【2025年最新】輸出貿易管理令の規制強化と企業が取るべき対応を徹底解説

目次

    近年、輸出管理の重要性がますます高まっています 特に、半導体・AI技術・先端素材などの戦略的な分野において、国際的な規制強化が進んでいるため、日本企業も慎重な対応が求められています。

    その中心となるのが 輸出貿易管理令 です。これは、日本から海外へ輸出される製品・技術が安全保障上のリスクを伴わないように管理するための規制です。

    企業が適切に対応しないと、罰則を受けるだけでなく、取引停止や信用低下といった経営リスクにもつながります。

    本記事では、輸出貿易管理令の基本から最新の規制動向、企業が実務で気をつけるべきポイントまで、わかりやすく解説 します。

    基本を1分で解説!輸出貿易管理令とは?

    輸出貿易管理令とは、日本政府が安全保障の観点から特定の製品や技術の輸出を規制するための法律です。正式には「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に基づく政令で、軍事転用の恐れがある物資や技術の輸出を管理することを目的としています。

    日本は国際的な輸出管理の枠組みに参加しており、ワッセナー・アレンジメント(通常兵器)やミサイル技術管理レジーム(MTCR) などの基準に基づいて規制を設定しています。これにより、核兵器や生物化学兵器の拡散を防ぎ、国際安全保障に貢献しています。

    企業が輸出貿易管理令を遵守しないと、許可のない輸出で罰則を受けたり、取引先から信頼を失ったりするリスク があります。特に近年は、半導体・AI技術・先端素材の規制が強化 されており、該当分野の企業はより慎重な対応が求められています。

    輸出貿易管理令の最新動向4選【2025年版】

    2025年における輸出貿易管理令の最新動向は、以下のような重要な改正や強化が実施されています。

    1.キャッチオール規制の強化

    経済産業省は2025年1月31日、外為法に関連する政省令の改正案を発表しました。この改正では、補完的輸出規制(キャッチオール規制)の強化が含まれており、特定の品目をHSコードで指定し、一般国向けの輸出においても用途や需要者の確認が求められるようになりました。

    これにより、企業は輸出貨物のHSコード管理や取引審査をより厳格に行う必要があります。

     2.米国の対中半導体関連規制の強化

    米国は2024年12月31日、対中半導体関連規制の第3弾を施行しました。これにより、先端半導体製造装置やAI関連技術の対中輸出がさらに厳格化され、日本企業にも影響を及ぼしています。

    これらの規制強化により、該当する製品や技術の輸出には、より慎重な対応が求められています。

     3.中国のデュアルユース(軍民両用)品目の輸出管理強化

    中国は2024年10月19日、デュアルユース品目の輸出管理に関する新たな規制を発表し、同年12月1日から施行しました。これにより、民生用と軍事用の両方に使用可能な品目の輸出管理が強化され、輸出者は最終使用者や用途の開示が義務付けられました。

    この動きは、国際的な安全保障上の懸念に対応するものとされています。 

    4.日本の輸出貿易管理令の改正

    経済産業省は2025年2月18日付で、輸出貿易管理令別表第2の35の3の項(6)に掲げる貨物を追加する改正を実施しました。これにより、特定の貨物が新たに規制対象となり、企業は該当する貨物の輸出に際して、適切な手続きを行う必要があります。

    これらの動向を踏まえ、企業は最新の規制情報を常に把握し、適切な輸出管理体制を整備することが求められています。

     企業が気をつけるべきポイント3点

    輸出貿易管理令を遵守しないと、罰則や取引停止のリスクがあるため、企業は適切な輸出管理体制を整える必要があります。

    特に、以下の3つのポイントに注意しましょう。

    1.該非判定(輸出品が規制対象かを確認)

    まず、自社の製品や技術が規制対象に該当するかどうか(該非判定) を正確に行う必要があります。

    ・リスト規制品目に該当するか? → 政令・省令で指定された品目か確認

    ・キャッチオール規制に該当する可能性は? → 取引先の国や用途をチェック

    ・HSコード・技術の特性を確認 → 専門家の意見や政府の窓口に相談する

    2.取引先・用途の事前確認(デューデリジェンス)

    輸出先の企業や用途が規制対象となるケースがあります。以下を必ずチェックしましょう。

    ・最終需要者(エンドユーザー)の確認 → 軍事関連企業ではないか?

