン電子やSKハイニックスは、AI向けHBM(広帯域メモリー)市場で世界的な競争力を持ち、業績を大きく伸ばしました。
一方で、これは裏を返せば、半導体市況が悪化すれば国家全体の輸出と収支が大きく変動することを意味します。2025年は自動車分野が関税の影響で減速する中、半導体がマクロ指標を押し上げる構図となりました。まさに「一本足打法」とも言える集中構造が強まっています。
米国25%関税発動の実務的影響
2025年3月、米国は通商拡大法232条に基づき鉄鋼・アルミニウムへ25%の追加関税を発動しました。4月には自動車および同部品にも対象を拡大しています。
韓国自動車産業は対米依存度が高く、関税発動後の2025年第2〜第3四半期には、現代自動車および起亜の営業利益が大きく圧迫されたと報じられています。一部証券会社の試算では、両社合計で約3兆ウォン規模の利益押し下げ要因となったとの見方もあります。
その後、韓国が約3,500億ドル規模の対米投資を約束することで関税率は一時15%へ引き下げられましたが、2026年1月には再び25%へ戻す可能性が示唆され、市場に緊張が走りました。
さらに2026年2月下旬には、米連邦最高裁が大統領の非常権限に基づく「相互関税」に関し違法判断を示したと報じられました。ただし、自動車関税は通商拡大法232条に基づく措置であるため、直接の影響は限定的とみられています。このため、自動車関税は依然として大きな不確実性要因として残っています。
米国の関税政策は、通商拡大法232条や相互関税といった制度を背景に発動されています。相互関税の仕組みやトランプ政権下での関税戦争が日本企業に与える影響については、以下の記事をご覧ください。

政策依存型モデルとパッケージディールの現実
韓国が約束した3,500億ドル規模の対米投資は、半導体やEV分野への投資だけでなく、安全保障協力を含む包括的な枠組みで議論されていると報じられています。通商交渉は、純粋な経済問題にとどまらず、外交・安全保障を含むパッケージディールの様相を強めています。
このような環境下では、企業の生産拠点や調達戦略が、市場原理だけでなく政治的判断によって左右される可能性が高まります。
日本企業が韓国企業とサプライチェーンを構築する際も、単なるコスト競争力だけでなく、
- 生産拠点が政策変更で移転する可能性
- 対米投資義務による資金配分の変化
- 関税率の再変動リスク
といった政治的要因を織り込む必要があります。
2026年現在、韓国の産業構造は高い競争力を維持しながらも、政策と地政学リスクへの依存度がこれまで以上に高まっていると言えるでしょう。
日韓貿易の現状と相互依存

韓国と日本の貿易関係は、単なる輸出入の数字以上に、産業構造の中で深く結びついています。政治的緊張や輸出管理問題が表面化する局面はあっても、実務の現場では依然として高度な分業関係が続いています。
日本から韓国への主要輸出と依存分野
日本から韓国への輸出は、最終製品よりも「中間財」や「製造装置」が中心です。とりわけ半導体関連分野では、日本企業の技術優位性が依然として重要な役割を果たしています。
| 主な輸出品目 | 特徴 | 韓国側の依存度の特徴 |
|---|---|---|
| 半導体製造装置 | 高精度・高付加価値 | 先端工程で代替困難分野あり |
| 高純度化学素材 | フッ化ポリイミド等 | 品質安定性が重要 |
| 工作機械 | 製造業全般に不可欠 | 投資循環に連動 |
| 精密部品 | 高度な加工技術 | 価格より品質重視 |
2019年の輸出管理強化以降、韓国は「素材・部品・装備」国産化政策を進めてきました。しかし、先端半導体工程などでは依然として日本製装置や素材への依存度が高い分野が存在します。
このため、政治的な緊張があっても、実務レベルでは取引が継続される構造となっています。
韓国から日本への主要輸出と競争優位
一方、韓国から日本への輸出は、電子部品や石油化学製品などが中心です。
| 主な輸出品目 | 特徴 | 市場特性 |
|---|---|---|
| 半導体 | メモリー分野で強み | 市況連動型 |
| 自動車部品 | コスト競争力 | 完成車産業と連動 |
| 石油化学製品 | 汎用素材 | 価格変動大 |
