【2025年更新】エジプト貿易・輸出の基礎知識(概況や基礎統計)

エジプトは国際貿易において重要な地位を占めており、輸出についての基礎知識を理解することはビジネスにおいて非常に有益です。エジプトでは石油やガス、農産物、鉱産物が輸出品目の主な構成要素となっています。輸出先としては、アメリカ、中東市場、欧州連合がトップです。

エジプト経済の基本統計を把握することで、ビジネスチャンスを見逃すことなく積極的な取引が可能になります。

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エジプトの基礎情報

エジプトはアフリカ北東部に位置し、国土の95%が砂漠で構成され、ナイル川沿いだけが緑豊かな居住地となっています。ピラミッドやスフィンクスで知られる観光国であり、ここでは基礎データと主要な輸出・貿易動向をご紹介します。

項目 内容
正式名称 エジプト・アラブ共和国(Arab Republic of Egypt)
人口 約1億660万人(2024年6月時点)
面積 約1,001,450 km²(世界29位、日本の約2.65倍)
首都 カイロ
言語 公用語:アラビア語、都市部では英語も通用
民族 主にアラブ系、少数にヌビア人、アルメニア系、ギリシャ系など
宗教 イスラム教多数、コプト派キリスト教も存在
主要産業 製造業、水産業、不動産、繊維、食品加工、
観光、化学、医薬品、炭化水素、建設、セメントなど
名目GDP総額 約4,350億ドル(2021年) 世界35位、アフリカ第3位
一人当たり名目GDP 約4,162ドル(2021年) 世界121位

エジプトの2023年の輸出額は約511億ドル、輸入額は約882億ドルで、輸入超過の状態が続いています。主要輸出品には、精製石油・石油ガス・窒素肥料・金などの鉱産資源や化学製品が含まれます。

日本との貿易では、2024年のエジプトから日本への輸出額が約6,675万ドルだった一方、日本からの輸出額は約8.09億ドルでした。輸出品としては、エジプトから日本への植物性製品や繊維製品が中心で、日本からは自動車や一般機械などが主流となっています。

エジプトは、セメント、肥料、化学製品といったエネルギー集約型産品の輸出を近年急増させており、2022年から2024年にかけて輸出額が倍増し、2019年比では350%の増加となりました。ただし、この急成長には環境・排出規制の不備による気候リスクも指摘されています。

経済成長面では、IMFの支援のもと通貨改革や構造改革を実施し、2025年6月までの経済成長率は4.0%と見込まれ、翌年には4.6%に加速する予想が出ています。ただしインフレ率は高止まりしており、2025年も12.5%程度と予測されています。

また、スエズ運河の収入は中東情勢の影響を受け、2024年には前年比で大幅減となり、世界貿易への影響も出ています。

こうした環境下でも、エジプトは産業の多角化や輸出促進、インフラ整備を通じて、国際市場での競争力を強化しています。教育・貿易・投資環境の改善により、今後も持続的な成長と地域貢献が期待されています。

エジプトは輸出急成長やIMF支援による成長見通しが強みな一方、慢性的な貿易赤字・高インフレ・スエズ運河収入減少が課題。特に「エネルギー集約型輸出の急増」「輸入超過」「成長率4.0%→4.6%予測」が重要ポイントです。

日本との貿易状況

エジプトとの貿易において、日本からエジプトへの輸出が非常に活発で、直近では10億ドルを超えています。特に輸送機器や一般機械分野の貢献が大きい一方、日本への輸入は限定的です。

項目 内容
日本の輸出額 約10.93億ドル(2023年)
主要輸出品目 輸送機器:37.5%、一般機械:28.6%、原料別製品:11.8%
日本の輸入額 約3.19億ドル(2023年)
主要輸入品目 鉱物性燃料:79.5%、食料品:8.1%
在留邦人数 約816人(2023年10月時点)
日系企業数 約65社(車両・電機など)

2023年における日本からエジプトへの輸出額は約10.93億ドルに達し、輸送機器(37.5%)や一般機械(28.6%)、部品・原料製品(11.8%)が主力輸出品となっています。

一方、日本がエジプトから輸入する金額は約3.19億ドルで、そのうち鉱物性燃料(79.5%)が大半を占め、食料品も一定の割合を占めています。

エジプトに在留する日本人は約816人(2023年10月時点)で、日系企業は約65社が現地拠点を展開しています。これにより、日本とエジプトの経済関係が堅調に維持されています

日本企業のエジプトへの輸出品のトレンド

近年、日本企業のエジプトへの輸出は増加の一途をたどっています。これは、エジプト市場の高い成長率と日本製品に対する需要の拡大が影響していると考えられます。主な輸出品目は以下の通りです。

