シンガポールの特徴(2025年時点)
シンガポールは、人口約580万人と国土面積が東京23区ほどしかない都市国家でありながら、アジア屈指の経済大国として存在感を高めています。
国際金融センターとしての地位に加え、法人設立のしやすさや安定した法制度、外国資本への開放性により、グローバル企業のアジア拠点として高く評価されています。
1. 法人設立・ビジネス環境の優位性
シンガポールは、外資規制が極めて少なく、外国人でも100%出資による現地法人設立が可能です。また、法人設立手続きはオンラインで完結し、必要書類も少なく、最短1週間程度で登記を完了することができます。
最低資本金の要件もなく、事実上「低コストかつ迅速に」法人を立ち上げられる環境が整っています。
さらに、2023年時点の世界銀行「ビジネスのしやすさランキング(Doing Business)」においては、シンガポールは世界第2位にランクイン。商業登記制度や契約執行の迅速性、税制の透明性が評価されており、特に中小企業にとっても参入障壁の低い国とされています。
2. 税制面での競争力と制度的整備
シンガポールの法人税率は一律17%と、アジア主要国と比較しても低く抑えられています。中小企業に対しては課税所得の一定額に対する軽減税率(通常75%の減税)などの優遇措置が用意されており、実効税率はさらに低くなるケースも多くあります。
国・地域 | 法人税率(2025年時点) |
---|---|
シンガポール | 17%(一部企業は実質9%以下) |
日本 | 約23.2% |
中国 | 25% |
マレーシア | 24% |
インドネシア | 22% |
タイ | 20% |
さらに、日本とは租税条約を締結しており、二重課税の回避や配当・利子・使用料の源泉徴収税軽減措置が適用可能です。これは現地子会社設立において日本本社との資金移動を行う際に大きなメリットとなります。
3. 経済成長と外資誘致戦略
2024年の実質GDP成長率は3.2%と安定的な伸びを記録し、製造業・金融・ICT・ライフサイエンスなど多様な分野でバランスの取れた産業構造を維持しています。特に政府が推進する「Smart Nation」構想は、国全体のDX(デジタル変革)を支える柱であり、スタートアップ支援、AI・IoT関連の研究開発投資、デジタルID・キャッシュレスインフラの整備が進行しています。
さらに、ASEAN諸国との自由貿易協定(FTA)に加え、CPTPPやRCEPなどのメガFTAにも加盟しており、シンガポールに法人を設けることで広範な国・地域への関税優遇が享受可能です。
4. 人材とインフラ
公用語に英語が採用されており、ビジネス文書・商習慣の多くが英語で行われる点は、日本企業にとっても参入しやすい環境です。また、国立大学やポリテクニック(専門技術大学)から毎年多くの優秀な人材が輩出されており、ITや金融、エンジニアリング分野での人材採用が容易です。
都市国家としての機能集約性も高く、空港・港湾・高速通信などのインフラが高水準で整備されており、域内物流や国際ビジネスの効率性に直結しています。
5. 留意点とデメリット
法人設立・経営面での利便性が高い一方、以下のような点には留意が必要です。
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日本の本社とシンガポール子会社との損益通算は不可
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現地法人が独立した法的主体であるため、訴訟リスクや債務負担は子会社単独で負う
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人件費・オフィス賃料がASEAN諸国の中では最も高い水準
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人材確保競争が激しく、特にITやファイナンス人材の報酬水準は年々上昇
特に中小企業が単独で進出する場合、初期のランニングコストを見誤ると採算が合わなくなるケースもあるため、事前の市場調査と財務シミュレーションが不可欠です。
6. 日本企業の進出状況
JETROによると、2024年時点で800社を超える日本企業がシンガポールに進出しており、その業種は製造業からIT、専門サービス、商社、物流、医療まで多岐にわたります。特に以下のような目的での進出が多く見られます。
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ASEAN市場全体を見据えた地域統括拠点(Regional HQ)
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海外子会社の管理拠点(ファイナンスセンター・人事センター)
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国際物流・再輸出基地(倉庫・仕分けセンター)
中には、国内市場の縮小や円安を背景に、「海外の売上比率を引き上げる戦略拠点」として再評価する企業も増えています。

法人設立の大前提
法人設立には、会社の信頼を得るため、登記が必要となります。
社名、代表者名、事業目的などの会社概要を法務局に提出し、登記事項証明書が発行されたら、登記は完了です。
法人設立までの流れ(シンガポール)
シンガポールで法人を設立するには、主に以下のステップを踏む必要があります。それぞれの段階で、法的要件や提出書類が定められており、準備を確実に進めることが重要です。
ステップ1:会社概要の決定
まずは会社の基本情報を決めます。決定すべき項目は以下のとおりです。
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商号(会社名)
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事業内容(最大2つまで選択)