| 鉄鋼製品 | 高強度鋼板など | 建設・自動車向け |
韓国企業は、メモリー半導体や一部素材分野で価格競争力を持ち、日本の製造業にとって重要な供給元となっています。特にメモリー分野では、日本企業が韓国製品に依存する構図が続いています。
輸出管理強化以降のサプライチェーン再編
2019年以降の輸出管理強化を契機に、韓国は調達先の多様化と国産化を加速しました。一部素材では国内生産が進み、対日依存度は徐々に低下しています。
しかし、すべての分野で完全な代替が進んだわけではありません。特に先端半導体関連装置や高純度素材では、日本企業の技術的優位が依然として存在しています。
日韓貿易の本質は、「競争しながらも補完する関係」にあります。韓国は最終製品やメモリー半導体で強みを持ち、日本は製造装置や高機能素材で優位性を持つという構図です。
この相互依存関係は、米国の関税政策や地政学リスクの影響を受けながらも、急激に断絶するものではありません。ただし、今後は生産拠点の分散やASEANを含む広域サプライチェーンへの再編が進む可能性があります。
日本企業にとって重要なのは、韓国企業との取引が「韓国内完結型」なのか、「米国向け生産」なのか、「ASEAN向け中間財」なのかを見極めることです。最終市場によって関税リスクや政策影響が大きく異なるためです。
韓国貿易を取り巻く地政学リスクと通商政策の現実

2025年から2026年にかけての米国の関税措置は、韓国貿易がいかに政治判断に左右されやすいかを改めて浮き彫りにしました。通商問題は経済合理性だけで決まるものではなく、安全保障や外交交渉と密接に結びついています。
米国関税再燃リスクと企業への影響
米国は通商拡大法232条に基づき、鉄鋼や自動車に対する追加関税を発動しました。その後、一時的に関税率が引き下げられたものの、再引き上げの可能性が示唆されるなど、政策の不安定さが続いています。
このような状況では、企業は単年度の収益計画だけでなく、関税率が変動する前提での中期的な事業計画を立てる必要があります。
具体的には、
- 価格転嫁の可否
- 北米現地生産の拡大
- 第三国経由輸出の活用
- 為替ヘッジの強化
といった対応が検討課題となります。
特に自動車や鉄鋼のように関税影響を直接受ける産業では、関税率の数%の差が営業利益を大きく左右します。関税が政治交渉のカードとして利用される環境下では、「政策の振れ幅」そのものが経営リスクとなります。
WTOルールの実効性と限界
通商紛争が発生した場合、最終的な解決の場となるのが世界貿易機関です。加盟国はWTO協定に基づき、関税措置の適法性を争うことができます。
しかし、WTOの紛争解決手続きは時間を要するのが現実です。提訴から最終判断まで数年単位を要することも珍しくありません。その間、企業は実際に関税を支払い続ける必要があります。
また、国家安全保障を理由とする措置については、WTOの判断が及びにくい領域も存在します。したがって、「提訴すればすぐ解決する」という前提で事業戦略を組むことは現実的ではありません。
企業が取るべきリスク分散戦略
こうした環境下で重要になるのが、地理的・市場的な分散戦略です。
韓国企業は、米国向け輸出が減速する中でASEAN向け輸出を拡大させています。日本企業にとっても、韓国市場を単独で捉えるのではなく、「韓国+ASEAN+北米」という広域サプライチェーンの一部として戦略を設計することが重要です。
具体的には、
- 生産拠点の複線化
- 調達先の多様化
- FTA活用による関税最適化
- 政治リスクを織り込んだ契約条件の設定
といった対策が考えられます。
特に韓国企業と取引する場合、その製品が最終的にどの市場へ向かうのかを確認することが不可欠です。対米向け製品であれば関税影響を直接受ける可能性があり、ASEAN向けであれば別のFTA条件が適用されます。
地政学リスクは一時的な現象ではなく、構造的な前提条件となりつつあります。韓国貿易を取り巻く環境も、価格や品質だけでなく、政治・外交・安全保障を含めた総合判断の時代に入っていると言えるでしょう。
韓国貿易とFTA戦略の実務活用ポイント
韓国は自由貿易協定(FTA)を積極的に活用して輸出競争力を高めてきました。関税の引き下げはもちろん、通関手続きの円滑化やルールの共通化によって、企業の海外展開を後押しする役割も担っています。
