【2025年最新版】アメリカの関税率一覧 主要品目と関税対策を解説!

アメリカに商品を輸出・輸入する際、避けて通れないのが「関税」です。関税率は品目や原産国によって異なり、協定や政策によっても大きく変動します。

2025年のアメリカでは、保護主義的な通商政策がさらに強まり、実効関税率は17.9〜18.0%と、1930年代以来の高水準に達しています。背景には、貿易赤字を「国家安全保障上の脅威」とみなす方針のもと、大統領令に基づくIEEPA関税の発動があります。日本からの輸入品には15%、中国からは一時的に上限30%の追加関税が課されるなど、従来のMFN税率に複数の制度が“上乗せ”される構造となっています。

本記事では、アメリカの関税制度の基本から、2025年時点の最新税率、主要品目の傾向、企業が取るべき実務的な対策までをわかりやすく解説します。

 

アメリカの関税とは?仕組みと基本ルール

関税とは、輸入品に対して政府が課す税金のことであり、アメリカでは主に国内産業の保護、税収の確保、貿易政策の調整を目的として設定されています。

アメリカの関税制度は、関税率課税対象適用基準などが細かく規定されており、輸入業者はこれらを理解し、適切な申告を行う必要があります。

2025年現在、アメリカの関税制度は従来の法定関税だけでなく、大統領令に基づくIEEPA(国際緊急経済権限法)関税の発動によって、より動的な構造へと変化しています。
この制度では、貿易赤字を「国家安全保障上の脅威」とみなし、輸入品に対して最大125%の追加関税を課すことが可能です。
その結果、企業は単なる関税率の確認にとどまらず、大統領令やUSTR(通商代表部)の発表動向も常に把握する必要があります。

関税の仕組み

アメリカの関税は、主に 従価税(輸入品の価格に応じた税率) と 従量税(輸入品の数量や重量に応じた税率) に分類されます。

関税率は、米国国際貿易委員会(USITC)が管理する「ハーモナイズド・タリフ・スケジュール(HTSUS)」によって決定され、輸入品の分類ごとに異なる税率が適用されます。

さらに2025年には、HTSUSに基づく分類(静的体系)に加え、IEEPA関税やセクション301・232など複数の法的措置が重複適用される「スタッキング構造」が一般化しています。
これにより、HTSUS上の税率が2.5%であっても、IEEPAや制裁関税の上乗せによって実際の税率が15〜30%以上に達するケースもあります。

主な関税の種類

・通常関税(MFN税率)

最恵国待遇(MFN)を受ける国々に適用される標準的な税率。

・特恵関税

特定の発展途上国からの輸入品に適用される低税率または免税措置。

・追加関税(制裁関税)

特定国に対する制裁措置として課される関税(例:中国製品への制裁関税)。

関税は企業の輸入コストに直接影響を与えるため、企業戦略や価格設定に大きな影響を及ぼします。

特に近年は米中貿易摩擦などの影響で関税政策が変動しやすく、企業は常に最新の動向をチェックし、適切なリスク管理を行う必要があります。

2025年現在では、この傾向がさらに強まり、実効関税率は17.9〜18.0%と1930年代以来の高水準に達しています。
日本からの輸入品には15%のIEEPA関税、中国からの輸入には上限30%の追加関税が適用されておりFTAの有無や原産地要件によっても負担率が大きく変わる状況です。

アメリカの関税率の決まり方と計算方法

アメリカの関税は、輸入品の種類原産地貿易協定の適用可否によって決まります。適切な関税率を理解し、計算方法を把握することは、貿易コストの最適化に不可欠です。

関税率の決定要素

HSコード(品目分類)
アメリカは「ハーモナイズド・タリフ・スケジュール(HTSUS)」を基に、輸入品を細かく分類し、各品目に異なる関税率を適用します。HSコードの違いによって関税率が変わるため、正確な分類が重要です。

