【徹底解説】参政党はなぜ人気?2025年参議院選から読み解くその理由

目次

    2025年7月20日に行われた第27回参議院選挙で、参政党は大きな注目を集めました。報道によれば、自民・公明連立与党は歴史的敗北を喫し、衆参両院で少数与党に転落したと報じられています。そのなかで参政党は比例代表や一部の選挙区で議席を確保し、野党の中で存在感を強めました。

    なお、今回の参議院選挙の仕組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

    2025年参議院選の仕組みを完全解説:投票前に知っておきたいポイント

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    では、なぜ参政党はここまでの人気を得るに至ったのでしょうか。

    本記事ではその理由を、教育や食と健康、地方創生、SNS戦略、さらには貿易政策との接点も含め、多角的に分析します。

    参政党の人気はどこから生まれたのか

    参政党の躍進は一時的なブームではなく、日本社会が抱える構造的な課題に根ざした現象です。2025年参議院選挙における結果もまた、長年の不満や期待が噴出したものだといえます。

    ここでは、まず「そもそも参政党とは何か」を整理したうえで、有権者の既存政党への不信感や草の根運動に焦点を当て、その人気の源泉を解き明かします。

    参政党とはどんな政党か

    参政党は2020年に設立された比較的新しい政党で、「教育・食と健康・地方創生」の三本柱を政策の軸に据えています。特徴は、従来の大政党のような派閥や大規模な資金力に頼らず、市民参加型の政治運営を目指している点にあります。

    党名の「参政」には「国民が主体的に政治に参加する」という意味が込められており、単なる支持者ではなく「仲間」として国民を巻き込む姿勢を打ち出しています。

    設立当初は政界での影響力は限定的でしたが、YouTubeやSNSを活用した情報発信を通じて徐々に知名度を高めました。2022年参院選で初めて議席を獲得し、2025年の参院選でさらに躍進したことで、国会内での存在感を確固たるものにしました。

    既存政党への不信感と参政党の台頭

    戦後日本の政治は、自民党を中心に安定してきた一方で、時代の変化に応じた政策転換が十分に行われてこなかったという批判があります。特に2010年代以降、経済成長の停滞少子高齢化が加速するなかで、次のような不満が顕在化しました。

    有権者の不満 背景 参政党が訴えたメッセージ
    経済格差の拡大 非正規雇用の増加、
    地方と都市の所得差
    「地域ごとに経済を立て直す」
    地方の衰退 人口減少と産業空洞化 「地方創生と自給自足の強化」
    外交での譲歩感 TPPやEPAでの農業分野の開放 「国益を守る主体的交渉」
    政治不信 長期政権による既得権益化 「国民が主役の政治」

    特に2025年参院選では「既存の大政党は国民よりも業界団体や国際的枠組みに配慮しているのではないか」という不信が広がり、無党派層が投票行動を変える動機となりました。

    参政党はこの点を突き、国民生活に直結するテーマを前面に押し出し「自分たちの声を国政に届ける」という旗印を掲げました。

    草の根運動と支持基盤の広がり

    参政党の成長を語るうえで欠かせないのが、中央からの指示に頼らない草の根の活動です。従来の大政党がテレビCMや新聞広告を軸に選挙運動を展開する一方で、参政党は次のような独自戦略を採用しました。

    地域密着型の勉強会

    全国各地で小規模な集会を開催し、住民の声を吸い上げる形式を重視。これにより「参加型政治」の実感を醸成しました。

    ボランティア主導の選挙活動

    資金力に乏しい分、ポスター貼りやチラシ配布を市民ボランティアが担い、コストを抑えつつ人々の関与を深めました。

    オンラインとオフラインの融合

    街頭演説をSNSで拡散するなど、デジタルと現場を結びつける手法を徹底。これにより遠方の支持者も活動に参加可能となりました。

    2025年参院選のある地方選挙区では、数十人規模の勉強会から始まった活動が口コミで広がり、農業関係者地元企業経営者を巻き込みました。

    その結果、当該選挙区で参政党は前回比で得票率を大幅に伸ばし、比例代表全体の議席確保にもつながりました。

    このように、参政党の人気は「政策の新しさ」だけではなく、国民の政治不信を受け止める姿勢と草の根の参加型運動によって支えられているといえます。

    参政党の掲げる政策とその魅力

    参政党の人気の大きな理由は、生活に密接に関わる政策を前面に掲げている点にあります。多くの既存政党が経済成長や外交など抽象的なテーマを打ち出す中、参政党は「教育」「食と健康」「地方創生」といった有権者の日常生活に直結する分野に重点を置きました。