一方で、FTAは「締結されている=使えば得」という単純な話ではありません。実務では、原産地規則の確認や証明書管理の負担が想像以上に重く、関税メリットと管理コストを比較したうえで意思決定する必要があります。
韓国の主要FTAと関税削減効果
韓国が関係する主要な枠組みとしては、少なくとも以下の協定は押さえておく必要があります。
| 枠組み | 対象地域 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 米韓FTA | 米国 | 関税メリットが大きい品目がある一方、通商政策リスクの影響を受けやすい |
| RCEP | 日本・中国・ASEAN等 | サプライチェーンをまたぐ原産地管理が重要 |
| EU韓FTA | EU | ルールが明確で運用が比較的安定 |
韓国企業はこれらを活用し、輸出先の多角化と関税負担の最適化を進めてきました。特にRCEPは、部材調達が複数国にまたがる場合にメリットが出やすく、日本企業が韓国企業と協業する際にも無視できない枠組みです。
米国の関税政策は韓国企業だけでなく、日本企業のサプライチェーンにも直接的な影響を与えています。韓国・アメリカ間の関税措置の詳細や、FTAを活用した具体的な対応策については、以下の記事をご覧ください。

原産地規則と証明手続きの実務
FTAの最大のハードルは、原産地規則と証明書の運用です。制度としては整理されていても、現場では次の点でつまずきが発生しがちです。
| 実務項目 | 典型的な落とし穴 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| HSコード確認 | 分類違いで税率・規則が変わる | 事前教示や専門家確認 |
| 原産地規則 | 部材構成の要件を満たせない | BOM(部品表)の整備 |
| 証明書管理 | 書類不備で関税減免が否認される | 証憑管理ルールの標準化 |
| 監査対応 | 後日検証に耐えられない | 記録保管と社内教育 |
特に注意したいのは、関税減免は「申告時点で終わり」ではない点です。後日検証で否認されれば、追徴課税や加算税につながる可能性があります。現場では「輸送は済んだが、書類が追いついていない」という状況が発生しやすく、体制整備が欠かせません。
FTA活用率と企業の判断基準
FTAが有利に見えても、あえて使わない企業が存在します。理由は明確で、関税メリットと運用コストのバランスが取れないからです。
| 判断軸 | FTAを使うべきケース | 使わない判断になりやすいケース |
|---|---|---|
| 関税率 | 高関税品目で効果が大きい | もともと低関税で効果が小さい |
| 取引頻度 | 定常的に輸出入がある | 単発取引で管理負担が重い |
| 供給網 | 原産地管理が可能 | 部材が多国籍で追跡困難 |
| 体制 | 証憑管理・監査対応が整っている | 現場任せで属人化している |
日本企業が韓国企業と取引する際も、FTAを使うかどうかは「制度があるか」ではなく、「自社の運用が回るか」で判断すべきです。とりわけ韓国企業の輸出先がASEANや北米に広がる中で、どのFTAが適用され、どの原産地要件が求められるかを早い段階で整理しておくことが重要になります。
まとめ
2025年以降の韓国貿易は、半導体を中心とする高付加価値産業が輸出を押し上げる一方で、米国の関税政策や地政学リスクに大きく左右される構造がより鮮明になりました。過去最高水準の輸出額を記録した背景にはAI関連半導体の需要拡大がありますが、自動車など対米依存度の高い産業は政策変更の影響を強く受けています。
日本企業にとって重要なのは、韓国市場を単独で見るのではなく、最終市場や適用されるFTA、関税リスクを含めた広域サプライチェーンの視点で分析することです。産業集中と政策変動という二つのリスクを織り込んだうえで、取引条件や調達戦略を設計する必要があります。
韓国は依然として有力な貿易パートナーですが、環境変化への備えが不可欠です。最新の制度や統計を確認しながら、自社のリスク管理体制を見直すとともに、FTA活用や関税対応については専門家に一度相談してみることをおすすめします。