原産地
原産国によって適用される関税率が異なります。特に自由貿易協定(FTA)が適用される場合、関税が減免される可能性があります。例えば、USMCA(旧NAFTA)の対象国であるカナダやメキシコからの輸入品は、特定の要件を満たすことで関税が免除されます。

貿易協定の影響
アメリカは、特定の国との間でFTAを締結しており、これにより関税が引き下げられる場合があります。さらに、特定の国に対する制裁関税(例:中国製品への追加関税)が課されることもあり、輸入品のコストに大きく影響を及ぼします。

現在は、こうした従来の協定関税に加えて、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく追加関税が上乗せされています。
日本からの輸入品には15%、EUからはMFNまたは15%のいずれか高い税率、中国からは上限30%が課されています。
これらは貿易協定の有無に関わらず適用されるケースがあり、実際の負担率はFTAの適用だけでは説明できないほど複雑化しています。
したがって、企業はHTSUS税率+追加関税の合計額を基準にコストを試算する必要があります。

関税額の計算方法

アメリカでは、輸入品の価格を基に関税額を算出します。主な計算基準は以下の2種類です。

計算方法 内容
CIF価格基準 商品価格 + 輸送費 + 保険料を含む総額に関税を課す
FOB価格基準 輸送費・保険料を含まない輸出時点の価格に関税を課す

アメリカでは、基本的に FOB価格基準 を採用しており、輸入品の原価のみを対象に関税を計算します。

しかし、関税の詳細は品目や取引条件によって異なるため、輸入業者はHTSUSを参照し、適用される税率を確認することが重要です。

最新のアメリカの関税率一覧|主要品目の税率をチェック

アメリカの関税率は品目ごとに異なり、国内産業の保護や貿易政策によって設定されています。

アメリカの主要品目別 関税率一覧(2025年時点)

品目関税率(目安)補足
衣類・繊維製品10~32%高級ブランドや皮革製品は高関税対象
自動車(乗用車)2.5%USMCA対象車は免税
ピックアップトラック25%国内産業保護を目的とした高関税
電子機器(一般)0~5%一部部品で追加関税あり
スマートフォン・パソコン無税(例外あり)製造国により差異
半導体・電子部品5~15%(中国製は最大30%)国家安全保障名目の再分類対象
電気自動車(EV)・バッテリー最大25%(対中製は45%)IEEPAおよびセクション301延長措置の対象
鉄鋼・アルミ製品7.5~25%通商拡大法232条に基づく追加課税
食品・農産品(生鮮・原材料)0~低関税一部無税。加工度により変動
加工食品・高級品高関税(最大30%)ワイン・菓子類などが該当
乳製品・アルコール飲料高関税(EU産は一部10%へ引き下げ)関税調整交渉により一部軽減

衣類・繊維製品

衣類や繊維製品には10~32%の関税がかかります。特に皮革製品や高級ブランド品は高関税の対象となるため、輸入コストが大きく影響を受けます。

2025年には、サステナビリティ基準を満たさない一部製品に対して環境基準関税(グリーンタリフ)の試験導入が検討されています。
リサイクル素材の使用率や生産過程のCO₂排出量が、今後の税率設定に影響する可能性があります。

自動車

乗用車の関税率は2.5%と比較的低いですが、ピックアップトラックには25%の高関税が課せられています。

これは国内自動車産業の保護を目的とした措置です。

特に2025年は、EV(電気自動車)やバッテリー部品が重点課税対象となっています。対中製EVには最大45%の関税が適用され、北米域内生産への移行が進んでいます。
一方、USMCA協定の原産地要件を満たす車両については免税措置が継続中です。

電子機器

電子機器の関税率は0~5%と低めに設定されています。

特にスマートフォンやパソコンは無税で輸入可能な場合が多いですが、一部の部品や製造国によっては追加関税が発生する可能性があります。

半導体・電子部品については、サプライチェーン強靭化を目的とする再分類措置により、一部の中国・台湾製品で5〜15%の関税引き上げが実施されています。これはIEEPAおよびセクション301の延長措置に基づく対応です。

