海外で売れる!越境ECのためのSEO戦略大全|基本から実践・ツール・事例まで

自社サイトを英語化したのに、なぜか海外からのアクセスが増えない――。このような悩みを抱える中小企業の越境EC担当者が増えています。

越境ECでは、単に翻訳するだけでは成果は出ません。現地検索エンジンで見つけてもらうための「SEO戦略」が必要です。この記事では、貿易実務×デジタル戦略の視点から、越境ECにおけるSEO戦略の全体像と具体的な実践ステップをわかりやすく解説します。

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越境ECにおけるSEOの全体像と成功の鍵

越境ECにおけるSEO戦略は、単に検索順位を上げるための施策ではなく、海外顧客が商品を見つけ、信頼し、購入に至るまでの流れを設計する「デジタル貿易戦略」と言えます。
各国での検索行動や文化の違いを踏まえたうえで、売上に直結する情報発信の仕組みを構築することが成功の鍵です。

国内SEOとの違いを越境ECでどう捉えるか

日本国内のSEO戦略では、Google日本版の検索結果を前提に最適化すれば多くのユーザーに届きます。しかし、越境ECでは国ごとに検索エンジンの種類・言語構造・購買行動が異なります

たとえば中国ではBaiduが主流で、メタデータURL構造に独自の仕様が存在します。アメリカや欧州ではGoogleが中心ですが、レビュー評価E-A-T(専門性・権威性・信頼性)の影響がより強く働きます。
東南アジアではスマートフォン検索の比率が高く、モバイル表示の最適化が必須です。

さらに、同じ英語圏でも「color/colour」のようにスペルや表現が異なり、キーワード選定やタイトル設計も国別対応が求められます。
越境ECのSEO戦略は「一つの正解」ではなく、国・文化・検索環境ごとに最適解を見出す運用型の取り組みといえます。

越境ECのSEO戦略では、単なる翻訳ではなく現地ユーザーの検索行動や文化に沿った最適化が鍵となります。国や地域ごとの購買心理を理解し、ローカライズされた情報発信を行うことで成果につながります。

越境EC SEOに必要な3つの視点(検索・信頼・導線)

越境ECでは、検索で見つかることだけが目的ではありません。ユーザーが「このサイトなら安心して購入できる」と感じ、スムーズに購入完了まで進む仕組みを整えることが成果を左右します。

そのためには、以下の3つの視点をバランスよく組み合わせることが重要です。

  • 検索:ターゲット国で実際に使われているキーワードの把握と最適化。単語の翻訳ではなく、現地で検索される「言い回し」まで調査する。
  • 信頼:レビュー、FAQ、配送・決済情報などを整備し、「このブランドは信頼できる」と感じさせるコンテンツを用意する。
  • 導線:購入までのクリック数を減らし、スマートフォンでもストレスなく決済できる構造を設計する。言語切り替えや通貨表示の自動化も効果的。

この3要素は独立しているようでいて、相互に影響し合います。たとえば、レビュー(信頼)が豊富なサイトは検索エンジンの評価(検索)にも良い影響を与え、スムーズな購入導線(導線)は離脱率を下げ、SEO評価を安定させます。

越境ECではこの三位一体の設計が成功の前提です。

SEOを越境ECの売上設計にどう活かすか

SEO戦略は集客のための単発施策ではなく、売上を最大化するための経路設計です。アクセス数(PV)を増やすことが目的ではなく、検索から購入に至る確率(CVR)をいかに高めるかが本質です。

たとえば、商品の魅力を伝える英語表現をそのまま翻訳するのではなく、現地ユーザーが共感しやすい言葉に置き換えるだけでクリック率や滞在時間が大きく改善します。
また、現地通貨・配送情報・関税の明示は、購入直前の離脱を防ぐ要素として極めて重要です。

つまり、越境ECのSEO戦略は「流入数を増やす施策」ではなく、「購入までの最短ルートを作る戦略」であり、貿易におけるロジスティクス設計と同じ発想で考える必要があります。

越境ECにおけるSEO戦略を実務に落とし込むためのステップとツール

理論だけでは成果につながりません。ここでは、越境ECのSEO戦略を日々の業務に組み込むための実践ステップと、それに必要なツールや担当体制を整理します。最初に「何から着手すべきか」が明確になれば、社内での合意形成や外注判断もスムーズに進められます。