    ・用途の確認 → 兵器開発や核関連技術に利用される可能性がないか?

    ・規制対象国かどうか? → 中国・ロシア・北朝鮮など特定国向けの輸出は慎重に

    3.コンプライアンス体制の構築

    企業全体で輸出管理を徹底するため、社内体制の強化 が必要です。

    ・輸出管理責任者を設置 → 専任の担当者が規制チェックを行う

    ・定期的な社内研修を実施 → 法改正や最新の規制動向を社内で共有

    ・貿易管理システム(Trade DX)の活用 → システムで自動判定・管理を強化

    違反すると企業の信用や事業継続に大きな影響を及ぼすため、早めに体制を整えておくことが必須 です。

    輸出貿易管理令に違反するとどうなる?

    輸出貿易管理令に違反すると、企業や個人に厳しい罰則が科される可能性があります。主なリスクは以下の通りです。

     刑事罰・行政処分

    ・違反が発覚すると、最大10年以下の懲役または1億円以下の罰金(法人は5億円以下)が科される可能性があります。

    ・経済産業省から輸出許可の取り消し事業停止命令を受けることもあります。

    企業の信用失墜・取引停止

    ・違反企業は国内外の取引先から信用を失い、商取引に悪影響を及ぼすことがあります。

    ・特にグローバル企業との取引では、コンプライアンス違反が原因で契約解除されるケースもあります。

    過去の違反事例

    某電子部品メーカーが軍事転用可能な部品を許可なく輸出し、法人・役員が罰則を受けた事例があります。

    海外の制裁対象企業と取引したことで、取引停止措置を受けた企業もあります。

    輸出貿易管理令の企業向け実務対策

    輸出貿易管理令を遵守するためには、企業が適切な輸出管理体制を整備し、コンプライアンスを徹底することが重要です。具体的な対応策を以下の3つのステップで解説します。

    該非判定を適切に行う

    自社の製品や技術が輸出貿易管理令のリスト規制やキャッチオール規制に該当するか確認することが必須です。

    ・リスト規制品目かどうかをチェック(政令・省令を確認)

    ・キャッチオール規制に該当する可能性を判断(輸出先・用途の確認)

    ・経済産業省の該非判定相談窓口を活用

    取引先・用途の審査を強化する

    ・最終需要者(エンドユーザー)が軍事関連企業でないか確認

    ・輸出先が規制対象国(中国・ロシア・北朝鮮など)に該当しないかチェック

    ・契約書に「最終用途確認条項」を記載し、軍事転用リスクを回避

    社内の輸出管理体制を整備する

    ・輸出管理責任者を配置し、社内審査プロセスを明確化

    ・定期的な研修を実施し、従業員の輸出管理意識を向上

    ・貿易管理システム(Trade DX)を導入し、デジタル管理を強化

    輸出貿易管理令違反は企業の信用に関わる重大な問題となります。

    適切な実務対策を講じ、リスクを最小限に抑えることが不可欠です。

    まとめ

    輸出貿易管理令は、企業の国際取引において重要な規制であり、違反すると厳しい罰則や信用リスクにつながります。

    規制対象の確認、取引先の審査、社内管理体制の整備を徹底し、適切な輸出管理を行うことが求められます。

    特に規制が強化されている半導体やAI技術などの分野では、最新の情報を常に把握し、必要に応じて専門家や関係機関に相談しながら対応を進めることが重要です。

    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。