半導体・電子部品

アメリカでは2025年以降、半導体や電子部品が「国家安全保障」および「サプライチェーン強靭化」の観点から再分類されました。
中国・台湾・韓国など特定国からの輸入に対しては、HTSUSの基本税率に加えて最大30%の追加関税が課せられるケースがあります。
特にAI・通信・軍事転用が懸念される高性能半導体は監視対象となっており、企業は輸入元のトレーサビリティ管理原産地証明の精緻化が求められます。

電気自動車(EV)・バッテリー

EVおよびリチウムイオンバッテリー関連製品は、2025年時点でアメリカの最も高関税な輸入品目の一つです。
特に中国製の電気自動車や電池セルには、最大45%の追加関税(IEEPAおよびセクション301延長措置)が適用されています。
一方で、USMCA加盟国(カナダ・メキシコ)や日米貿易協定を通じた域内調達・現地生産を行う場合は、関税の軽減や免除が可能です。
今後は「脱炭素・安全保障」の両面で規制が強化される見通しです。

鉄鋼・アルミ製品

鉄鋼やアルミ製品は、通商拡大法232条に基づき、「国家安全保障上の重要物資」として追加関税の対象となっています。
2025年時点では、通常税率に加え7.5〜25%の上乗せ関税が適用されており、特に中国やロシア、トルコからの輸入には厳しい措置が継続中です。
ただし、EUや日本との間では数量制限(クオータ制)による優遇枠が設けられており、一定量までは関税を回避できる場合もあります。
製造業者は仕入ルートを多角化し、調達コストの安定化を図ることが重要です。

食品・農産品

食品・農産品の関税は幅が広く、生鮮食品や一部の原材料は無税または低関税となる傾向があります。一方、加工食品や高級食品には最大30%の関税が課せられます。

食品分野では、米中貿易摩擦の影響が続いており、中国産の一部加工食品(冷凍野菜・調味料など)に最大25%の追加関税が課されています。
さらに、2025年後半には「カーボン・フットプリント」を基準とした税率改定が検討されており、輸送距離や生産方法も税負担に影響し得ます。

乳製品・アルコール飲料

乳製品やアルコール飲料は特に高関税の対象となるため、輸入コストが大きく上昇する可能性があります。

特にワインやウイスキーなどのアルコール飲料は、EUとの関税調整交渉(2025年更新)の結果、一部で税率が15%→10%に引き下げられました。
一方で、非協定国(特にアジア・中東地域)からの輸入には依然として高関税が維持されています。

このように、アメリカの関税率は従来の保護主義的措置に加え、安全保障・環境・サプライチェーン政策が複合的に反映される構造へと変化しています。
最新の関税表を確認する際は、HTSUSだけでなく、USTR・商務省・ホワイトハウス経済局(NEC)の発表も定期的に参照することが重要です。

アメリカの関税率を調べる3つの方法【最新データの確認】

アメリカの関税率は頻繁に変更されるため、最新の情報を正確に把握することが重要です。以下の3つの方法で関税率を調べることができます。

1. HTSUS(米国関税率表)を使う

HTSUS(Harmonized Tariff Schedule of the United States)は、アメリカの輸入品に適用される関税率をまとめた公式関税率表です。

品目ごとのHSコードを調べることで、正確な税率を確認できます。最新のHTSUSは米国国際貿易委員会(USITC)の公式サイトで閲覧可能です。

https://hts.usitc.gov/

2.CBP(米国税関・国境警備局)の公式サイトを活用

CBP(U.S. Customs and Border Protection)のウェブサイトでは、関税だけでなく輸入規則や適用条件、特定国との貿易協定の影響なども確認できます。特に、FTAの適用条件や特例措置に関する情報を得る際に役立ちます。