越境EC SEOにおけるキーワード調査の実践方法

SEO戦略は「どの言葉で検索されているか」を把握するところから始まります。特に越境ECでは、現地の言語や文化、購買シーンに即した表現を捉える必要があります。

下記は実務でよく使われる越境ECにおけるSEO戦略のステップを一覧化したものです。キーワード調査を起点に、翻訳、構造最適化、分析へとつながる流れを理解することが重要です。

ステップ内容使用ツール例担当部門
キーワード調査現地の検索ニーズを言語・文化・利用シーンで把握Ahrefs, Keyword Planner, Ubersuggestマーケティング
翻訳とローカライズ機械翻訳の精度確認+文化背景を反映した自然な表現DeepL Pro, Gengo, ローカル翻訳者外注 or 社内翻訳
メタ情報と構造最適化タイトル・説明文・URL・画像altのSEO対応Shopify管理画面, CMSテンプレートEC/開発部門
分析と改善検索順位やCVに基づき継続的な調整を実施Google Search Console, GA4, Screaming Frogマーケティング

たとえば「green tea powder」は一般的ですが、「matcha powder for baking」のような具体的な利用目的に沿ったロングテールキーワードは、競合が少なくCVにつながりやすい傾向があります。

Google Keyword Plannerで基本の検索ボリュームを確認し、AhrefsUbersuggestなどで競合分析や関連語の抽出を行うのが効果的です。さらに、AmazonやYouTubeのサジェストワードも参考にすることで、現地ユーザーの表現に近づけます。

越境ECにおけるSEO戦略で成果を出すには、輸出トレンドやニーズのある商品カテゴリを把握することが重要です。売れる商材を探すヒントについては、以下の記事をご覧ください。

 

プラットフォーム別SEO設定のポイント(Shopify・Amazonなど)

使用するプラットフォームによってSEOの自由度や実装範囲が大きく異なるため、特性を把握した上で対策を講じることが不可欠です。

  • Shopify:テンプレートの自由度が高く、URL構造・titleタグ・alt属性・構造化データなど幅広く編集可能。自社主導でSEOを強化しやすい。
  • Amazon Global:商品タイトル・検索キーワード欄・レビュー内容がSEOに影響。販売実績や評価が順位に反映されやすく、商品説明の質がCVに直結。
  • 楽天グローバル:SEO制限が多く、内部対策には限界あり。商品ページの文章最適化に加え、広告・SNS・外部メディアを活用した外部流入強化が重要。

また、モバイル表示最適化・ページスピード改善など、検索エンジンが評価する技術的要素にも対応できるかどうかを事前にチェックしておくと、後工程でのトラブルを回避できます。

アメリカ市場をターゲットとした越境ECにおいては、関税対策もSEO戦略と並んで重要な検討ポイントです。具体的な輸出時の税率については以下の記事をご覧ください。

 

分析結果をSEO改善に活かす運用ルーチン

SEO戦略は“設定して終わり”ではなく、データに基づいた改善の繰り返しが成果を左右します。

Google Search Consoleで検索クエリごとの表示回数・クリック率(CTR)を確認し、順位は高いがCTRが低いページについてはタイトルやメタディスクリプションの再設計が必要です。

GA4では流入チャネルごとの滞在時間・直帰率・コンバージョン経路を分析し、どのページが成果に貢献しているかを可視化できます。改善対象が明確になれば、週次〜月次のPDCAで「改善している実感」が得られやすくなり、チーム内のSEO施策への納得感も高まります。

越境ECにおけるSEO戦略で成果を出した企業事例と市場別戦略

理論や手順を学んでも、「自社にどう応用できるか」が見えなければ行動にはつながりません。
ここでは、実際に成果を上げた企業の越境ECにおけるSEO戦略の事例を3市場に分けて紹介し、それぞれの市場特性と具体的な成功要因を整理します。

中国市場での越境ECにおけるSEO戦略とBaidu最適化事例

中国向けに食品を展開していたある中小メーカーは、Googleを前提とした英語サイトでは流入がほぼゼロという課題に直面していました。そこでBaidu向けのSEO施策を実施。

具体的には、中国語(簡体字)へのネイティブ翻訳、ICPライセンスの取得Baidu Webmaster Toolsへの登録を行い、WeChatミニプログラムとも連携させました。

その結果、Baidu経由のオーガニック流入が3か月で約2.1倍に増加し、訪問ユーザーの平均滞在時間も伸長。特にFAQページが上位表示されたことで、ユーザーの購買意欲を高める役割を果たしました。

