【2025年最新版】メキシコの関税制度をわかりやすく徹底解説

目次

    グローバル経済が大きく揺れるなか、製造拠点や輸送ルートの見直しが世界中で進んでいます。その中で存在感を増しているのがメキシコです。

    アメリカとの地理的・経済的な近接性、各国との自由貿易協定(FTA)の充実、そして戦略的な通商政策が相まって、メキシコは国際ビジネスの要所として再評価されています。

    特に注目されているのが、メキシコの関税制度です。これは単なる税率の話にとどまらず、企業のコスト構造、サプライチェーン設計、規制対応といった多方面に影響を与える重要なテーマです。

    本記事では、最新の関税制度の動向とともに、日系企業がメキシコとの貿易で注意すべきポイントを体系的に解説します

    メキシコの関税制度の基本構造とは?

    メキシコの関税制度は、輸入時に発生する税金や手数料の体系を通じて、国内市場の保護と財政収入の確保を目的としています。同国は1995年にWTO(世界貿易機関)に加盟しており、その関税政策は多国間ルールに基づいて運用されています。

    関税制度を理解する上で押さえておきたいポイントは、大きく次の三点です。

    1.関税の種類

    2.関税率の水準と平均値

    3.関税の算定方法と関係機関の役割

    関税の種類と特徴

    メキシコでは、以下の3種類の関税が採用されています。

    ・従価税
    輸入品のCIF価格(運賃・保険料込み)に対して一定の割合で課税される方式で、最も一般的です。

    ・従量税
    単位あたり(金額ではなく重量や数量)に基づいて課税される方式で、特定品目に適用される例外的な制度です。

    ・混合税
    従価税と従量税を組み合わせた方式で、現行制度ではほとんど使われていませんが、制度上は存在しています。

    たとえば、機械部品や自動車部品といった工業製品には主に従価税が適用されており、一部の農産品には従量税が設定されています。

    平均関税率と品目別傾向

    2023年時点におけるメキシコの加重平均関税率は約6.8%です。ただし、これは品目ごとに大きく異なり、工業製品では5〜7%程度に抑えられている一方で、農産品では10%を超えることもあります。

    また、FTA(自由貿易協定)を活用することで、これらの税率を実質的にゼロに抑えることも可能です。たとえば、日墨経済連携協定(EPA)を利用すれば、日本から輸出される多くの製品は無税でメキシコに輸出できます。

    関税の算定方法と手続き

    メキシコにおける関税額の算出は、以下の要素に基づいて行われます。

    ・関税課税対象となる価格(CIF価格)

    ・適用される税率(通常関税またはFTA優遇税率)

    ・関連する関税外賦課金(付加価値税、特別税など)

    制度の実務運用は、経済省(SE)および税関庁(SAT)が所管しています。企業が輸入を行うには、事前の通関手続き、HSコードの確認、原産地証明書の取得などを適切に準備する必要があります。

    このように、メキシコの関税制度は国際的な基準に則りつつも、FTAや国内政策の影響を強く受けており、常に最新情報を踏まえた実務対応が求められます。

    メキシコの関税が注目される背景

    近年、世界の貿易構造は激変しており、その中心に位置づけられる国としてメキシコが急速に注目を集めています。

    これは単なる地理的条件だけでなく、地政学的リスク回避の観点、各国との関税政策の違い、そしてメキシコ政府による積極的な制度支援といった複合的な要因が絡み合っているためです。

    米中対立とサプライチェーンの地殻変動

    中国に依存した製造・物流体制は、米中の関税対立や安全保障リスクにより、今や大きな不確実性を抱えるようになっています。これを受けて多くのグローバル企業が実行に移しているのが、「チャイナ+1」戦略「ニアショアリング(近隣国への生産移管)」です。

    とりわけ米国市場を主戦場とする企業にとって、メキシコはその代替先として圧倒的に有利な選択肢とされています。

    メキシコの地理的・物流的なアドバンテージ

    ・米国と国境を接し、陸路での輸送が可能(24〜72時間以内に主要都市に到達)