    そのため、政策が単なるスローガンにとどまらず、有権者自身の生活課題と結びつきやすくなっています。

    教育改革への3つの期待

    戦後日本の教育は、偏差値や受験に直結する知識詰め込み型が主流でした。しかし社会が急速に変化する中で、この教育が「考える力や主体性を育てられない」という批判を浴びてきました。参政党はここに切り込み、「自立した人材の育成」を旗印に掲げています。

    1.自立心を育む教育

    暗記偏重から脱却し、ディスカッションや体験学習を重視する方針を提示。AIやグローバル競争の時代に対応できる人材育成を目指しています。

    2.歴史教育と道徳教育の強化

    自国の歴史や文化に誇りを持つ教育を推進することを主張。これにより「次世代を正しく育てたい」と考える親世代や教育現場から支持を得ています。

    3.若年層への訴求

    「将来を担う世代にチャンスを与える」というメッセージは、高校生や大学生にも響き、SNSを通じて広く拡散されました。

    食と健康をめぐる3つの政策

    食と健康は、参政党が他党と大きく差別化できた分野です。特に日本は食料自給率が低く、輸入に大きく依存しているため、国際情勢の変化がそのまま食卓に影響します。

    1.輸入食品の安全性への警鐘

    添加物や農薬、遺伝子組み換え食品への懸念に対し、参政党は「安心できる食を守る」と強調。輸入食品の安全基準見直しや表示の厳格化を掲げています。

    2.国産優先の姿勢

    国産農産物の消費促進や地産地消を訴え、地方農業者からの支持を集めました。

    3.健康志向の家庭層の共感

    生活習慣病や子どもの食育を心配する層に強く訴求。「国民の健康を政治が守る」というスタンスが投票行動につながりました。

    地方創生と地域経済を支える3つの具体策

    地方の人口減少や産業の空洞化は日本の構造的課題です。参政党は「地方創生」を掲げ、大都市一極集中に対抗しました。

    1.地域資源の活用

    農業、林業、観光といった地元資源を活かし、雇用を創出。地域経済が自立できる仕組みを提案しました。

    2.中小企業支援

    輸出やデジタル化を通じて中小企業の競争力を強化。特に若い起業家層から支持を獲得しました。

    3.移住・定住促進策

    子育て環境の改善や住宅支援を通じ、都市から地方への人の流れを後押し。人口減少に悩む自治体に歓迎されました。

    参政党の分野ごとの政策と支持理由

    政策分野 参政党の主張 支持層に響く理由
    教育 自立心を育む教育、歴史認識の見直し 子育て世代、教育現場、若年層
    食と健康 輸入食品の安全性確保、国産重視 健康志向の家庭層、農業従事者
    地方創生 地域資源の活用と雇用創出 地方住民、中小企業経営者
    貿易政策 自給率向上と国益重視の交渉 経済安全保障を重視する層

    教育政策では、詰め込み型からの脱却を掲げ、ディスカッションや体験学習を重視する「主体性教育」を推進しています。これにより、AI時代や国際競争の中で通用する自立した人材の育成を目指しています。

    子育て世代や教育現場から強い支持を受け、若年層にとっても将来に直結するテーマであるため共感を集めやすい分野です。

    食と健康分野では、日本の低い食料自給率を背景に、輸入食品の安全性や添加物問題に警鐘を鳴らし、国産品優先の方針を打ち出しました。

    「子どもの食育」や「生活習慣病予防」といった身近な課題に直結しているため、健康志向の家庭層や農業従事者からの支持を強固なものにしています。

    地方創生では、人口減少や産業の空洞化といった構造的課題に対し、農業・林業・観光といった地域資源を活用した雇用創出策を提案しました。これにより、中小企業経営者や地元住民から「地元活性化につながる現実的な政策」として高く評価されています。

    さらに、貿易政策は参政党の根幹にあるテーマです。食料安全保障を国家の安全保障と結びつけ、輸入依存を縮小して国産比率を高める方針を明確に掲げています。

    WTOルールを尊重しつつも、必要に応じて柔軟な関税措置を検討する姿勢を示しており、国際情勢に左右されない安定供給を求める有権者に強く響いています。

    参政党とSNSの活用による広がり

    参政党が短期間で急速に支持を拡大できた背景には、SNSの積極的な活用があります。従来の大政党がテレビや新聞などマスメディアを主軸に選挙戦を展開していたのに対し、参政党はデジタル時代の特性を活かし、情報をダイレクトに有権者へ届けました。