https://www.cbp.gov/

3.貿易コンサルタントや専門家に相談

関税の適用条件は品目や輸送方法によって異なるため、計算が複雑になることがあります。

特に、大規模な輸入や特殊な製品の輸送を行う場合、貿易コンサルタントや専門機関に相談することで、最適な関税率や節税の方法を把握できます。

最新の関税情報を確認し、適切な対策を取ることで、貿易コストを抑え、スムーズな取引を実現できます。

HTSUSやUSTR発表は四半期ごと(年4回)更新されるため、年初の税率だけでなく「途中改定」も確認することが重要です。
企業は、少なくとも3か月ごとに公式データを再チェックすることで、不要な課税リスクを防ぐことができます。

アメリカの関税を抑える方法

アメリカへの輸出を行う際、関税負担を抑えることはコスト削減の重要な要素となります。そのためには、以下の方法を活用することが有効です。

FTA(自由貿易協定)の活用

アメリカは複数のFTAを締結しており、これを利用することで関税の削減や免除を受けることができます。以下は、主なFTAとそのメリットを示したものです。

FTA 特徴
USMCA(旧NAFTA) カナダ・メキシコとの貿易で関税削減
日米貿易協定 一部の工業製品が無税
韓米FTA 電子機器・自動車の関税優遇

FTAの特典を受けるためには、輸入品が協定対象国内で生産されたことを証明する 原産地証明書(Certificate of Origin) が必要です。特定の生産要件を満たすことで、関税の削減が可能となります。

2025年以降は電子化が進み、デジタル証明(e-Origin)による手続きも広がっています。

FTZ(外国貿易地域)の活用

FTZ(Foreign-Trade Zone) とは、アメリカ国内に設置された特別区域で、ここを活用することで関税コストを抑えることができます。以下のようなメリットがあります。

メリット 説明
輸入時点で関税を
免除・延期
FTZに保管中は関税不要、再輸出なら
関税が完全免除
製造・加工後の関税最適化 FTZ内で加工後、完成品に適用される
低税率を利用可能
キャッシュフロー改善 関税支払いを遅らせることで
資金繰りが円滑化

FTZを活用することで、関税負担を抑えるだけでなく、IEEPA追加関税の回避原産地変更(リシッピング)戦略にも応用できます。
輸入量の多い企業は、財務戦略の一環として導入を検討する価値があります。

追加関税・特別関税に注意!

アメリカでは、通常の関税に加えて制裁関税・特別関税が課されるケースが増えています。
特に2025年時点では、中国・ロシア・ベトナムなど特定国に対し、IEEPA関税(最大30〜45%)が適用されています。

品目 追加関税率
電子部品・機械 最大25%(一部30%)
繊維製品 最大25%
EV・電池セル 最大45%(対中製品)

対象品目や税率は頻繁に改定されるため、USTR(米国通商代表部)やUSITCの最新リストを定期的に確認することが重要です。

アンチダンピング関税(AD)・相殺関税(CVD)

特定の輸入品が不当に安価である場合や、政府補助を受けていると判断された場合、アンチダンピング関税(AD)や相殺関税(CVD)が課されることがあります。

2025年には、鉄鋼・アルミ製品に加えて、化学薬品・医薬品原料・リチウムバッテリー材料も新たに対象に加わりました。
対象国は主に中国・インド・インドネシアなどで、税率は10〜80%以上と高水準です。
輸出前に「AD/CVD対象リスト」を確認し、該当リスクを早期に把握しておくことが求められます。

まとめ|アメリカの関税対策は情報収集と戦略がカギ

アメリカの関税は品目ごとに異なり、FTAの適用や特別措置によって変動するため、最新情報の把握が不可欠です。HTSUSやCBPの公式データを活用し、適用される関税率や規制を確認しましょう。

また、FTAを活用することで関税の削減が可能になり、FTZの利用により関税支払いを延期・免除できる場合もあります。適切な関税対策を講じることで、貿易コストを最小限に抑え、効率的な輸入戦略を実現できます。

最新の動向を定期的にチェックし、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

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