    ・メキシコ湾と太平洋の両岸に港湾を持ち、アジアおよび欧州との輸送にも柔軟に対応

    ・米国とタイムゾーンが重なるため、リアルタイムでの調達・製造・販売連携が容易

    これらの条件が、単なる「近さ」ではなく、効率性低リスクなサプライチェーンの構築可能性という点で評価されているのです。

    グローバルなFTAネットワークを背景にした柔軟な通商戦略

    メキシコは、世界最多クラスの自由貿易協定(FTA)を締結している国の一つであり、その数は60か国以上にのぼります。日本企業にとって重要な協定は以下の通りです。

    ・USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)
    北米市場への無関税アクセスが可能。自動車産業を中心に、多くの企業がこの制度を前提にメキシコでの生産体制を構築しています。

    USMCAについては以下の記事で詳しく解説しています。

    【今さら聞けない】USMCAとは何か?2025年の最新動向と日本企業への影響

    【今さら聞けない】USMCAとは何か?2025年の最新動向と日本企業への影響

    北米地域における自由貿易の枠組みであるUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)は...

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    ・日墨経済連携協定(EPA)
    工業製品、部品、化学製品の大半が関税免除対象であり、日本からの部材供給とメキシコでの最終製品化を支援する強力な仕組みです。

    ・EU・メキシコFTA
    欧州市場との安定的な貿易基盤を提供し、メキシコをハブとして三極間(日本・北米・欧州)戦略を描くことが可能になります。

    これらの協定を適切に組み合わせることで、関税コストを抑えつつ、複数市場への同時展開という高度な通商戦略が実現可能となります。

    メキシコ政府による産業誘致政策の本気度

    メキシコ政府は、外資企業の誘致を国家戦略の一環として位置づけており、以下のような制度的支援を整備しています。

    ・IMMEX制度

    輸出向けの製造企業に対して、原材料・部品の一時的な関税免除を提供

    ・PROSEC制度

    国内販売にも対応できる関税優遇スキームで、自動車・電機・化学品分野に適用

    ・インフラ開発と工業団地整備

    とくに中部・北部地域で日系企業向けの工業団地が急速に整備されており、物流効率と人材確保を両立

    さらに税制インセンティブ(法人税減免、機械設備投資控除)や、デジタル通関の整備など、進出後の運用負担軽減にも力を入れています。

    実際の進出企業と業種の広がり

    近年では、トヨタ自動車やパナソニック、村田製作所をはじめとする大手日系企業が、メキシコでの新工場開設や既存拠点の拡張を進めています。その波は自動車関連にとどまらず、医療機器、電子部品、化粧品、食品加工など多様な業種に及んでいます。

    特に注目されるのは、アメリカ市場向け製品を「関税ゼロ+短納期」で供給できるという競争優位です。これは、他の生産国では容易に得られないメリットとなっています。

    「関税戦略の再設計」としてのメキシコ進出

    従来は中国などの低コスト国からの調達が中心でしたが、現在では「調達コスト」だけでなく、「輸出時の関税コスト」「サプライチェーンのリスク耐性」が重要な評価軸となっています。

    メキシコは、これらの要素すべてにおいて高いスコアを持ち、「調達・生産・輸出」の最適化を目指す企業にとって、関税戦略を抜本的に再設計する上での中核的な拠点といえるでしょう。

    メキシコの関税の最新動向

    2024年から2025年にかけて、メキシコ政府は国内産業の競争力強化と、特定国からの安価な輸入品に対する依存の見直しを目的に、関税制度の大規模な改正を実施しています。これらの動きは、通商政策の転換というだけでなく、現地での調達・生産・販売に直結するインパクトを持ち、日本企業にも確実に影響を及ぼすものです。

    2024年の主な改正ポイント

    2024年は、メキシコの関税政策において大きな転換点となる年でした。政府は内需産業の競争力回復と輸入過多の是正を図るため、特定品目への追加関税や分類制度の厳格化を実施。

    これらの動きは、日本企業を含む外国企業にとっても、通関業務や価格戦略の見直しを迫る内容となっています。

    追加関税の導入(2024年4月)