    これにより、従来の政治にアクセスしにくかった層、特に若年層無党派層との接点を築くことに成功しました。

    情報発信スタイルと双方向性

    参政党のSNS戦略の最大の特徴は「わかりやすさ」と「双方向性」です。

    専門用語を避けた平易な説明

    複雑な政策も、専門用語をかみ砕いて日常生活に結びつけて説明することで、政治に不慣れな層にも理解しやすくしました。

    たとえば「食料安全保障」を「家族の食卓を守ること」と表現するなど、具体的かつ親しみやすい言葉を選んでいます。

    YouTubeを活用した長尺配信

    街頭演説や政策説明をそのまま動画化し、公式チャンネルで配信。演説を聞きに行けない層も視聴でき、コメント欄で議論が活発に行われました。

    ライブ配信での質疑応答

    党代表や候補者がSNSライブで直接質問に答えることで、「声を聞いてもらえる」という参加意識を高めました。これは従来の一方通行型の政治広報とは大きく異なります。

    SNS活用の具体的成果

    プラットフォーム 活用方法 効果
    YouTube 政策動画・街頭演説の配信 長時間の解説で理解促進、視聴回数の拡大
    X(旧Twitter) 短文での政策発信、
    ハッシュタグ活用
    拡散力が強く、若年層への浸透
    Instagram インフォグラフィックで政策要約 視覚的に政策を理解しやすい
    TikTok 短い政策解説動画 政治に関心が薄い層への入り口

    このように、各SNSの特性を踏まえてメッセージを最適化したことが、幅広い支持獲得につながりました。

    若年層への訴求力

    参政党がSNSを通じて最も大きな成果を上げたのは、若年層の動員です。これまで若年層は「投票しても社会は変わらない」と感じ、投票率が低い傾向にありました。

    しかし2025年参院選では、参政党のSNS戦略がこの状況を動かしました。

    教育・食料といった身近なテーマとの接点

    「教育の改革」「安心できる食」「地方での雇用創出」といったテーマは、若者自身の将来設計と密接に結びついており、政策が「自分事」として受け止められました。

    インフルエンサーとの連携

    一部の著名YouTuberやSNSインフルエンサーが参政党の動画や政策を紹介したことで、普段は政治に関心のない層にも届きました。

    投票行動への直接的影響

    2025年参院選後の調査によると、20代有権者の中で「SNSで参政党を知った」という回答が大幅に増加し、その多くが実際に投票行動につながったと報告されています。

    若年層への訴求の流れ

    ・SNSで短い動画や投稿を見て関心を持つ

    ・YouTubeの長尺動画やライブで詳細を知る

    ・コメントや質問で直接やり取りし、参加意識を得る

    ・「自分も政治を動かせる」と感じ、投票へと行動

    このプロセスは従来の選挙活動にはなかったものであり、参政党の支持基盤拡大に大きく寄与しました。

    こうしてみると、参政党のSNS戦略は単なる広報活動ではなく、「政治を自分ごと化」するための参加型ツールとして機能していることがわかります。

    これは他党が容易に模倣できない強みであり、今後の日本政治における新しいスタンダードとなる可能性があります。

    参政党と貿易政策の接点

    参政党が掲げる「食と健康」「地方創生」は、単なる国内課題にとどまらず、国際貿易と密接に結びついています。

    2025年参議院選挙では、食料安全保障と輸入依存の問題が大きな争点となり、参政党の主張が注目を浴びました。

    なお、食料安全保障をより多角的に読み解くにはこちらの記事も参考になります。

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    食料安全保障と輸入依存

    日本の食料自給率はカロリーベースで約38%(農林水産省「食料需給表」2024年速報値)と、先進国の中でも低い水準にとどまっています。この構造は、日本の食卓が国際情勢に直撃されやすいという深刻なリスクを抱えていることを意味します。

    実際、2022年のウクライナ情勢によって小麦価格が急騰した事例は、輸入依存度の高い日本が国際的な供給不安にいかに脆弱であるかを浮き彫りにしました。また、TPPやEPAといった自由貿易協定によって輸入品の価格は一定程度安定する一方で、国内農業は厳しい国際競争にさらされ、農家の収入減少や地域経済の弱体化につながる懸念も指摘されています。

