アフリカ南部に位置するザンビアは、安定した治安と豊富な鉱物資源を背景に、近年ビジネス面での注目度が急上昇している国です。銅をはじめとする鉱業セクターが経済の中心でありつつ、農産品・再生可能エネルギー・域内物流など、一次産品から付加価値産業へと経済構造を変化させる動きも見られます。
また、AfCFTA・SADC・COMESA などの域内協定を活用したアフリカ市場へのアクセス拠点としての重要性も高まっています。
一方で、輸出入品目の規制、主要貿易相手国との関係、通関制度、内陸国特有の物流事情など、ザンビア貿易には独自の前提や注意点があります。適切な情報を持たずに進出を試みると、納期遅延や価格変動、取引先の信頼性確保といった実務面でのリスクを抱えやすくなります。
本記事では、ザンビアという国の基本情報から、主要輸出入品目、日本との貿易関係、物流・制度面のポイントまでを整理し、最新の動向に基づいた基礎知識をまとめます。ザンビア市場への輸出やビジネス展開を検討する際の初期リサーチとしてご活用ください。
ザンビアとはどんな国か?

ザンビアは、日本から約15,000キロ離れたアフリカ南部に位置する内陸国です。国土面積は日本の約2倍ありますが、人口は約2,000万人と比較的少なく、人口密度は低いのが特徴です。
経済面では、長年にわたり銅の輸出に依存するモノカルチャー構造を持ちつつも、近年では農業や他の鉱物資源への注目も高まっています。過去には銅価格の下落で打撃を受けたものの、それ以前は年6%前後の安定成長を遂げていました。
政治的にはアフリカ諸国の中でも治安が安定しており、紛争のない平和な国として知られています。銅のほかにも石炭やエメラルドといった未開発資源が多く、豊富な降雨と温暖な気候により農業の潜在力も高いことから、今後の成長が期待される国のひとつです。
ザンビアの基本情報(2025年)

ザンビアはアフリカ南部に位置する内陸国で、鉱業資源に恵まれた国として知られています。安定した民主主義体制の下、経済発展と社会インフラ整備に取り組んでおり、今後の投資先としても注目されています。
- 国名:ザンビア共和国(Republic of Zambia)
- 首都:ルサカ(Lusaka)
- 公用語:英語
- 人口:約2,050万人(2025年推定)
- 面積:約75万2,000平方キロメートル
- 通貨:ザンビア・クワチャ(Zambian Kwacha / ZMW)
- 政治体制:共和制、大統領制(大統領が国家元首・政府の長)
経済の特徴
ザンビア経済は鉱業、農業、観光を主な柱としています。特に銅の産出量はアフリカ有数であり、輸出の大部分を占めています。価格変動の影響を受けやすいものの、コバルトや金の採掘も進んでおり、鉱業セクターは今後も成長が見込まれています。
農業では、とうもろこし(主食)、綿花、たばこ、唐辛子などの作物が栽培されており、地域の食料供給国としても機能しています。
また、アフリカ広域経済圏(AfCFTA)を通じた域内貿易の拡大により、輸出拠点としての役割も高まりつつあります。
観光と自然資源
観光資源としては、ユネスコ世界遺産のヴィクトリアの滝(モシ・オ・トゥニャ)をはじめ、カフエ国立公園やサウス・ルアングワ国立公園などの自然保護区が人気です。野生動物の保護や持続可能な観光開発に力を入れており、エコツーリズムの成長が期待されています。
文化・民族と言語
ザンビアは70以上の民族集団から成る多民族国家で、ロジ語、ベンバ語、ニャンジャ語など地域ごとに異なる言語が話されています。英語が公用語として広く使用されており、教育・行政・ビジネスの場面では標準的に用いられています。
ザンビアは、鉱業や農業を基盤としつつ、交通インフラやデジタル経済への投資を進めている発展途上国です。アフリカでのビジネス展開を検討する企業にとって、資源性と地政学的安定性を兼ね備えた戦略的な拠点として注目されています。
ザンビアは銅が輸出の圧倒的主力で、2023年には非精錬銅が約69.5億ドル、精錬銅が約28.3億ドルの輸出を記録し、金、電力なども続く主要産品です。さらにCOMESA・SADC・アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)などの自由貿易協定に加盟しており、EUや米国向けの関税優遇も享受でき、輸出の市場アクセスが強化されています。
アフリカ市場の構造や国別の投資魅力を理解する際、まず全体のビジネス環境を正しく把握することが重要です。
アフリカのビジネスチャンス については以下の記事をご覧ください。