    政府は鉄鋼、繊維、革製品、プラスチック、化学品など352品目を対象に、5〜50%の関税を新たに設定しました。これらの品目は中国や東南アジアからの安価な輸入が急増しており、国内製造業を圧迫していることが背景にあります。

    この措置は「国内産業の空洞化防止」と「価格競争力の是正」を目的としており、特に中小企業が集中する分野に重点が置かれています。

    繊維製品への特別保護(2024年12月予定)

    繊維製品・アパレル製品に対して最大35%、原材料に15%の関税を新設。対象は主にFTA非締結国からの製品で、国内縫製業・生地業者の支援が狙いです。

    この改正により、FTA経由での輸入との差別化が一層進むことになり、日墨EPAなど既存協定の活用価値も相対的に上昇しています。

    HSコード再分類と税関監査の強化

    輸入業者による関税率の軽減を狙ったHSコードの誤用が多発していたため、2024年には関税分類(Tarifa)体系が見直され、より厳密な分類基準が導入されました。

    同時に、税関当局による監査も強化され、2024年前半だけで前年同期比150%の監査件数となっています。

    輸入申告の正確性がこれまで以上に重要となっており、専門家との連携が不可欠です。

    2025年に向けた制度動向と新たな課題

    2025年には、関税制度のさらなるデジタル化と、国家政策との一体化が本格化します。

    通関における信頼性と透明性の向上に加え、環境・安全保障・衛生といった非関税分野との連携が強まることで、企業にはより高度な対応力が求められる時代に突入しています。

    電子通関システム「VUCEM」の信頼性強化

    2025年2月、メキシコの電子通関システム「VUCEM(Ventanilla Única)」で大規模な障害が発生し、全国の通関が一時停止するという事態が起こりました。

    これを受け、政府は以下の改善策を発表しています。

    ・AIによるHSコードの自動分類機能の導入

    ・電子署名の完全義務化

    ・書類提出前のリアルタイムエラーチェックシステムの構築

    こうしたデジタル強化は、利便性の向上と同時に、申告内容への正確性と透明性を強く求める方向へと制度が進化していることを意味します。

    非自動輸入ライセンス制度の適用拡大

    国家安全保障および環境保護を目的として、2025年には特定品目に対して「非自動ライセンス制度(事前審査・許可制)」が段階的に導入されます。

    対象分野は以下の通りです。

    半導体・電子部品(技術的優位性保護)

    医療機器・化学薬品(国民健康と環境配慮)

    特定のエネルギー設備(資源保全目的)

    これにより、輸入には単なる関税申告だけでなく、関係官庁との事前折衝や書類提出が必要となり、事務負担とリードタイムが大幅に増加することが見込まれます。

    技術・環境認証の関税制度への統合

    これまで任意とされていたRoHS規制、ISO準拠、COFEPRIS登録(医療品・食品関連)などの技術認証が、実質的に通関条件として統合される流れが明確化しています。

    今後は、関税の申告時点でこれらの認証取得証明書を添付しなければならないケースが増加し、特に以下の業種は注意が必要です。

    ・電機・電子製品(電磁波・有害物質規制)

    ・自動車部品(構造・環境安全基準)

    ・医薬品・食品(品質・衛生検査)

    こうした動きは、関税政策が単なる「課税」から「安全・環境・持続可能性重視」へと軸足を移しつつあることを示しています。

    日本企業への影響と必要な対応

    メキシコ関税制度の最新動向を踏まえ、日本企業にとっての影響は次の通りです。

    ・輸入コストの上昇
    特定品目における関税率の急騰により、想定していたマージンが大幅に圧縮されるリスクがあります。

    ・通関業務の煩雑化
    VUCEM関連の電子対応や新しい分類制度への適合が求められ、通関実務が高度化しています。

    ・認証・許可の整備負担
    規制当局との連携や証明書類の更新管理など、これまでにない業務領域が増加しています。

    ・サプライチェーン再構築の必要性
    関税負担のかからないFTA締結国からの調達先見直しや、現地生産の割合を増やす戦略が現実的な選択肢となっています。

    このように、2024〜2025年のメキシコの関税政策は、単なる税率変更にとどまらず、通関業務の質・量、制度対応の範囲、調達戦略そのものに影響を及ぼす包括的な制度転換となっています。