    こうした状況に対し、参政党は「輸入依存を縮小し、国産比率を引き上げる」ことを明確に掲げています。食料を単なる経済問題ではなく国家安全保障の一環と位置づけることで、食料供給の安定性を確保しようとする姿勢です。

    この主張は農業従事者から強い支持を受けただけでなく、「将来、食料が不足するのでは」という不安を抱える一般家庭にも深く響き、2025年参院選における参政党の支持拡大に大きく寄与しました。

    農業政策とWTO・関税ルールとの調整

    世界貿易機関(WTO)のルールは、原則として関税の引き下げや貿易の自由化を推進しています。しかし参政党は、この国際ルールを絶対視するのではなく、国民への安定的な食料供給を最優先する立場を明確にしています。

    その具体的な方針の一つが、柔軟な関税措置の検討です。参政党は「食料安全保障を目的とする場合には、一時的に関税を強化すべき」との姿勢を打ち出し、国際市場の価格変動に左右されにくい仕組みを構築しようとしています。

    これにより、農業の持続可能性を担保しながら、消費者に安定した国産食品を届けることを重視しています。

    加えて、国内農業者の保護と強化にも注力しています。価格競争に押されて疲弊する農家を救うため、補助金の拡充や新技術の導入支援を組み合わせ、農業基盤を強固にする方針です。これにより、生産者が安定した収益を確保し、次世代に農業を引き継げる環境を整えることを目指しています。

    さらに、消費者の立場にも配慮がなされています。参政党は「安いが安全性に疑問のある輸入品」に依存するのではなく、「少し高くても安心できる国産品」を選べる社会を理想としています。

    そのための制度設計を行うことで、国民が安全で信頼できる食卓を維持できる環境づくりを進めているのです。

    主要農産物の輸入依存度と参政党の主張

    参政党の政策を理解するには、日本の農産物がどの程度輸入に依存しているかを知ることが重要です。特に小麦や大豆などの基幹作物は海外依存度が非常に高く、国際情勢によって価格や供給が大きく左右されます。

    品目 日本の輸入依存度(目安) 参政党の主張
    小麦 約90% 国産比率の引き上げ、国内農家支援
    大豆 約95% 食料安全保障の強化、自給率向上
    牛肉 約60% 地元生産者の支援、ブランド牛強化
    約10% 主食の自給維持、輸入米依存の回避

    小麦は国内生産のコストが高く、価格競争力が不足しているため輸入に大きく依存しています。参政党はこれを改善するため、国内農家への支援策や国産比率の引き上げを掲げています。

    大豆は食用油や飼料など幅広い用途に使われるため、依存度は95%と極めて高いのが現状です。輸入先の情勢不安が直ちに国内供給に影響するため、参政党は「食料安全保障」の観点から自給率向上を強調しています。

    牛肉は消費が増加する一方で国内生産が追いついておらず、約6割を輸入に頼っています。参政党は地元の畜産農家を支援し、ブランド牛の強化によって国際競争力を高める方針を示しています。

    は日本で唯一、自給が比較的安定している品目です。しかし参政党は「輸入米依存を回避し、主食の自給を維持する」ことを重視し、農業基盤の維持・強化を訴えています。

    このように、日本の食料供給は国際市場に大きく依存しており、紛争や異常気象などの突発的な事態が発生すれば直ちに影響を受ける危険性があります。参政党はこの脆弱性を国家的な安全保障課題と位置づけ、政策の中心に据えているのです。

    参政党の貿易政策が支持される理由

    参政党の貿易政策は単なる農業保護ではなく、次のような理由から幅広い層に支持を得ています。

    家庭層:「安心できる国産品を子どもに食べさせたい」というニーズに合致

    農業者:価格競争に苦しむ国内農業を守るための現実的施策

    地方自治体:地方経済の基盤である農業を守ることが、人口流出の防止にもつながる

    無党派層:食料危機や国際不安定化を見据えた先手の政策として評価

    こうした背景から、2025年参院選でも「食料安全保障」は大きな争点となり、参政党が注目を集める要因となりました。

    まとめ

    2025年参院選後の各種報道や調査では、20代有権者の中で「SNSで参政党を知った」と回答する割合が増加し、実際に投票行動に結びついたケースが多かったと伝えられています。

    その人気を支えるのは、教育、食と健康、地方創生といった生活に直結する政策であり、さらに貿易や食料安全保障といった国際的課題にも踏み込んでいる点です。今後、参政党が日本の政治に与える影響はさらに大きくなると見られます。

    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。