ザンビアの貿易基礎知識(2025年)

ザンビアはアフリカ有数の鉱業国であり、銅の生産量は世界第8位(2024年時点)を誇ります。かつては米国・旧ソ連に次ぐ世界第3位の銅鉱石生産国だったこともあり、今なお鉱産資源が輸出の中心を占めています。
主な輸出品目
ザンビアの輸出の約7割は鉱業関連で、特に以下の品目が中心です。
- 銅(精鉱・アノード)
- コバルト
- セメント
- 金や亜鉛などの非鉄金属
輸出相手国(2023年データ)
| 国名 | 輸出割合(概算) |
|---|---|
| スイス | 約40%(※主に商流経由地) |
| 中国 | 約20% |
| コンゴ民主共和国 | 約13% |
| シンガポール | 約5% |
スイスはザンビア産銅の国際取引における商流のハブであり、実質的な輸出先は中国やアジア圏が中心です。
輸入相手国(2023年データ)
| 国名 | 輸入割合(概算) |
|---|---|
| 南アフリカ | 約35% |
| 中国 | 約17% |
| アラブ首長国連邦(UAE) | 約9% |
| インド | 約5% |
南アフリカからは機械設備・燃料・建設資材、中国やUAEからは消費財や工業品の輸入が目立ちます。
ザンビアの貿易構造は依然として銅を中心とした一次産品依存型ですが、今後は鉱産資源の付加価値化や農産品・再生可能エネルギー関連機器の取引など、多角化の動きも進んでいます。
特に中国とは輸出入の両面で強い結びつきがあり、今後の市場動向がザンビア経済に大きな影響を与えると見られています。
ザンビア・日本間の貿易について(2025年)

日本とザンビアの経済関係は、資源・工業製品の相互補完性を基盤とし、引き続き良好な関係を維持しています。とりわけ、日本車や建設機械はザンビア国内で広く普及しており、現地の輸送・インフラを支える重要な役割を果たしています。
主な貿易品目
| 区分 | 品目 |
|---|---|
| ザンビアから日本への輸出 | 銅、コバルト、綿花、砂糖、タバコなど |
| 日本からザンビアへの輸出 | 自動車・部品、建設機械、鉱山用設備、医療機器、化学製品など |
ザンビアはアフリカ有数の銅資源国であり、日本の電子部品製造や再エネインフラ整備に不可欠な資源を供給しています。一方、日本はザンビアにとって工業化や都市整備を進める上での信頼できる技術パートナーとして位置づけられています。
経済協力との連携
日本はODA(政府開発援助)やJICA事業を通じて、ザンビアに対するインフラ整備支援や人材育成支援も行っており、貿易と開発協力が連動している点が特徴です。たとえば、以下のような取り組みがあります。
- 日本の専門家や技術者の現地派遣
- ザンビア人研修生の日本での受け入れ
- 農業・保健医療・教育分野での協力プロジェクトの展開
今後も、日本とザンビアの貿易関係は、資源確保・産業支援・人材交流という複数の軸で発展が見込まれており、両国の相互利益に基づく協力はさらに深化していくと考えられます。
まとめ
ザンビア経済は鉱業と農業が基盤であり、特に銅の輸出が支配的である点が最大の特徴です。2022年の輸出総額は約116億米ドルで、その主要産品には銅・コバルト・金・宝石などが含まれます。輸出先はスイス・中国・コンゴ民主共和国などが上位を占め、輸入は主に工業機械・石油製品・自動車部品などで、南アフリカ・中国・UAE が主要な供給国となっています。
また、ザンビアは COMESA や WTO への加盟を通じて関税優遇や貿易協定の恩恵を受けており、通関制度にも一定の整合性があります。こうした環境を踏まえ、輸出入の実務に進む前には、一度専門家に相談することをおすすめします。