    日本企業においても、これらの変化を単なる情報としてではなく、「実務上の行動計画」として落とし込むことが求められています。

    日本企業が知っておくべきメキシコの関税リスクと注意点

    メキシコ市場に参入する、あるいは既に取引を行っている日本企業にとって、関税制度はコスト面だけでなく、事業全体の安定性にも影響する重要な要素です。

    制度自体は一見シンプルに見えても、実際の運用には多くのリスクが潜んでおり、十分な対策を講じないまま進出すると、思わぬ損失や取引停止に直面することがあります。

    以下では、特に注意すべき関税関連のリスクとその対策について詳しく解説します。

    主な関税関連リスク

    HSコードの誤分類
    製品の関税分類が誤っていると、誤った関税率が適用され、追徴課税や罰則の対象となります。メキシコ税関では分類監査が厳格に行われており、分類の正確性が強く求められます。

    ・原産地証明書の不備
    日墨EPAやUSMCAなどのFTAを利用して関税を免除するためには、適切に作成された原産地証明書の提出が必要です。

    記載ミスや形式の誤り、提出遅れなどがあると、無税措置が否認される可能性があります。

    ・関税評価の誤り
    輸入価格に含めるべき費用(運賃、保険料、ライセンス料など)を適切に計上しないと、税関で評価修正が行われ、追加課税の対象になります。

    ・VUCEM対応の不備
    メキシコの電子通関システム「VUCEM」に不慣れなまま申告を行うと、データ送信エラーや書類不備が発生しやすく、通関に遅れが出る原因になります。

    ・必要な許認可の取得漏れ
    特定の製品(医療機器、食品、電気製品など)には、安全・衛生・技術基準に関する認証(NOM規格、COFEPRISなど)が必要です。

    未取得のまま輸入すると、貨物の留保・廃棄といった重大なトラブルにつながります。

    実際に起きた日本企業の失敗事例

    ・電機部品メーカーA社
    他国で使用していたHSコードをそのまま使用し、メキシコでの分類が誤っていたために、差額関税と15万ペソの罰金が科されました。

    ・医療機器企業B社
    使用していた原産地証明書の書式が古く、FTAが適用されず、1年間分の輸入関税が全額課税される結果となりました。

    ・食品関連商社C社
    NOM規格の取得を失念しており、税関で貨物が45日間保留。保管料や検査費用が追加発生し、納品遅延による取引先とのトラブルに発展しました。

    日本企業が講じるべき具体的な対策

    ・分類と評価の精度向上

    メキシコ現地の通関士や専門家と連携してHSコードの正確な分類を行い、輸出入価格に関する社内マニュアルを整備し、評価要素を明確化しましょう。

    ・FTA運用体制の整備

    原産地証明の取得・提出プロセスをマニュアル化し、定期的に更新し、証明書の有効期限、署名権限などをデジタルで一元管理する体制を整ええましょう。

    ・非関税規制への対応

    商品ごとに必要なメキシコの法的認証や規制情報を事前に確認し、輸入予定商品に対する認証取得のスケジュール管理を徹底しましょう。

    ・VUCEM利用の社内対応

    社内に電子通関の専門知識を持つ担当者を育成または採用し、外部通関業者と連携して、VUCEMでの事前入力・添付書類の正確性を確保しましょう。

    こうした対応を継続的に実施することで、関税トラブルの未然防止だけでなく、通関処理の効率化や現地での信用向上にもつながります。

    日本企業がメキシコ市場で安定的な事業展開を行うためには、これらの点を戦略的に整備することが不可欠です。

    メキシコの関税を有利に活用する方法

    メキシコとの貿易では、関税リスクを回避するだけでなく、制度を戦略的に「使いこなす」ことが、競争力の向上やコスト削減に直結します。

    特に、日本企業が活用すべき代表的な制度が、各種自由貿易協定(FTA)と、メキシコ独自の輸出促進制度であるIMMEX(イメックス)制度です。

    これらの制度を正しく活用すれば、関税コストをゼロに抑えながら、柔軟な生産体制を構築することが可能になります。

    メキシコが締結するFTAを活用する

    メキシコは、世界有数のFTAネットワークを持つ国のひとつであり、60か国以上と自由貿易協定を締結しています。日本企業が関係する主な協定には、以下のようなものがあります。