米国市場におけるShopify活用とSEO戦略の成果実例

日本発のアパレルブランドが米国向けのEC展開において行ったのは、「信頼性の強化」「検索意図の特化」です。

Shopifyのレビュー機能を活用し、全商品に口コミを掲載。商品説明文にも「素材感」「利用シーン」「サイズ感」といった購入判断に必要な情報を詳細に記載しました。

さらに、「casual workwear for women」のような具体的な検索意図にマッチするロングテールキーワードを商品名や見出しに反映したところ、CTRが大幅に向上。Google検索からの自然流入数が前年比160%に伸び、CVR(成約率)も12%改善しました。

東南アジア市場でのSEO×SNS連携施策

雑貨メーカーがマレーシアとタイをターゲットに展開した事例では、モバイル中心の検索行動に対応するため、ページスピードの最適化モバイルUIの再設計を実施。

さらに、Facebook広告でリーチしたユーザーを、SEO戦略で設計した特定キーワード付きLPへ誘導する導線を構築しました。

使用キーワードは「cute stationery for school」や「gift under 10 dollars」など、現地の購買行動を踏まえたものを選定。Google検索経由のセッション数は1.5倍に、SNS連携のクリック後CV率は8%を記録しました。

SEOとSNSを並行して設計する戦略が成功を支えた事例です。

市場有効な越境EC SEO施策留意点
中国Baidu登録、簡体字翻訳、WeChat導線ICP取得、表現規制、サーバー配置
米国レビュー強化、ロングテールKW、構造化データ競合性が高く、差別化が不可欠
東南アジアモバイル最適化、SNS導線付きLPの設計決済・配送の多様性に対応する必要あり

越境ECサイトにおけるSEO戦略と信頼性を高める設計のコツ

海外ユーザーに信頼されるサイト構築は、単に購買意欲を高めるだけでなく、SEO上の評価にも直結します。検索エンジンは「信頼性の高いサイト」を優先的に表示する傾向があるため、情報設計UXの両面から信頼性を高める工夫が不可欠です。

信頼を獲得する越境ECサイトの情報設計とは

海外ユーザーにとって、言語の壁や返品リスクは購入の大きな障壁です。そのため、まず求められるのは「安心できる情報が十分にあるか」です。
具体的には、レビュー・FAQ・配送条件・返品規定の明示が信頼獲得に直結します。特に「返品可(Returnable)」や「全額返金保証(Money-back Guarantee)」の表記は、購入の後押しとして非常に効果的です。

加えて、問い合わせ窓口の情報や対応時間を明示することで、トラブル時の不安を軽減できます。英語でのチャットサポートや、よくある質問を多言語で整備することも有効な施策です。
こうした対応は、検索エンジンからの信頼(=SEO評価)にも間接的に寄与します。

E-A-Tとユーザー体験を両立する越境ECにおけるSEOの工夫

Googleは「専門性(Expertise)」「権威性(Authoritativeness)」「信頼性(Trustworthiness)」の3要素=E-A-Tを重視しています。これは情報の信ぴょう性を評価する基準であり、特に健康食品や化粧品、育児用品といった「YMYL(Your Money or Your Life)」領域の商品では評価がシビアになります。

そのため、商品説明だけでなく、使い方ガイド・成分の根拠・第三者機関の認証などを掲載することで専門性や権威性を高めましょう。FAQや使い方動画の埋め込みは、ユーザー体験(UX)を向上させると同時に、検索エンジンの評価指標にもポジティブに働きます。

自社ブランドを伝える「About us」の活用法

海外ユーザーが購入前にチェックするページのひとつが「About us」です。特に、ブランドや会社に初めて接触するユーザーにとっては、企業の素性が見えることが安心材料となります。
「どこで創業されたか」「どのような理念で商品を作っているか」「どんな顧客に選ばれているか」などの情報は、信頼感の形成に大きく寄与します。

加えて、「サステナビリティへの取り組み」「地域社会との関係」「製品の製造工程」など、企業の価値観や社会的姿勢を示す内容も英語で掲載することで、ブランドの個性が明確になり、SEOにおいても指名検索や外部リンクの獲得につながる可能性が高まります。

まとめ

越境ECでのSEO戦略は、翻訳やデザインだけでなく、検索から購入までの体験全体を最適化するプロセスです。

本記事では、「全体像の理解」から「実務ステップ」「成功事例」「信頼されるサイト設計」までを一貫して紹介しました。
まずは、現地市場に合ったキーワードの選定と、最低限の構造最適化から着手することで、確実に成果への第一歩を踏み出せます。

海外SEOには、技術的・法的な課題も含まれるため、専門家に一度相談してみることをおすすめします。必要に応じて一部を外注し、自社の強みを活かした形で運用するのも有効な戦略です。

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