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取締役、株主、秘書役の構成
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登録住所(現地法人の所在地)
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資本金額(最低資本金なし)
商号(会社名)の注意点:
すでに登録されている商号は使用できないため、シンガポール会計企業規制庁(ACRA)のオンラインシステムで事前に商号の予約を行うのが一般的です。
事業内容の登録:
ACRAが定める「事業分類コード(SSIC)」の中から、業種を2つまで選ぶ必要があります。
ステップ2:秘書役と取締役の選任
シンガポールでは、以下の点が制度上の特徴です。
秘書役(Company Secretary):
法人設立後6ヶ月以内に任命が義務付けられており、税務手続きや定款変更、総会議事録の作成などを担当します。秘書役は現地居住者である必要があります。
取締役の要件:
取締役のうち最低1名は「シンガポール居住者(国民、永住者、EP所持者など)」でなければなりません。現地に居住する取締役がいない場合は、現地の会計事務所等が提供する「名目取締役サービス」の利用が検討されます。
ステップ3:定款の作成・認証
定款(Memorandum and Articles of Association)は、会社の運営ルールを定めた文書です。設立時に法定のテンプレートを使用するケースが一般的で、個別の調整が必要な場合は法務専門家による支援が推奨されます。
ステップ4:資本金の払込
シンガポールでは最低資本金の規制がなく、1シンガポールドルでも法人設立が可能です。払込は設立者の個人口座経由でも構いませんが、後の口座審査等を考慮して、一定の資本額(例:1,000~10,000 SGD)が設定されるケースが多く見られます。
ステップ5:ACRAへの登記申請(オンライン)
ACRAのBizFile+というオンラインシステムを通じて登記申請を行います。提出書類は株主の種類によって異なります。
個人株主の場合:
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パスポートのコピー
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英語の住所証明書(公共料金明細書、銀行残高証明など)
法人株主の場合:
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親会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の英訳
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親会社の定款の英訳
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株主構成を示す資料(株主名簿等)
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主要株主(議決権25%以上)のパスポートコピーと住所証明書
ステップ6:監査義務の判定
以下のうち2つ以上を満たす場合、設立後に監査が必要です。
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年間売上高:1,000万シンガポールドル以上
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総資産:1,000万シンガポールドル以上
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従業員数:50人以上
上記を満たさない「小規模会社(small company)」は監査免除を受けられることがあります。
法人設立後の流れ
法人設立が完了した後は、現地での事業運営に向けた準備を整える必要があります。
銀行口座の開設
シンガポールでは法人用の銀行口座を開設する際、厳格な審査があります。主に利用される銀行は以下のとおりです。
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DBS(シンガポール最大手)
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OCBC(国内第2位)
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UOB(大手金融グループ)
銀行によって必要書類や審査基準が異なるため、事前に確認が必要です。口座開設までには2〜4週間を要することが一般的であり、以下の点にも注意が必要です。
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設立書類一式の提出
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株主や取締役の個人情報・パスポート情報の提出
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事業計画や取引先情報の説明
さらに、インターネットバンキングを使用する場合、セキュリティデバイス(暗証番号ジェネレーター)が送付されるまでに追加で2週間以上かかることがあります。
銀行はマネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)の観点から、企業の実態を厳しく審査するため、予想以上に時間がかかることがあります。口座開設と資金運用の準備には、十分な余裕を持って対応することが重要です。

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