酒類輸出のための免許取得の方法

この記事では、「輸出酒類卸売業免許」と「輸出酒類卸売業免許」の基礎知識について、簡潔にご説明いたします。どのような要件があり、どのような手続きが必要かを理解することで、スムーズな輸出事業を展開することができますので、ぜひ参考にしてみてください。

最新の貿易実務・政策動向については、X(旧Twitter)でも随時発信中です。ぜひ @bouekidotcom をフォローして、海外展開に関わる情報をチェックしてください。

お酒を輸出するための免許

お酒を輸出するための免許は、「輸出酒類卸売業免許」と呼ばれます。よく「輸出入酒類卸売業免許」というふうに輸出と輸入を合わせて書いてありますが、実際には2つの異なる免許です。

輸出をする場合は「輸出酒類卸売業免許」を取得しましょう。

また、よくある間違いとして「通信販売酒類小売業免許」との間違いがありますが、こちらの免許では越境ECだとしても酒類を海外で販売することはできませんのでご注意ください。

越境ECを使っての販売は「通信販売酒類小売業免許」と「輸出酒類卸売業免許」の両方が必要です。

酒類の免許の申請条件

酒類の免許は酒類販売業免許と呼ばれ、全部で8種類ありますが、ここでは輸出の上で必要な「輸出酒類卸売業免許」と「通信販売酒類小売業免許」の取得に必要な条件を紹介します。

全種類の酒類販売業免許の条件

  • 十分な知識及び能力を有する
    (例)酒類の販売業等の経験年数が「10年以上」等
  • 年平均販売見込数量「100kℓ以上」
    (ビール卸売業免許の場合は「50kℓ以上」
  • 所要資金等並びに必要な販売施設及び設備を有する
  • 毎年度(9月1日から8月31日までの期間)、都道府県ごとに免許可能件数を算出し、免許可能件数に応じて抽選となる

輸出酒類卸売業免許の条件

  • 外国人の場合、住民票を有する(外国法人の場合、日本での支店登記が完了している)
  • 十分な知識、能力、所要資金等及び店舗を有する
  • 契約等により酒類を輸出(輸入)することが確実

通信販売酒類小売業免許の条件

  • 十分な知識、経営能力、販売能力及び所要資金等を有する
  • 「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」等を満たす
  • 購入者が未成年者でないことを確認できる手段を講ずる

さらに、「通信販売酒類小売業免許」で取扱うことができる酒類は、以下に該当する者に限られます。

  • 国産酒類のうち、次に該当する酒類
    • カタログ等の発行年月日の属する会計年度の前会計年度における酒類の品目ごとの課税移出数量が全て3,000kℓ未満である製造者が製造、販売する酒類
    • 地方の特産品等を原料として、特定製造者以外の製造者に製造委託する酒類であり、かつ、その酒類の一会計年度における製造委託者ごとの製造委託数量の合計が3,000kℓ未満である酒類
  • 輸入酒類

申請等手続の流れ

ここでは大体の申請の流れを紹介します。

  • 免許可能件数の公告
    各卸売販売地域(都道府県)における免許可能件数は、毎年9月1日(土・日曜日の場合は翌月曜日)に卸売販売地域内の各税務署の掲示板等に公告するとともに、国税庁ホームページに掲載されます。
  • 申請書等の提出
    9月1日から9月30日(土・日曜日の場合は翌月曜日)までの期間の申請等についてが公開抽選の対象となります。申請書及び申請等時に提出すべき添付書類を作成し、免許等を受けようとする販売場の所在地の所轄税務署に提出してください。
  • 抽選・審査順位の決定
    公開抽選を10月中に実施し、審査順位が決定されます。
  • 審査時提出分の書類の提出
    公開抽選により決定した審査順位に従って、審査開始通知書が送付されるので、通知の日から2週間以内に審査時提出分の書類を提出します。
  • 審査
    税務署において、審査順位に従い審査を行います。必要に応じて来署を求める場合や現地確認を行う場合があります。
  • 免許付与等の通知
    審査の結果、酒類卸売業免許が付与等される場合には、申請者等に書面で通知されます。

取得する際の費用

お酒の販売における免許の申請には登録免許税を支払う必要があり、卸売業免許は90,000円かかります。また、申請に必要な公的書類を収集する際に概ね2,000円から5,000円程度かかるでしょう。更新はないため、一度の取得で十分です。

輸出で酒類を販売するには「輸出酒類卸売業免許」が必須で、越境ECの場合はこれに加えて「通信販売酒類小売業免許」も必要です。申請では具体的な事業計画と仕入先・卸先からの取引承諾書が要点で、登録免許税は卸売業免許9万円です。

取引承諾書とは?なぜ必要?

「取引承諾書」とは、酒類販売業免許を申請する際に、取引相手から取引を受けても良いという承諾を得たことを証明する書類です。免許の申請には具体的で詳細な事業計画が必要であり、取引承諾書はその一環として、実際の取引の見込みがあることを示す役割を果たします。
「これから行うつもり」では許可を受けることができず、販売数量や売上金額、仕入先・販売先など、具体的かつ詳細な事業計画が必要になります。

酒類販売業免許は小売業免許と卸売業免許に分類されますが、卸売業免許を取得する場合に取引承諾書が必要となります。つまり酒類を輸出する場合は必ず必要になります。

誰から、どうやって取得すればよい?

取引承諾書は、仕入先と卸売先それぞれ1社以上から取得する必要があります。仕入先は製造業者や卸業者、卸売先は販売業者のことを指します。取引承諾書は、取引予定がある旨を伝えて記入してもらうもので、取引相手が具体的な取引条件を承諾するものではありません。

取引承諾書には以下の情報が記載されます。

  • 宛名
  • 酒類卸売業免許を取得した際に酒類の取引をすることを承諾する内容
  • 日付
  • 住所
  • 記名・押印(または海外の場合はサイン)

様式は決まっておらず、申請者が自ら準備することが一般的です。また、海外取引先から取得する場合は、英文での記載が必要で、和訳も提供することが求められることがあります。

取引承諾書を取得した相手と結局取引しなかった場合は?

取引承諾書を取得した後、事情により取引が実現しない場合もあります。免許が取り消されることはないので、安心してください。取引先は事業計画に基づいて記入されたものであり、後の変更が許容されます。

まとめ

日本酒の海外市場での輸出を成功させるためには、輸出酒類卸売業免許の取得と戦略的な販売方法が重要です。審査を乗り越えることで海外進出の幅が広がるのでぜひ挑戦してみてください。

貿易ドットコム

メールマガジン

「貿易ドットコム」が厳選した海外ビジネス・貿易トレンドを、月2回お届け。
実務に役立つニュースや最新制度、注目国・地域の動向をメールでチェック。

メルマガ登録はこちら
メールマガジン