    ・日墨経済連携協定(EPA)
    日本からメキシコへの産業製品の多くが無税、または段階的関税撤廃の対象。

    完成品の輸出だけでなく、部品単位でも適用が可能。多くの工業製品、化学製品、自動車関連品目が対象に含まれます。

    ・USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)
    メキシコを経由して米国市場へ輸出する場合に活用可能。

    原産地規則や域内付加価値比率などの要件を満たせば、関税ゼロでの三国間取引が可能になります。

    ・EU・メキシコFTA
    欧州向けビジネスを行う企業にとって、メキシコを経由した無税輸出のルート構築が現実的に可能。

    製品設計から仕向地戦略まで一体的に設計する企業も増えています。

    FTA活用のポイント

    原産地証明書(Form J、USMCA認定証など)の整備と申請プロセスを明確にする

    ・原材料や構成部品の供給元が協定対象国かをチェックし、必要に応じてサプライヤーを変更

    関税分類の整合性(HSコード)と、製品の技術仕様が協定の規定と一致しているかを精査

    FTAの恩恵を受けるためには、単に対象国間の貿易であることだけでなく、「原産性の証明」「適切な証憑管理」「定期更新」など細かい実務対応が不可欠です。

    IMMEX制度とは何か? その仕組みと活用法

    IMMEX(Industria Manufacturera, Maquiladora y de Servicios de Exportación)制度は、メキシコ政府が外資系製造業向けに提供する輸出促進スキームです。

    この制度を活用すれば、特定の条件下で関税や一部税金の免除を受けつつ、原材料・部品の一時輸入が可能になります。

    IMMEX制度の基本的な仕組み

    ・対象企業

    メキシコ国内で加工・組立・修理等を行い、その製品を海外へ輸出する企業

    ・一時輸入の特典

    原材料、部品、機械設備などを一時的に関税ゼロで輸入可能(一定期間内に再輸出が必要)

    ・条件

    通常、年間売上の10%以上を輸出に充てることが求められ、さらにVUCEMによる輸出入記録の厳格な管理に加え、生産プロセスの詳細な申告と事前許可の取得が義務付けられています。

    IMMEXを活用するメリット

    ・生産コストの大幅削減(原材料調達段階での関税免除)

    ・設備機械も関税ゼロで搬入でき、初期投資の負担を軽減

    ・サプライチェーンの柔軟性が高まり、JIT(ジャストインタイム)生産に対応しやすい

    IMMEX利用時の注意点

    ・一時輸入品は、原則として指定期間内に輸出されるか、適切な処理(例:転用申告)を行う必要あり

    管理台帳(Anexo 24)在庫記録をVUCEM経由で厳密に提出する義務がある

    ・規定違反があれば、免除されていた関税・税金が遡って課税されるリスクがある

    制度を組み合わせた最適戦略

    多くの先進企業は、以下のようにFTAとIMMEX制度を併用して関税メリットを最大化しています。

    ・日本から部材をIMMEX制度で一時輸入(関税ゼロ)

    メキシコで加工・組立を実施

    ・完成品をUSMCAの原産要件を満たした上で米国へ無税輸出

    このように、「調達→加工→販売」の流れを制度に合わせて最適化することで、コスト削減と関税管理のバランスをとることが可能になります。

    まとめ

    本記事では、メキシコの関税制度の基本から最新動向、実務への影響、そして戦略的な活用法までを幅広く解説しました。

    変化の激しいグローバル経済において、関税制度の理解はコスト管理・リスク回避・競争力強化のために欠かせない要素です。

    また、制度運用は時に複雑で、現地の実務や法令改正にも精通しておく必要があります。メキシコとの貿易を成功させるためには、自社内だけでの対応に限界がある場合もあります。

    そのため、関税制度に不安がある場合は、専門家に一度相談してみることをおすすめします

    カテゴリ:

    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。