輸出品目特徴・需要動向
自動車関連製品日本製自動車が高評価。中東・アフリカでの市場シェア拡大が期待される。
家電製品耐久性・性能が評価され、大型家電(テレビ・冷蔵庫など)が特に人気。
化粧品高品質で、スキンケア・ヘアケア製品の需要が増加。
食品健康志向の広がりを背景に、和食や健康食品への注目が高まっている。

エジプト市場の拡大に伴い、日本企業は今後も積極的な輸出拡大が求められるでしょう。そのためには、現地の消費者ニーズを把握し、適切なマーケティング戦略を展開することが不可欠です。

エジプトへの商品輸出手続き

エジプトでは輸入品目規制が厳しく注意が必要です。品質検査が義務付けられた品目では、輸出入管理公団の承認が必要です。

さらに、船積み貨物の輸入通関には、エジプト向け輸出入者による貨物情報の事前申告が求められます。

輸入品目規制

以下のものは輸入が停止されています:

  • 家禽の臓物
  • 宗教的感情を害するマークのある消費財
  • 殺虫剤・化学製品(368項目)
  • オイルジェットポンプ装備のないダブルストローク・バイク
  • アスベスト関連品、アスベスト使用のブレーキ・ライニング
  • 遺伝子操作された油を使用したツナ
  • 拳銃を模した玩具で、硬いビーズや矢を伴うもの (2009年にリストに追加)
  • 100~250ボルトのAC電源を使用する40ワット超の白熱電球 *(HSコード:85392290, 85392900)(2012年、2014年にリストに追加)
  • 100~250ボルトのAC電源を使用する40ワット超の白熱電球 *(HSコード:85392290, 85392900)(2012年、2014年にリストに追加)
  • ”regulation of body energy”の名称で輸入され筋肉緊張緩和、関節痛緩和、深い睡眠の促進、または携帯等の電磁波から人体を守るなどをうたうクォンタム・ペンダント、ブレスレット、ネックレス、その他アイテム(2013年にリストに追加)

輸入貨物情報の事前申告

2021年10月から始まったオンライン事前申告制度は、エジプトへの輸出に必須となりました。

エジプト側輸入者

  • Nafezaに登録し、輸入ごとにACID番号を発行。
  • Nafeza:輸入プロセスを一元化するプラットフォーム

エジプト向け輸出者

  • CargoXに登録し、輸出ごとに貨物情報と輸入者発行のACID番号を申告、手数料を支払う。
  • CargoX:輸出者用プラットフォーム。Nafezaと連動

輸出入法に基づく品質検査

エジプトへ輸入する際の品質検査が必須な品目は、以下の条件を満たしていることが求められます。

機械・装備

本体と包装に原産国名が、アラビア語・英語・仏語のいずれかで刻字されていること。

加工された家禽・鶏肉・肉

貨物は原産国からエジプトへ直送。

商品は衛生基準を満たし、適切に包装。

包装にアラビア語で以下の情報が記載されたラベルが貼られていること。

  • 原産国
  • 生産者名
  • 食肉処理場名
  • 加工日
  • 輸出者の氏名および住所
  • シャリーア(イスラム法)に基づいて加工工程を監督した団体名(原産国の商務部で認可されていること)

衣服・家具・カーペット・織物・キリム(靴下で、医療用・工業安全用のものを除く)

商品ごとにアラビア語で以下の情報が縫製されていること。

  • 輸入者名
  • 原産国
  • 生地の種類

【外国工場・企業】エジプト輸出入管理公団事前登録義務

外国の工場・企業は、指定の25分類に該当する品目をエジプト向けに輸出する際、事前にエジプト輸出入管理公団へ登録が必要です。

【食品輸出】船積前検査証明書

食品の安全性と品質を確保するため、輸入業務を開始する個人・法人は、NFSA(国家食品安全庁)の許可が必要です。

通関の必要書類

通関に必要な書類は以下の通りです。

  • 船荷証券
  • インボイス
  • 原産地証明書
  • パッキング・リスト

まとめ

エジプトは、天然ガスや果物、電気機械、肥料、鉄鋼などを主に輸出し、2023年の輸出額は約511億ドル、輸入は約882億ドルと輸入超過の状況が続いています。2022年には天然ガスや石油製品が全輸出の35%以上を占め、肥料やプラスチック、電気機器の輸出も堅調でした。

制度面では、エジプトでは輸出・輸入許可申請は不要ですが、事前の出口/入口登録が必須であり、検査対象品目には品質認証も求められます。また、貨物情報の事前申告(ACI制度)には CargoX や Nafeza を通じたオンライン申告が求められるなど、通関手続がデジタル化されつつあります。

進出時には制度や統計情報のみならず、変動する為替政策や輸入制限、外資規制なども注意が必要です。実務に進む前には、一度専門家に相談することをおすすめします

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