アンゴラ貿易・輸出の基礎知識(2025年更新)

アンゴラは、石油や天然資源に支えられた産業構造を背景に、豊かな成長ポテンシャルを持つ南部アフリカ市場です。一方で、官僚主義やインフラの未整備、外貨管理など進出を難しくする制度的ハードルも存在します。

本記事では、アンゴラでの貿易・輸出を検討する際に必須となる、主要産品や貿易ルート、通関・為替制度などの基本を整理し、企業が海外展開を進める前に押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。

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アンゴラの基本的な情報

まずは、アンゴラの基本的な情報について見ていきます。

アンゴラはアフリカ大陸南西部に位置し、南はナミビア、北はコンゴ民主共和国、東はザンビア、西は大西洋に面している面積1247,000 km²の国です。キリスト教が多数派で、その他にも伝統的宗教やイスラム教徒もいます。詳細な情報も見ていきましょう。

項目内容
人口約3,377万人(2021年、国連推計)
首都ルアンダ(Luanda)
言語ポルトガル語(公用語)、バントゥー語族を中心とする現地語も話される
GDP674億米ドル(2021年)
主要輸出品目原油、ダイヤモンド、コーヒー、木材、綿花、魚介類
主要輸入品目機械、運輸機器、電気機器、食品、薬品、繊維
通貨クワンザ(AOA)

以上の様にアンゴラは天然資源に富んだ国と言えますが、一方で貧困率が高く、経済的に豊かな国とは言い難い状況にあります。主に石油やダイヤモンドなどの天然資源が豊富であり、これらの資源は輸出によって外貨獲得に貢献しています。しかし、これらの資源は国内での加工や産業の発展が遅れ、輸出に依存していることから、外国為替収入が不安定であるという問題があります。また、社会基盤や貧困削減のための投資が不十分であり、貧困層の生活水準が低く、社会的格差が広がっています。

更に、内戦や独裁政権の時代を経て、2002年に和平協定が締結されて以降、政治的にも安定しているとは言い難い状況にあります。和平協定により内戦は終結しましたが、政府による反対派の弾圧や言論の自由の制限が見られるなど、民主主義的な価値観が確立されているとは言い難い政治状況です。

アンゴラの商品別の輸出入構成比

一方で、貿易の輸出入に関する動向も見て行きます。

アンゴラの輸出品目の構成比は以下の通りです(2020年推計)。

【輸出品目(2023年概算)】

輸出品目割合(%)コメント
原油約86%相場下落も数量は安定
ダイヤモンド約6%減産傾向あり
LNG(液化天然ガス)約4%新規プラント稼働で伸長
その他鉱物(鉄鉱石等)約2% 
その他(コーヒー・木材等)約2%非資源輸出は依然少数派

【輸入品目】

輸入品目割合(%)コメント
機械・電子機器26%インフラ需要・発電所関連増加
食料品14%国内農業支援策の効果で微減
医薬品9%ワクチン輸入減少の影響も
輸送機器10%商用車・公共輸送向け伸び
化学製品8%安定
繊維製品6%国内製造業支援で微減
その他27%建設資材・燃料・雑貨等

※出典:OEC(Observatory of Economic Complexity)2023年推計、IMF WEO補足情報より構成推定

以上のように、アンゴラは輸出において石油とダイヤモンドが圧倒的な割合を占めており、一方で輸入においては機械・電子機器や食料品などが主要な品目となっています。

アンゴラで大きな影響力を持って居る有力企業の一つを紹介します。アンゴラで生産されている石油は、主に国営石油会社であるSonangolが輸出しています。Sonangolはアフリカでも最大級の石油企業の1つです。石油・ガスの探査、生産、加工、販売など、石油産業全般にわたる業務を手掛けています。

国内においては、石油・ガスの生産や精製、貯蔵、輸送などのほか、航空会社や鉄道会社、電力会社なども傘下に持っています。また、国外においては、アフリカ大陸を中心に石油の探査や生産を行っており、ヨーロッパやアジアなどにも進出しており、大きな影響力を持っていると言えます。

アンゴラの輸出は原油が圧倒的に主体であり、鉱物資源(ダイヤモンドなど)や農林水産品が続く一方、輸出の90%以上が石油依存という構造的偏りが顕著です。この輸出構造は輸出先(特に中国)への依存とともに、経済の多角化や天然資源以外の産業育成の必要性を浮き彫りにしています。

アンゴラの将来について

アンゴラ政府は経済多様化や社会開発に取り組んでおり、繁栄に向けた取り組みを進めています。自然豊かな国土を生かし、観光業の発展に取り組むことで、経済成長を促すことが期待されています。また、政府は社会的不平等の解消や貧困削減に向けた政策を推進しており、国民生活の向上にも取り組んでいます。

さらに、中国やロシアなどの国々との経済協力関係を強化することで、経済成長を促すことを目指しています。また、アンゴラはアフリカの各国との連携も進めており、地域の経済発展にも貢献しています。

政権交代を経て民主化が徐々に進みつつあるものの、言論の自由や汚職対策など依然として課題が残っています。

総合的に見ると、アンゴラには政治的・経済的課題が多く残されているものの、経済成長や社会的発展に向けた取り組みを進めており、将来に向けた可能性を秘めた国と言えるのでは無いでしょうか。

まとめ

まとめ

アンゴラは「資源大国」としての特徴が際立つ一方で、石油依存度が極めて高く、経済の多角化や社会基盤整備の遅れといった構造的課題を抱えています。政府は近年、農業・製造・観光といった非資源分野の育成や国際的な連携を通じて、持続可能な成長モデルへの転換を模索しています。
政治・社会面では民主化やガバナンス改革が進行途上にあり、透明性の向上や制度の安定が経済発展の前提条件となります。総じて、アンゴラは資源と人口規模を背景に大きな潜在力を持つ国であり、将来は「資源依存からの脱却」と「制度・インフラ整備」が成長を左右する鍵となるでしょう。

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